倒産法とは?基礎知識と目的をわかりやすく解説

会社などの経営が上手くいかなくなり、債務の履行が難しくなった状態のことを一般的な用語として倒産と呼んでいます。
その後の処理は、会社を清算する・存続するいずれかの方針に従って、適切な処理をするための法律の適用によって行われます。
これらの法律のことを一般に「倒産法」というのですが、倒産法とはどのようなもので、倒産法として把握すべき法律にはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、倒産法および倒産法を構成する法律などについてお伝えします。
目次
倒産法とは破産法など倒産処理を行う法律を総称したもの
倒産法とは、倒産処理を行う法律を総称したものをいいます。
上述した通り、債務の履行が難しくなった状態のことを一般的な用語として倒産といいます(倒産という用語は法律用語ではありません)。
帝国データバンクによると、具体的には次の場合に倒産とされます。

- 銀行取引停止処分を受ける
- 内整理する(代表が倒産を認めた時)
- 裁判所に会社更生手続開始を申請する
- 裁判所に民事再生手続開始を申請する
- 裁判所に破産手続開始を申請する
- 裁判所に特別清算開始を申請する
倒産に陥った場合には、会社が再建をするのか清算をするのか、会社の目的に応じた対処が必要です。
対処として行われるのが破産・民事再生などの手続きで、これらは個々に破産法・民事再生法などの法律に手続きが規定されています。
倒産法はこれらの個々の法律を総称したもので、専門書などでは倒産処理法とも呼ばれます。
会社が倒産状態にある場合の処理をするために、適切な手続きを選択し、実行していくためには、倒産法全体の理解が不可欠です。
倒産法による倒産処理手続きの種類
倒産法による倒産処理手続きにはどのような種類があるのでしょうか。
倒産処理手続きには主に会社を再建するための手続きと、会社を清算する手続きの2つの種類に分けられます。
そして、会社を再建する手続き・清算する手続きでそれぞれその会社に応じて個々の手続きを利用します。
再建型手続で会社の経営を立て直す
倒産処理手続きの大きな分類の一つとして、会社を再建する再建型手続きがあります。
会社の経営が上手く行かなくなる原因には様々あり、その原因を取り除けば会社として再建が可能な場合があります。
このような場合、会社を再建させるために用意されている法的手続きなどによって、会社の再建を目指します。
再建型手続きには法的手続として民事再生と会社更生があり、法的手続によらない私的整理とあわせて3つの手続きがあります。
- 法的手続
- 民事再生
- 会社更生
- 私的整理(任意整理・内整理などの呼び方もある)
民事再生は民事再生法、会社更生は会社更生法に基づく法的手続きである一方、私的整理は債権者との協議を本質とする手続きです。
民事再生は従来の経営陣がそのまま経営を続けるかどうかによって次の2つに分類されます。
- 従来の経営陣がそのまま事業の経営を継続する事が可能であるDIP型民事再生手続
- 会社更生法と同様に従来の経営陣が会社の経営権を喪失し保全管理人がその経営に当たる管理型民事再生手続
原則はDIP型民事再生手続ですが、従来の経営陣によるDIP型民事再生では弊害が大きいような例外的な場合には、裁判所が管理命令を発令して、保全管理人が主導する管理型民事再生手続きが行われます。
さらに、前者のDIP型民事再生手続には、スポンサーの有無・関与の形態によってさらに次のような種類に分類されます。
- 収益によって債権者へ弁済を行う自力再建型
- 他の企業から支援を受けて再建を行うスポンサー型
- 申請前にスポンサー企業を決定し資金援助を受けて行うプレパッケージ型
- 申し立てた企業が手掛けていた事業の一部または全部をスポンサー企業や第三者である企業へ譲渡した後に清算手続に入る清算型
会社更生手続では従来の経営陣はすべて退任し、更生管財人が選任され、更生管財人主導で立て直しが行われるのが原則です。
ただし、2009年に行われた株式会社クリードの会社更生手続きを皮切りに一定の場合にはDIP型会社更生手続きを行うことを認めており、この場合経営陣が引き続き経営できます。
再建型手続の私的整理には、関与する機関によって次のようなものがあります。
- 債務者と債権者で話し合いを行う純粋な私的整理
- 私的整理ガイドラインや特定調停などの手続きに沿って行われる準則型私的整理
- 事業再生ADR
- 中小企業再生支援協議会により行われる支援協議会スキーム、
- 地域経済活性化機構(REVIC)やRCCにより行われる再生支援スキーム
1-1-2.清算型手続は会社の財産を債権者に弁済
倒産処理手続きの大きな分類のもう一つは、会社を清算する清算型手続きです。
会社の経営が上手く行かなくなる原因を取り除いたとしても、会社の再建が難しい場合もあります。
その際、債務超過となっている場合に特に手続きを設けない場合、債権者が我先にと争い始め、平等に取り扱われず、債務者に対して強引な、時には違法な取り立てが行われてしまいます。
そのため、会社財産を清算して債権者に公平に弁済するための、特別な法的手続きが行われます。
清算型法的手続きには次の3つがあります。
- 法的手続き
- 破産(法人破産)
- 特別清算
- 私的整理
法的手続きとしては破産・特別清算という手続きがある一方で、債権者・債務者の協議で清算を行う私的整理もあります。
倒産法に含まれる代表的な6つの法律

倒産法に含まれる法律として、次の6つの法律が挙げられます。
- 民事再生法
- 会社更生法
- 破産法
- 会社法(第9章第2節特別清算)
- 更生特例法
- 特定調停法
民事再生法
再建型手続の民事再生の基礎となるのが民事再生法(平成11年法律第225号)です。
再建型手続として用いられる法律として従来は和議法(大正11年法律第72号)という法律に基づく和議という手続きが存在しました。
しかし和議法は、担保権者を手続きで拘束できないという点で利用しづらいものであった上に、債権者としても和議で合意した支払いを履行させるための手段がなく、「和議法は詐欺法」と呼ばれていました。
1996年10月から、法務省の法制審議会倒産法部会において、倒産法制の見直し作業が行われ、アメリカの連邦倒産法第11章に規定されている再建型の手続きを参考にして民事再生法が成立し、2000年4月1日に施行され、現在に至ります。
中小規模の会社から大規模な会社までを想定した法律で、すべての種類の法人が利用できます。
なお、個人の債務整理について個人再生という手続きがありますが、これはこの民事再生法において個人の利用を前提とした規定である「第13章小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」に基づく手続きです。
基本的にはDIP型民事再生手続きによるので、従来の経営者がそのまま経営を続けられるという特徴があります。
会社更生法
再建型手続きのうち、株式会社が利用できる会社更生の基礎となるのが、会社更生法(平成14年法律第154号)です。
会社更生法は、第二次世界大戦後に、アメリカで実績を挙げていた当時の連邦倒産法第10章の制度を日本に移植したもので、1952年に制定されたものが改正を経て現在施行されています。
民事再生法では会社財産に対して担保権を持っている債権者の担保権の行為を制限ができないため、重要な財産が担保に入っているようなケースで担保権が実行されてしまうと会社を再建できなくなるというデメリットがあります。
会社更生法では担保権の行使も制限されるという特徴がある手続きで、このような強力な制限があるため大規模な会社の再建への利用が想定されています。
破産法
清算型手続のうち、破産の基礎となるのが破産法(平成16年6月2日法律第75号)です。
破産法自体は、1922年に上述した和議法と同時に制定されており、上述した1996年10月から、法務省の法制審議会倒産法部会においての審議を経て、現在の破産法が施行されています。
破産法はすべての法人が適用を受けられる点で、清算型の手続きの一般的な手続きです。
個人の債務整理で行う自己破産は、個人が自ら破産法の申立てをすることをいいます。
個人の場合には免責という手続きによって負っていた債務の支払い義務がなくなる一方、法人の場合は破産によって法人格が消滅します。
会社が破産をする場合には、会社債務の連帯保証人となっていたり、会社の運転資金の確保のために借入をしているケースが非常に多いので、個人も自己破産を同時に行います。
会社法(第9章第2節 特別清算)
清算型手続きのうち、特別清算の基礎となるのが、会社法(平成17年7月26日法律第86号)です。
特別清算はもともと昭和13年の商法の改正で制定されたもので、商法の一部であった会社に関する規定が会社法として制定された際に会社法の中に規定されて現在に至ります(商法の中にあった特別清算に関する規定は削除)。
会社法の中の第9章の清算に関する規定がある第2節、500条以下に定められており、債務超過がある株式会社が清算をする際の手続きが定められています。
特別清算は解散をした債務超過の状態にある株式会社について簡易・迅速に清算をするための手続きです。
更生特例法
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(通称:更生特例法 平成8年法律第95号)は、協同組織金融機関及び相互会社が会社更生・民事再生・破産する際の特則を定める手続きです。
協同組織金融機関(信用協同組合、信用金庫又は労働金庫)や相互会社(保険会社で認められている会社形態)は、預金をしている債権者や契約者などの人数が多数におよびます。
このような場合に会社更生法が利用しづらいデメリットがありました。
1990年代のバブル崩壊により、金融機関の経営危機が相次いだ結果、金融機関が破綻した場合に利用しやすい法制度の整備が求められました。
その結果1996年に制定・公布されたのが更生特例法です。
「更生」という名前で呼ばれるように、当初は会社更生法の特例として制定されていましたが、民事再生手続・破産手続きについての特例も規定されています。
過去には千代田生命保険(2000年10月)・協栄生命保険 (2000年10月)・東京生命保険(2001年3月) 大和生命保険(2008年10月) の4例で利用されています。
一般的な会社倒産手続では利用されません。
特定調停法
私的整理のうち特定調停の手続きに沿って行われる準則型私的整理をする場合に問題になるのが、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(特定調停法 平成11年法律第158号)です。
紛争解決方法の中に、裁判官1名・調停委員2名からなる調停委員を間に挟んで話し合う民事調停があります。
支払期にある債務の支払いが難しくなっている場合に、債務者と債権者が支払いについて調停で話し合う場合、特定債務者(特定調停法2条1項)としてこの特定調停法の規定を受けて調停を行います。
上述したように、私的整理は本質的には債務者と債権者の交渉なのですが、ルールがないため債権者が平等に取り扱われない、手続きが不透明であるなどの問題があります。
これらを払拭するために、上述したように様々なスキームによって手続きが行われるのですが、その中の一つがこの特定調停法に規定されている特定調停に基づくものです。
債権者との権利関係の調整を行うので手続きは個々の債権者ごとに行います、同一の債務者が複数の債権者に特定調停の申立てをすると、併合して審理する旨が定められており(特定調停法6条)、特定調停を申し立てたすべての債権者が参加し、公平な取り扱いができます。
なお、特定調停は個人の債務整理にも利用されます。
その他
特定調停法の項でもお伝えしましたが、債権者と債務者の交渉を本質とするもので、手続き不透明性や債権者が平等に取り扱われない恐れがあるなどのデメリットがあります。
そのため、手続きを公正に行われるようにするために、会社の実情に応じた様々なスキームに従って私的整理が行われます。
例えば、経済団体連合会や全国銀行協会などから選出された委員によって構成される「私的整理に関するガイドライン研究会」が公表した「私的整理ガイドライン」に基づいて私的整理をする場合があります。
この場合、この私的整理ガイドラインは、法律のような機能を持つので、倒産法全体を把握する上では理解が欠かせません。
また、事業再生ADRによって私的整理を行う場合には、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律・産業競争力強化法などの法律が関連します。
これら私的整理を行うために用いられるガイドライン等の準則や、関係機関の組織や手続きに関する法律も、倒産法として考慮する必要があります。
倒産法が存在する主な目的3つ
これらの倒産法はどのような理由から存在しているのでしょうか。
その理由として挙げられるのが次の3つです。
債権者の権利を平等に保護する
倒産法が存在する理由の一つ目が債権者の権利の平等な保護するです。
もし倒産法がなければ、債権の回収が危ぶまれる状況になると、債権者は我先にと債権の回収を行なったり、債務者が一部の債権者を優遇するなどの恐れがあります。
倒産法はこれらの行為を制限して、債権者が平等に取り扱われるようになっています。
例えば破産法の場合には、訴訟手続きの停止(破産法24条1項3号)、債務者が特定の債権者に返済した場合の取戻し・刑事罰(破産法62条・破産法266条)、債権者が債務者に面会の強要に刑事罰規定(破産法275条)などを規定しています。
これによって、特定の債権者のみが債務者から回収するのを防ぎ、回収してしまった場合でも取戻しを行って債権者に配当して、債権者を平等に取り扱います。
債務者の経済生活の再生を支援する
債務者の経済生活の再生を支援することは倒産法が存在する目的の一つです。
債務の返済が難しくなったとしても必ず返済をしなければならないとすると、債務者の生活が困窮してしまいます。
資本主義社会では経済的な状況が常に変化するので、大きな負債を負う可能性もあり、その救済の仕組みもまた必要であると考えられます。
民事再生や会社更生によって会社を再建できれば、経営陣の経済生活の再生もできます。
また、会社を清算してしまうときには、代表者が個人で負っている債務や連帯保証債務について自己破産をすれば、個人については免責してもらうえます(破産法第12条第1節248条以下)。
倒産法は債務者となる会社の経営者などの経済生活での再生も目的としています。
企業倒産による経済混乱を防ぎ健全性を維持する
企業の倒産による経済混乱を防ぎ、社会の健全性を維持も倒産法の目的です。
企業が倒産すると様々な経済混乱が生じます。
そこで働いている従業員は職を失う可能性がありますし、その会社の取引先に影響したり、連帯保証人となっている会社・経営者に請求され、連鎖倒産が発生します。
このような経済混乱を防げば、社会の健全性を維持できます。
倒産法とは?基礎知識と目的をわかりやすく解説

会社などの経営が上手くいかなくなり、債務の履行が難しくなった状態のことを一般的な用語として倒産と呼んでいます。
その後の処理は、会社を清算する・存続するいずれかの方針に従って、適切な処理をするための法律の適用によって行われます。
これらの法律のことを一般に「倒産法」というのですが、倒産法とはどのようなもので、倒産法として把握すべき法律にはどのようなものがあるのでしょうか。
本記事では、倒産法および倒産法を構成する法律などについてお伝えします。
目次
倒産法とは破産法など倒産処理を行う法律を総称したもの
倒産法とは、倒産処理を行う法律を総称したものをいいます。
上述した通り、債務の履行が難しくなった状態のことを一般的な用語として倒産といいます(倒産という用語は法律用語ではありません)。
帝国データバンクによると、具体的には次の場合に倒産とされます。

- 銀行取引停止処分を受ける
- 内整理する(代表が倒産を認めた時)
- 裁判所に会社更生手続開始を申請する
- 裁判所に民事再生手続開始を申請する
- 裁判所に破産手続開始を申請する
- 裁判所に特別清算開始を申請する
倒産に陥った場合には、会社が再建をするのか清算をするのか、会社の目的に応じた対処が必要です。
対処として行われるのが破産・民事再生などの手続きで、これらは個々に破産法・民事再生法などの法律に手続きが規定されています。
倒産法はこれらの個々の法律を総称したもので、専門書などでは倒産処理法とも呼ばれます。
会社が倒産状態にある場合の処理をするために、適切な手続きを選択し、実行していくためには、倒産法全体の理解が不可欠です。
倒産法による倒産処理手続きの種類
倒産法による倒産処理手続きにはどのような種類があるのでしょうか。
倒産処理手続きには主に会社を再建するための手続きと、会社を清算する手続きの2つの種類に分けられます。
そして、会社を再建する手続き・清算する手続きでそれぞれその会社に応じて個々の手続きを利用します。
再建型手続で会社の経営を立て直す
倒産処理手続きの大きな分類の一つとして、会社を再建する再建型手続きがあります。
会社の経営が上手く行かなくなる原因には様々あり、その原因を取り除けば会社として再建が可能な場合があります。
このような場合、会社を再建させるために用意されている法的手続きなどによって、会社の再建を目指します。
再建型手続きには法的手続として民事再生と会社更生があり、法的手続によらない私的整理とあわせて3つの手続きがあります。
- 法的手続
- 民事再生
- 会社更生
- 私的整理(任意整理・内整理などの呼び方もある)
民事再生は民事再生法、会社更生は会社更生法に基づく法的手続きである一方、私的整理は債権者との協議を本質とする手続きです。
民事再生は従来の経営陣がそのまま経営を続けるかどうかによって次の2つに分類されます。
- 従来の経営陣がそのまま事業の経営を継続する事が可能であるDIP型民事再生手続
- 会社更生法と同様に従来の経営陣が会社の経営権を喪失し保全管理人がその経営に当たる管理型民事再生手続
原則はDIP型民事再生手続ですが、従来の経営陣によるDIP型民事再生では弊害が大きいような例外的な場合には、裁判所が管理命令を発令して、保全管理人が主導する管理型民事再生手続きが行われます。
さらに、前者のDIP型民事再生手続には、スポンサーの有無・関与の形態によってさらに次のような種類に分類されます。
- 収益によって債権者へ弁済を行う自力再建型
- 他の企業から支援を受けて再建を行うスポンサー型
- 申請前にスポンサー企業を決定し資金援助を受けて行うプレパッケージ型
- 申し立てた企業が手掛けていた事業の一部または全部をスポンサー企業や第三者である企業へ譲渡した後に清算手続に入る清算型
会社更生手続では従来の経営陣はすべて退任し、更生管財人が選任され、更生管財人主導で立て直しが行われるのが原則です。
ただし、2009年に行われた株式会社クリードの会社更生手続きを皮切りに一定の場合にはDIP型会社更生手続きを行うことを認めており、この場合経営陣が引き続き経営できます。
再建型手続の私的整理には、関与する機関によって次のようなものがあります。
- 債務者と債権者で話し合いを行う純粋な私的整理
- 私的整理ガイドラインや特定調停などの手続きに沿って行われる準則型私的整理
- 事業再生ADR
- 中小企業再生支援協議会により行われる支援協議会スキーム、
- 地域経済活性化機構(REVIC)やRCCにより行われる再生支援スキーム
1-1-2.清算型手続は会社の財産を債権者に弁済
倒産処理手続きの大きな分類のもう一つは、会社を清算する清算型手続きです。
会社の経営が上手く行かなくなる原因を取り除いたとしても、会社の再建が難しい場合もあります。
その際、債務超過となっている場合に特に手続きを設けない場合、債権者が我先にと争い始め、平等に取り扱われず、債務者に対して強引な、時には違法な取り立てが行われてしまいます。
そのため、会社財産を清算して債権者に公平に弁済するための、特別な法的手続きが行われます。
清算型法的手続きには次の3つがあります。
- 法的手続き
- 破産(法人破産)
- 特別清算
- 私的整理
法的手続きとしては破産・特別清算という手続きがある一方で、債権者・債務者の協議で清算を行う私的整理もあります。
倒産法に含まれる代表的な6つの法律

倒産法に含まれる法律として、次の6つの法律が挙げられます。
- 民事再生法
- 会社更生法
- 破産法
- 会社法(第9章第2節特別清算)
- 更生特例法
- 特定調停法
民事再生法
再建型手続の民事再生の基礎となるのが民事再生法(平成11年法律第225号)です。
再建型手続として用いられる法律として従来は和議法(大正11年法律第72号)という法律に基づく和議という手続きが存在しました。
しかし和議法は、担保権者を手続きで拘束できないという点で利用しづらいものであった上に、債権者としても和議で合意した支払いを履行させるための手段がなく、「和議法は詐欺法」と呼ばれていました。
1996年10月から、法務省の法制審議会倒産法部会において、倒産法制の見直し作業が行われ、アメリカの連邦倒産法第11章に規定されている再建型の手続きを参考にして民事再生法が成立し、2000年4月1日に施行され、現在に至ります。
中小規模の会社から大規模な会社までを想定した法律で、すべての種類の法人が利用できます。
なお、個人の債務整理について個人再生という手続きがありますが、これはこの民事再生法において個人の利用を前提とした規定である「第13章小規模個人再生及び給与所得者等再生に関する特則」に基づく手続きです。
基本的にはDIP型民事再生手続きによるので、従来の経営者がそのまま経営を続けられるという特徴があります。
会社更生法
再建型手続きのうち、株式会社が利用できる会社更生の基礎となるのが、会社更生法(平成14年法律第154号)です。
会社更生法は、第二次世界大戦後に、アメリカで実績を挙げていた当時の連邦倒産法第10章の制度を日本に移植したもので、1952年に制定されたものが改正を経て現在施行されています。
民事再生法では会社財産に対して担保権を持っている債権者の担保権の行為を制限ができないため、重要な財産が担保に入っているようなケースで担保権が実行されてしまうと会社を再建できなくなるというデメリットがあります。
会社更生法では担保権の行使も制限されるという特徴がある手続きで、このような強力な制限があるため大規模な会社の再建への利用が想定されています。
破産法
清算型手続のうち、破産の基礎となるのが破産法(平成16年6月2日法律第75号)です。
破産法自体は、1922年に上述した和議法と同時に制定されており、上述した1996年10月から、法務省の法制審議会倒産法部会においての審議を経て、現在の破産法が施行されています。
破産法はすべての法人が適用を受けられる点で、清算型の手続きの一般的な手続きです。
個人の債務整理で行う自己破産は、個人が自ら破産法の申立てをすることをいいます。
個人の場合には免責という手続きによって負っていた債務の支払い義務がなくなる一方、法人の場合は破産によって法人格が消滅します。
会社が破産をする場合には、会社債務の連帯保証人となっていたり、会社の運転資金の確保のために借入をしているケースが非常に多いので、個人も自己破産を同時に行います。
会社法(第9章第2節 特別清算)
清算型手続きのうち、特別清算の基礎となるのが、会社法(平成17年7月26日法律第86号)です。
特別清算はもともと昭和13年の商法の改正で制定されたもので、商法の一部であった会社に関する規定が会社法として制定された際に会社法の中に規定されて現在に至ります(商法の中にあった特別清算に関する規定は削除)。
会社法の中の第9章の清算に関する規定がある第2節、500条以下に定められており、債務超過がある株式会社が清算をする際の手続きが定められています。
特別清算は解散をした債務超過の状態にある株式会社について簡易・迅速に清算をするための手続きです。
更生特例法
金融機関等の更生手続の特例等に関する法律(通称:更生特例法 平成8年法律第95号)は、協同組織金融機関及び相互会社が会社更生・民事再生・破産する際の特則を定める手続きです。
協同組織金融機関(信用協同組合、信用金庫又は労働金庫)や相互会社(保険会社で認められている会社形態)は、預金をしている債権者や契約者などの人数が多数におよびます。
このような場合に会社更生法が利用しづらいデメリットがありました。
1990年代のバブル崩壊により、金融機関の経営危機が相次いだ結果、金融機関が破綻した場合に利用しやすい法制度の整備が求められました。
その結果1996年に制定・公布されたのが更生特例法です。
「更生」という名前で呼ばれるように、当初は会社更生法の特例として制定されていましたが、民事再生手続・破産手続きについての特例も規定されています。
過去には千代田生命保険(2000年10月)・協栄生命保険 (2000年10月)・東京生命保険(2001年3月) 大和生命保険(2008年10月) の4例で利用されています。
一般的な会社倒産手続では利用されません。
特定調停法
私的整理のうち特定調停の手続きに沿って行われる準則型私的整理をする場合に問題になるのが、特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律(特定調停法 平成11年法律第158号)です。
紛争解決方法の中に、裁判官1名・調停委員2名からなる調停委員を間に挟んで話し合う民事調停があります。
支払期にある債務の支払いが難しくなっている場合に、債務者と債権者が支払いについて調停で話し合う場合、特定債務者(特定調停法2条1項)としてこの特定調停法の規定を受けて調停を行います。
上述したように、私的整理は本質的には債務者と債権者の交渉なのですが、ルールがないため債権者が平等に取り扱われない、手続きが不透明であるなどの問題があります。
これらを払拭するために、上述したように様々なスキームによって手続きが行われるのですが、その中の一つがこの特定調停法に規定されている特定調停に基づくものです。
債権者との権利関係の調整を行うので手続きは個々の債権者ごとに行います、同一の債務者が複数の債権者に特定調停の申立てをすると、併合して審理する旨が定められており(特定調停法6条)、特定調停を申し立てたすべての債権者が参加し、公平な取り扱いができます。
なお、特定調停は個人の債務整理にも利用されます。
その他
特定調停法の項でもお伝えしましたが、債権者と債務者の交渉を本質とするもので、手続き不透明性や債権者が平等に取り扱われない恐れがあるなどのデメリットがあります。
そのため、手続きを公正に行われるようにするために、会社の実情に応じた様々なスキームに従って私的整理が行われます。
例えば、経済団体連合会や全国銀行協会などから選出された委員によって構成される「私的整理に関するガイドライン研究会」が公表した「私的整理ガイドライン」に基づいて私的整理をする場合があります。
この場合、この私的整理ガイドラインは、法律のような機能を持つので、倒産法全体を把握する上では理解が欠かせません。
また、事業再生ADRによって私的整理を行う場合には、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律・産業競争力強化法などの法律が関連します。
これら私的整理を行うために用いられるガイドライン等の準則や、関係機関の組織や手続きに関する法律も、倒産法として考慮する必要があります。
倒産法が存在する主な目的3つ
これらの倒産法はどのような理由から存在しているのでしょうか。
その理由として挙げられるのが次の3つです。
債権者の権利を平等に保護する
倒産法が存在する理由の一つ目が債権者の権利の平等な保護するです。
もし倒産法がなければ、債権の回収が危ぶまれる状況になると、債権者は我先にと債権の回収を行なったり、債務者が一部の債権者を優遇するなどの恐れがあります。
倒産法はこれらの行為を制限して、債権者が平等に取り扱われるようになっています。
例えば破産法の場合には、訴訟手続きの停止(破産法24条1項3号)、債務者が特定の債権者に返済した場合の取戻し・刑事罰(破産法62条・破産法266条)、債権者が債務者に面会の強要に刑事罰規定(破産法275条)などを規定しています。
これによって、特定の債権者のみが債務者から回収するのを防ぎ、回収してしまった場合でも取戻しを行って債権者に配当して、債権者を平等に取り扱います。
債務者の経済生活の再生を支援する
債務者の経済生活の再生を支援することは倒産法が存在する目的の一つです。
債務の返済が難しくなったとしても必ず返済をしなければならないとすると、債務者の生活が困窮してしまいます。
資本主義社会では経済的な状況が常に変化するので、大きな負債を負う可能性もあり、その救済の仕組みもまた必要であると考えられます。
民事再生や会社更生によって会社を再建できれば、経営陣の経済生活の再生もできます。
また、会社を清算してしまうときには、代表者が個人で負っている債務や連帯保証債務について自己破産をすれば、個人については免責してもらうえます(破産法第12条第1節248条以下)。
倒産法は債務者となる会社の経営者などの経済生活での再生も目的としています。
企業倒産による経済混乱を防ぎ健全性を維持する
企業の倒産による経済混乱を防ぎ、社会の健全性を維持も倒産法の目的です。
企業が倒産すると様々な経済混乱が生じます。
そこで働いている従業員は職を失う可能性がありますし、その会社の取引先に影響したり、連帯保証人となっている会社・経営者に請求され、連鎖倒産が発生します。
このような経済混乱を防げば、社会の健全性を維持できます。