自己破産とは?メリット・デメリットを解説

自己破産とは?メリット・デメリットを解説

自己破産とは、「借金を免責(返済義務の免除)にできる法的手続き」です。

すべての借金の返済義務を免れることができるため、債務者は大きな経済的利益を受けられます。しかし、デメリットもあるため注意しなければいけません。

この記事では、自己破産とはどのような手続きなのか、自己破産に伴うメリットやデメリットには何があるのか?について、詳しく解説しています。

借金に悩まれている人、自己破産を検討している人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

【ポイント】
本記事では「免責許可」や「免責不許可」といった単語が何度も出てきます。免責許可とは、自己破産を行ううえでの最終目標であり、「借金の返済義務を免除すること」を指します。

一方で、免責不許可とは、免責許可がおりないことです。つまり、自己破産による効果を得られなかった状態を指します。この知識だけはあらかじめ頭に入れておいていただき、本記事を参考にしてください。

目次

自己破産とは裁判所による破産手続き開始の決定を受けた債務者

自己破産とは、一言で表すなら「借金を免責(返済義務の免除)にできる法的手続き」です。破産手続きを開始し、最終的に裁判所から免責許可決定を受けると、現在抱えている借金の返済義務が免除されます。

ただ、すべての人が自己破産をできるわけではありません。とくに「免責不許可事由」に該当した場合、免責許可決定を受けるのが難しくなってしまいます。

また、最終的に免責許可決定を受けたとしても、自己破産手続きによって免責とならない債務もあるため注意しなければいけません。

まずは、自己破産の条件や注意事項、破産手続きの流れについて詳しく解説します。

自己破産できる条件を解説!免除されないお金もある

自己破産は、何らかの債務を抱えている人であれば誰でも申立てを行えます。しかし、すべての人が破産手続開始決定を受けられるわけではありません。

破産手続開始の決定を受けるためには、借金の有無に関わらず「支払い不能状態にあること」自己破産の条件です。

破産法の第15条によると、自己破産は「①必要書類を準備して自己破産の申し立て」「②裁判所が書類を精査して破産手続き開始決定の有無を判断する」③以降は、手続きの方法によって変わる……といった流れで進んでいきます。

まずは、必要書類を裁判所に提出したうえで、裁判官が破産手続を開始するかどうかを判断します。このとき、裁判所が破産手続開始決定を下すことです。

自己破産は「破産法」という法律に定められている法的な手続きであり、最終的には借金の免責を目指すために行われます。

免責許可決定が下されると、債権者は本来得られるはずであった利益はもちろん、元本の返済も受けられない状態となります。そのため、債権者側が経済的なダメージを受けるのが自己破産です。

上記のことから、自己破産は「返済能力がないこと」を調査したうえで、最終的に免責許可決定を下すかどうかを判断しなければいけません。破産手続開始決定は、免責許可決定へ向けた1ステップ目であると認識しておけば良いでしょう。

また、自己破産は「すべての借金を免責できる」と勘違いをしている人も多いです。実は、自己破産を行っても免責にできない債務(これを非免責債権と言います)があるため注意しなければいけません。

まずは、自己破産ができる条件と免責にできない債権について詳しく解説します。

借金の大きさに関わらず支払不能と認められた場合

破産手続開始決定および免責許可決定を受けるためには、借金の大きさに関わらず、「返済不能状態に陥っていること」が条件です。

たとえば、500万円の借金を抱えている人が時価1,000万円相当の不動産を所有している場合、自己破産による免責許可決定は受けられません。なぜなら、不動産を売却することによって、借金を返済できるため「返済能力がある」と判断されるためです。

一方で、借金が100万円程度しかない人であっても、生活保護受給者であれば、免責許可決定を受けられる可能性は高くなります。なぜなら、生活保護受給者は保護費での借金返済が認められていないため、借金の返済が難しいためです。

このように、借金の大小ではなく、あくまでも「返済能力があるかどうか」で判断されます。

ギャンブルや不法行為の免責不許可事由は認められない

自己破産では、免責不許可事由に該当する場合、原則免責許可がおりません。免責不許可事由とは、「自己破産するに相応しくない状況(事由)」を指します。

実際、免責不許可事由に該当する借金や行為は以下のとおりです。

  • 免責手続において非協力的な場合(虚偽の申告等)
  • 浪費やギャンブルで借金を増やした場合
  • クレジットカードの現金化(破産手続直前に行っていた場合など)
  • 財産隠しや財産の価値を減少させる行為(債権者の利益を妨害する行為)
  • 支払い能力について、債権者を欺いた場合(虚偽の収入を申告して、借入した場合など)
  • 過去7年以内に免責許可決定を受けたことがある

参考:破産法|第252条

自己破産は債権者側が大きな経済的損失を受けます。そのため、破産者側が裁判所や債権者に対して、協力的でなければいけません。非協力的な態度をとったり、債権者の利益を害するような行為があったりした場合は、「免責に相応しくない」と判断されてしまいます。

【破産者とは】
破産手続開始決定を受けると、申立てを行った人は「破産者」となります。最終的に免責許可決定が下されると破産者ではなくなりますが、免責不許可となった場合はそのまま破産者となり続けます。そのため、破産者としての制限は条件を満たすまで残り続けるため注意しましょう。

なお、免責不許可事由が「ギャンブルで作った借金で自己破産ができない」と言われている所以です。

そのため、ギャンブルや浪費で作った借金であることを理由に、自己破産を諦めている人もいるのではないでしょうか。実は、免責不許可事由に該当する場合であっても、免責許可決定を受けられる場合があります。

これを「裁量免責」と言います。裁量免責は、裁判官の裁量で免責許可決定を下すことのできるものです。実際、自己破産の大半で免責許可決定が下されています。

上記のことから、たとえ免責不許可事由に該当しても、諦めずに弁護士へ相談をしましょう。

税金や損害賠償金など免除されない債務もある

自己破産は「借金を免責できる法的手続き」ですが、一部免責とならない債務もあるため注意しなければいけません。自己破産によって免責にならない債務は「非免責債権」と呼ばれており、主に以下のような債務が該当します。

  • 損害賠償
  • 罰金・反則金
  • 租税公課(税金等)
  • 養育費

非免責債権は、「免責するに相応しくない債務」と考えておけば良いです。たとえば、損害賠償や罰金、反則金等はその性質上、免責にすべきではありません。

自己破産手続きは2種類!手続きの流れや期間について

自己破産手続きは2種類

自己破産手続きには「同時廃止」と「管財事件(少額管財事件)」の2種類があります。

同時廃止と管財事件の違いは「破産者の財産の有無」です。財産がない破産者の場合は、比較的スムーズに手続きを進行できる同時廃止事件が選択されます。一方で、法人や個人であっても財産がある場合は、管財事件が選択されやすいです。

また、免責不許可事由に該当する場合、財産隠しの可能性も疑われるため、管財事件が選択されやすくなります。

次に、自己破産の流れやおおよその期間について、詳しく解説します。

同時廃止

同時廃止は、財産がほとんどない破産者に対して適用される破産手続きです。

本来、自己破産は破産者の債務を免責する代わりに、有している財産をすべての債権者に平等に分配しなければいけません。そのため、本来であれば管財人(弁護士)が破産者の財産を調査する必要があります。

しかし、そもそも債権者に分配できる財産が一切ない債務者の場合は、管財人を付けて財産を調査する必要がありません。そのため、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了させます。このことを「同時廃止」と言います。

【同時廃止の流れ】

  1. 破産手続申立て準備(2か月〜3か月)
  2. 破産手続の申立て(即日)
  3. 破産手続開始決定・破産手続廃止決定(申立てから2週間〜1か月程度)
  4. 免責許可・不許可の決定

同時廃止事件の場合、準備から免責許可決定までおおよそ4か月で完了します。管財事件とは異なり、細かい財産調査を行う必要がないため、比較的短期間で手続きが完了します。

自己破産手続きにおいて、とくに時間がかかる手続きは「破産申立て準備」です。準備期間では、主に財産情報や家族情報(家族の収入や財産等)、債権者情報などを細かく書面に記す必要があるため、この調査に時間がかかるためです。

申立てをしてしまえば、とくに提出書類に不備がなければスムーズに手続きは進み、完了します。

管財事件(少額管財事件)

管財事件は「少額管財事件」と「通常管財事件」に分類されます。少額管財事件とは、破産者に財産はあるものの、比較的少ない場合に適用される手続きです。

少額管財事件と通常管財事件それぞれに明確な基準があるわけではありません。同じ債務額であっても、比較的手続きが簡易である場合は少額管財事件が選択されることがあります。

【ポイント】
少額管財事件と通常管財事件は、明確な基準は設けられていないうえに裁判所によっても取り扱いが異なります。そのため「〇〇以上は通常管財〇〇未満は少額管財」とは一概に言えません。

少額管財事件と通常管財事件は、それぞれ裁判所に支払う費用に大きな差があります。少額管財であれば、通常管財と比較して手間が少ないため、20万円程度です。一方、通常管財の場合は、案件によって異なるものの50万円〜の費用が発生します(※東京地裁|個人破産の場合)。

参考:裁判所|よくある質問

【管財事件の流れ】

  1. 破産手続申立て準備(2か月〜3か月)
  2. 破産手続の申立て(即日)
  3. 破産手続開始決定(申立てから2週間〜1か月程度)
  4. 管財人の選任・財産の調査・債権者集会・換価処分(2か月〜7か月程度)
  5. 免責許可・不許可の決定

管財事件の場合、破産手続開始決定後に管財人(弁護士)が選任されます。弁護士が破産者に代わって財産を管理し、債権者に換価処分(お金に変えて分配すること)を行います。

管財事件の場合は、破産者の財産を調査したり債権者集会を開いたりする必要があるため、相当な期間が必要です。少額管財の場合で2か月〜3か月程度、通常管財の場合は4か月〜7か月程度の期間が必要となります。

合計すると、申立て準備から半年〜1年程度かかります。ただ、この期間は目安であり、複雑な事件の場合はさらに期間がかかる場合もあるため注意してください。

自己破産にかかる弁護士費用・裁判費用は30〜100万円程

自己破産の費用は大きく分けて「弁護士費用」と「裁判所へ支払う費用」です。目安として、30万円〜100万円程度の費用が発生します。金額に大きな差があるのは、依頼する弁護士や手続きの内容によって異なるためです。

弁護士費用裁判所費用(与納金)合計
同時廃止30万円〜0円30万円
少額管財30万円〜20万円〜50万円
通常管財50万円〜50万円〜100万円

参考:裁判所|よくある質問

上記金額はあくまでも目安であるため、実際の費用は異なる場合があります。また、裁判所へ支払う費用は、与納金の他に官報公告費用(1万円強)や申立て手数料が別途発生します。

自己破産のメリットは?早めに解決して状況を改善しよう

自己破産を行う最大のメリットは「借金を免責できること」です。免責許可決定が下されると、これまで返済に苦労していた借金の返済義務は一切なくなります。また、これまで嫌になる程来ていた電話や督促状、訴状も一切届かなくなり、借金によるストレスもなくなるでしょう。

さらに、「自己破産をするとすべての財産を失うことになる」と考えている人も多いですが、実は、一部残しておける財産もあるのです。たとえば、最低限の現金や生活必需品等は、自己破産時の財産には含まれません。

次に、自己破産のメリットや残しておける財産について詳しく解説します。

借金返済が免除になり債権者からの催促が止まる

自己破産による免責が確定すると、最終的に非免責債権を除くすべての債権の支払い義務が免除されます。

【非免責債権とは?】
非免責債権とは、賠償金や罰金、租税公課等、自己破産をしても無くならない債権です。

借金自体は無くならないものの、法的に返済義務がなくなるため、債権者も債権の請求をできなくなります。そのため、免責が確定した時点で、自己破産の対象となった債権者からは、今後一切の請求を受けることはありません。

ちなみに、借金の返済が免除されるタイミングは「免責確定後」ですが、債権者からの督促が止まるのは「弁護士に相談をした時点」です。

通常、自己破産を検討している債務者は、初めに弁護士や司法書士といった法律の専門家に借金の整理を依頼します。このとき、弁護士等はすべての債権者に対して「受任通知書」を送付します。

債権者は、弁護士等から受任通知書が届いた時点で、債務者に対して直接連絡をしたり借金の返済を求めたりしてはいけません。これは、貸金業法第21条に記されていることです。

そのため、債務者は初めに弁護士へ債務の相談をしに行き、依頼をした時点で督促等は一切止まるようになっています。ただし、免責が確定するまでは借金の返済義務が免除されているわけではないため、その点は注意しましょう。

【ポイント】
弁護士等に依頼をした時点で一切の取り立てが停止するため、破産申立て準備期間や破産手続中も債権者から連絡が来ることはありません。また、債権者側に受任通知が届くまで、依頼から数日程度かかる場合があります。このときに電話等があった場合は「〇〇法律事務所に債務の相談(依頼)をしています」と伝えれば、その後の督促はピタッっと止まるため安心してください。

訴訟されてても差し押さえが中止・失効に

現在、強制執行(差し押さえ)中の財産がある場合は、破産手続開始決定時点で一時的に留保されます。その後、免責許可が決定されると、強制執行の効力は失効します。

ただし、これまでに差し押さえられた財産については、一切戻ってきません。そのため、自己破産を検討される場合は、できるだけ早めに弁護士へ相談をし、手続きを介したほうが良いです。

生活に必要な財産は残せる!現金は99万円以下

自己破産をしても生活に必要となる財産は、基本的に残しておけます。自己破産によって残しておける財産は、大きく分けて「自由財産」と「新得財産」があります。

自由財産とは、破産手続開始決定時点で破産者が所有している財産のうち、破産財団に含まれない財産を言います。自由財産に含まれる主な財産は以下のとおりです。

  • 99万円以下の現金
  • 差押禁止財産

まず、基本的に99万円以下の現金は手元に残しておけます。自己破産を行うことによって、原則すべての財産が処分の対象となります。そのため、最低限度の生活を送るための資金として、99万円以下の現金であれば処分対象になりません。

そして、国税徴収法(第75条)に定められている「差押禁止財産」も残しておけます。差押禁止財産は以下が該当します。

  • 生活必需品(寝具・タンス・テレビ・衣服等)
  • 生計を立てる上で必要となるもの
  • 給料の一部
  • 公的年金

等々

また、自己破産では「自由財産の拡張」が認められています。自己破産の拡張とは、通常は換価処分の対象となる財産であっても、特別な事情がある場合は破産財団に含まない財産を指します。

たとえば、現金は原則99万円までしか残しておけません。しかし、たとえば「妻の病気の治療費で150万円が必要」といった場合、自由財産の拡張が認められれば150万円まで残しておける仕組みです。

【ポイント】
「自己破産をすると自動車を失う」と考えている人も多いですが、実務上は初年度登録から5年度以上経過している場合は、価値ゼロとして判断されます。つまり、換価処分の対象にはなりません(高級車等、価値が明らかにある場合を除く)。ただし、ローンが残っている場合、ローン会社に引き上げられてしまうため残しておけません。

破産手続き完了後に得た財産は没収されない

自己破産をしても残しておける財産に「新得財産」というものがあります。新得財産とは「新しく得た財産」を指し、破産手続開始決定後に得た財産は破産財団に含まないことを意味します。

自己破産するとどうなる?デメリットを解説

自己破産するデメリット

自己破産は、「現在の債務を免責できる」という大きなメリットがあります。しかし、以下のようなデメリットもあるため注意しなければいけません。

  • 財産を現金化して債務者の返済に当てなければいけない
  • クレジットカードの作成・新規借入が5年以上は難しい
  • 官報に個人情報が掲載される
  • 一部の職業や資格が制限される
  • 破産手続き中は引っ越しや海外渡航に許可が必要
  • 破産手続き中の郵便物は、管財人に管理される

次に、自己破産するとどうなるのか、デメリットについても詳しく解説します。

財産を現金化して債務者の返済にあてる必要がある

自己破産は、破産者が所有する自由財産や新得財産を除くすべての財産を換価処分しなければいけません。たとえば、住宅や生命保険等もすべて換価処分の対象になります。

そもそも、自己破産という手続きは借金を免責にする手続きであり、債務者は大きな経済的利益を受けます。一方で、債権者は債務者から得られるはずであった利息や元金を得られなくなるため、大きな経済的損失が発生します。

そのため、債務者側も所有する一定以上の財産を債権者に対して分配しなければ、割に合いません。よって、債務者は一定以上の財産を処分しなければいけません。

クレジットカードの作成・新規借入が最低5年はできない

自己破産をすると、個人信用情報機関に事故情報(自己破産をした情報)が掲載されます。事故情報が掲載されている間は、クレジットカードの新規作成や新たな借入が難しくなります。

ただし、法律で「金融事故を起こした人に対して、クレジットカードを発行してはいけない」や「融資を行ってはいけない」と定められているわけではありません。そのため、自己破産をしたからといって、絶対にクレジットカードの発行や新たな借入ができなくなるわけではありません。あくまでも、クレジットカード会社や各金融機関の判断によります。

とはいえ、一般的に見て金融事故を起こした履歴が明らかである人に対して融資を行うのは、リスクしかありません。あえてリスクを負ってまでクレジットカードを発行したり、融資をしたりする金融機関は少ないです。

上記のことから、自己破産後クレジットカードの作成・新規借入は難しいと言われています。

【ポイント】
自己破産による事故情報登録期間はJICCおよびCICで5年間、全銀協で7年間です。全銀協は、主に銀行カードローンやその他ローン、クレジットカードを所有していた人が該当します。なお、自己破産をした場合は免責確定で完済扱いとなるため、免責確定が起算日となります。

官報に自己破産者として住所・氏名が掲載される

自己破産をすると破産手続開始決定時点と免責許可決定時点の2回、官報に個人情報が掲載されてしまいます。

官報は国の機関紙であり、誰でも閲覧できるものです。そのため、家族や友人等に見られてしまう可能性もあるため注意しなければいけません。しかし、実際に官報を閲覧している人は少ないため、自己破産を知られてしまう可能性は低いため安心してください。

そもそも、官報に破産情報を掲載する理由は、破産者の債権者に対して公表をするためです。たとえば、破産申立てを行い免責許可決定が下された場合、裁判所から債権者に対して通知が届くことはありません。

そのため、債権者は官報を確認したうえで自社の債務者の破産手続開始決定を受けたことや免責許可が決定したことを知ります。

つまり、官報は破産者に対する戒めのために行われるものではなく、債権者に対して知らせる目的があります。

上記のことからもわかるように、官報を閲覧する人は主に金融機関関係者や信用情報機関で勤務している人たちです。

一部の職業や資格が制限されて就業できない場合もある

破産申立てを行い、破産手続開始決定を受けると債務者は「破産者」になります。破産者になると、さまざまな資格制限を受けます。資格制限を受けている間は、一定の職に就けないため注意しましょう。

自己破産による資格制限は、各資格の法律によって定められており、たとえば警備員や生命保険募集員、士業などさまざまな職業(資格)が該当します。

制限を受ける期間は破産者である期間であるため、免責許可決定が下された時点で復権します。そのため、通常は半年〜1年程度で復権できるため安心してください。

ただし、万が一、免責不許可となった場合は破産者状態が続きます。免責不許可の場合、免責不許可から10年経過もしくは何らかの形で債務が消滅した場合(債務免除や完済をした場合など)、または個人再生による再生認可を受けた場合は復権します。

破産手続き中は引っ越しや海外渡航に許可が必要になる

破産手続き中に引っ越しや海外渡航を行う際は、裁判所の許可を得なければいけません。とくに管財事件として破産手続きが行われている場合は、渡航と制限される場合があるため注意しましょう。

引っ越しや渡航を制限する目的は、裁判所や管財人と破産者が常に連絡を取り合える状態にしておく必要があるためです。

破産手続き中は郵便物が管財人によって管理される

自己破産のうち、管財事件の場合はすべての郵便物を管財人に管理・チェックされます。管財事件は財産がある場合や免責不許可事由に該当する場合に選択される手続きであるため、財産隠し等を防止する目的から郵便物等の管理が行われます。

管財人によるチェックが完了次第、破産者にすべて渡されるためその点は安心してください。

自己破産をする前に他の債務整理も検討しよう

債務を整理するための手続きは、自己破産の他にも以下のようなものがあります。

  • 原則利息のみをカットして元金の完済を目指す「任意整理」
  • 借金を大幅にカットできる「個人再生」

自己破産は、借金を免責にできるという大きなメリットがある反面、先ほども紹介したとおりさまざまなデメリットがあります。そのため、自己破産を最終手段として検討しておいたほうが良いでしょう。

次に、自己破産の前に検討しておきたい債務整理手続きについて詳しく解説します。

債権者と交渉する任意整理で借金完済を目指す

任意整理は、債権者と交渉をして原則利息部分をカットし、元金のみを3年〜5年程度で完済を目指す債務整理手続きです。カットされる利息は、遅延損害金(遅延利息)と経過利息、将来利息の3種類です。

任意整理は、その他の債務整理とは異なり、債権者との交渉次第です。そのため、債権者(金融機関)の中には、初めから「任意整理お断り!」といった姿勢をとっているところもある点がデメリットです。

また、契約期間が極端に短い場合や返済回数が少ない場合は、交渉が難航し、利息の一部が残る可能性があるため注意が必要です。

一方で、任意整理は「交渉」であり、法的手続きではありません。そのため、個人再生や自己破産と比較して簡易的に手続きを行える点がメリットです。費用も抑えられるため、支払い能力がある人は検討されてみてはいかがでしょうか。

安定した収入があるなら個人再生も視野に入れる

個人再生は、借金を大幅に減額できる債務整理手続きです。減額できる金額等は以下のとおりです。

借金額最低弁済額
100万円以下全額
100万円〜500万円300万円
500万円〜1,500万円1/5
1,500万円〜3,000万円500万円
3,000万円〜5,000万円1/10

個人再生による基本的な最低弁済額は上記のとおりです。ただし、個人再生の種類や財産の程度によっては可処分所得基準や精算価値保障基準が適用される場合もあります。

個人再生は必ず一部の借金が残ります。しかし、自己破産とは異なり、住宅を残しておくことができるため、「住宅を失いたくない」と考えている人に向いている債務整理です。

また、資格制限もなく自己破産で言う免責不許可事由もありません。そのため、自己破産手続きが難しい人も検討できる手続きです。

自己破産に関するよくある質問

自己破産に関するよくある質問を紹介します。

自己破産して免除になったお金は誰が払う?

免責となったお金は、誰も支払い義務を負いません。債務者は、所有する財産の範囲で換価処分の義務を負いますが、超える部分の返済義務は負いません。また、他の誰かが債務者の代わりに借金を返済することもありません。つまり、債権者側が大きな経済的損失を受ける仕組みです。

生活保護者や失業者でも自己破産できる?

「支払不能」と判断されれば自己破産は可能です。とくに、生活保護受給者の場合、保護費での借金返済は許されていないため、必然的に自己破産を選択せざるを得ません。失業者の場合、今後再就職して返済できるかどうか、によって判断されますが、返済能力がない場合は破産手続きが可能です。

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自己破産とは?メリット・デメリットを解説

自己破産とは?メリット・デメリットを解説

自己破産とは、「借金を免責(返済義務の免除)にできる法的手続き」です。

すべての借金の返済義務を免れることができるため、債務者は大きな経済的利益を受けられます。しかし、デメリットもあるため注意しなければいけません。

この記事では、自己破産とはどのような手続きなのか、自己破産に伴うメリットやデメリットには何があるのか?について、詳しく解説しています。

借金に悩まれている人、自己破産を検討している人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

【ポイント】
本記事では「免責許可」や「免責不許可」といった単語が何度も出てきます。免責許可とは、自己破産を行ううえでの最終目標であり、「借金の返済義務を免除すること」を指します。

一方で、免責不許可とは、免責許可がおりないことです。つまり、自己破産による効果を得られなかった状態を指します。この知識だけはあらかじめ頭に入れておいていただき、本記事を参考にしてください。

目次

自己破産とは裁判所による破産手続き開始の決定を受けた債務者

自己破産とは、一言で表すなら「借金を免責(返済義務の免除)にできる法的手続き」です。破産手続きを開始し、最終的に裁判所から免責許可決定を受けると、現在抱えている借金の返済義務が免除されます。

ただ、すべての人が自己破産をできるわけではありません。とくに「免責不許可事由」に該当した場合、免責許可決定を受けるのが難しくなってしまいます。

また、最終的に免責許可決定を受けたとしても、自己破産手続きによって免責とならない債務もあるため注意しなければいけません。

まずは、自己破産の条件や注意事項、破産手続きの流れについて詳しく解説します。

自己破産できる条件を解説!免除されないお金もある

自己破産は、何らかの債務を抱えている人であれば誰でも申立てを行えます。しかし、すべての人が破産手続開始決定を受けられるわけではありません。

破産手続開始の決定を受けるためには、借金の有無に関わらず「支払い不能状態にあること」自己破産の条件です。

破産法の第15条によると、自己破産は「①必要書類を準備して自己破産の申し立て」「②裁判所が書類を精査して破産手続き開始決定の有無を判断する」③以降は、手続きの方法によって変わる……といった流れで進んでいきます。

まずは、必要書類を裁判所に提出したうえで、裁判官が破産手続を開始するかどうかを判断します。このとき、裁判所が破産手続開始決定を下すことです。

自己破産は「破産法」という法律に定められている法的な手続きであり、最終的には借金の免責を目指すために行われます。

免責許可決定が下されると、債権者は本来得られるはずであった利益はもちろん、元本の返済も受けられない状態となります。そのため、債権者側が経済的なダメージを受けるのが自己破産です。

上記のことから、自己破産は「返済能力がないこと」を調査したうえで、最終的に免責許可決定を下すかどうかを判断しなければいけません。破産手続開始決定は、免責許可決定へ向けた1ステップ目であると認識しておけば良いでしょう。

また、自己破産は「すべての借金を免責できる」と勘違いをしている人も多いです。実は、自己破産を行っても免責にできない債務(これを非免責債権と言います)があるため注意しなければいけません。

まずは、自己破産ができる条件と免責にできない債権について詳しく解説します。

借金の大きさに関わらず支払不能と認められた場合

破産手続開始決定および免責許可決定を受けるためには、借金の大きさに関わらず、「返済不能状態に陥っていること」が条件です。

たとえば、500万円の借金を抱えている人が時価1,000万円相当の不動産を所有している場合、自己破産による免責許可決定は受けられません。なぜなら、不動産を売却することによって、借金を返済できるため「返済能力がある」と判断されるためです。

一方で、借金が100万円程度しかない人であっても、生活保護受給者であれば、免責許可決定を受けられる可能性は高くなります。なぜなら、生活保護受給者は保護費での借金返済が認められていないため、借金の返済が難しいためです。

このように、借金の大小ではなく、あくまでも「返済能力があるかどうか」で判断されます。

ギャンブルや不法行為の免責不許可事由は認められない

自己破産では、免責不許可事由に該当する場合、原則免責許可がおりません。免責不許可事由とは、「自己破産するに相応しくない状況(事由)」を指します。

実際、免責不許可事由に該当する借金や行為は以下のとおりです。

  • 免責手続において非協力的な場合(虚偽の申告等)
  • 浪費やギャンブルで借金を増やした場合
  • クレジットカードの現金化(破産手続直前に行っていた場合など)
  • 財産隠しや財産の価値を減少させる行為(債権者の利益を妨害する行為)
  • 支払い能力について、債権者を欺いた場合(虚偽の収入を申告して、借入した場合など)
  • 過去7年以内に免責許可決定を受けたことがある

参考:破産法|第252条

自己破産は債権者側が大きな経済的損失を受けます。そのため、破産者側が裁判所や債権者に対して、協力的でなければいけません。非協力的な態度をとったり、債権者の利益を害するような行為があったりした場合は、「免責に相応しくない」と判断されてしまいます。

【破産者とは】
破産手続開始決定を受けると、申立てを行った人は「破産者」となります。最終的に免責許可決定が下されると破産者ではなくなりますが、免責不許可となった場合はそのまま破産者となり続けます。そのため、破産者としての制限は条件を満たすまで残り続けるため注意しましょう。

なお、免責不許可事由が「ギャンブルで作った借金で自己破産ができない」と言われている所以です。

そのため、ギャンブルや浪費で作った借金であることを理由に、自己破産を諦めている人もいるのではないでしょうか。実は、免責不許可事由に該当する場合であっても、免責許可決定を受けられる場合があります。

これを「裁量免責」と言います。裁量免責は、裁判官の裁量で免責許可決定を下すことのできるものです。実際、自己破産の大半で免責許可決定が下されています。

上記のことから、たとえ免責不許可事由に該当しても、諦めずに弁護士へ相談をしましょう。

税金や損害賠償金など免除されない債務もある

自己破産は「借金を免責できる法的手続き」ですが、一部免責とならない債務もあるため注意しなければいけません。自己破産によって免責にならない債務は「非免責債権」と呼ばれており、主に以下のような債務が該当します。

  • 損害賠償
  • 罰金・反則金
  • 租税公課(税金等)
  • 養育費

非免責債権は、「免責するに相応しくない債務」と考えておけば良いです。たとえば、損害賠償や罰金、反則金等はその性質上、免責にすべきではありません。

自己破産手続きは2種類!手続きの流れや期間について

自己破産手続きは2種類

自己破産手続きには「同時廃止」と「管財事件(少額管財事件)」の2種類があります。

同時廃止と管財事件の違いは「破産者の財産の有無」です。財産がない破産者の場合は、比較的スムーズに手続きを進行できる同時廃止事件が選択されます。一方で、法人や個人であっても財産がある場合は、管財事件が選択されやすいです。

また、免責不許可事由に該当する場合、財産隠しの可能性も疑われるため、管財事件が選択されやすくなります。

次に、自己破産の流れやおおよその期間について、詳しく解説します。

同時廃止

同時廃止は、財産がほとんどない破産者に対して適用される破産手続きです。

本来、自己破産は破産者の債務を免責する代わりに、有している財産をすべての債権者に平等に分配しなければいけません。そのため、本来であれば管財人(弁護士)が破産者の財産を調査する必要があります。

しかし、そもそも債権者に分配できる財産が一切ない債務者の場合は、管財人を付けて財産を調査する必要がありません。そのため、破産手続開始決定と同時に破産手続を終了させます。このことを「同時廃止」と言います。

【同時廃止の流れ】

  1. 破産手続申立て準備(2か月〜3か月)
  2. 破産手続の申立て(即日)
  3. 破産手続開始決定・破産手続廃止決定(申立てから2週間〜1か月程度)
  4. 免責許可・不許可の決定

同時廃止事件の場合、準備から免責許可決定までおおよそ4か月で完了します。管財事件とは異なり、細かい財産調査を行う必要がないため、比較的短期間で手続きが完了します。

自己破産手続きにおいて、とくに時間がかかる手続きは「破産申立て準備」です。準備期間では、主に財産情報や家族情報(家族の収入や財産等)、債権者情報などを細かく書面に記す必要があるため、この調査に時間がかかるためです。

申立てをしてしまえば、とくに提出書類に不備がなければスムーズに手続きは進み、完了します。

管財事件(少額管財事件)

管財事件は「少額管財事件」と「通常管財事件」に分類されます。少額管財事件とは、破産者に財産はあるものの、比較的少ない場合に適用される手続きです。

少額管財事件と通常管財事件それぞれに明確な基準があるわけではありません。同じ債務額であっても、比較的手続きが簡易である場合は少額管財事件が選択されることがあります。

【ポイント】
少額管財事件と通常管財事件は、明確な基準は設けられていないうえに裁判所によっても取り扱いが異なります。そのため「〇〇以上は通常管財〇〇未満は少額管財」とは一概に言えません。

少額管財事件と通常管財事件は、それぞれ裁判所に支払う費用に大きな差があります。少額管財であれば、通常管財と比較して手間が少ないため、20万円程度です。一方、通常管財の場合は、案件によって異なるものの50万円〜の費用が発生します(※東京地裁|個人破産の場合)。

参考:裁判所|よくある質問

【管財事件の流れ】

  1. 破産手続申立て準備(2か月〜3か月)
  2. 破産手続の申立て(即日)
  3. 破産手続開始決定(申立てから2週間〜1か月程度)
  4. 管財人の選任・財産の調査・債権者集会・換価処分(2か月〜7か月程度)
  5. 免責許可・不許可の決定

管財事件の場合、破産手続開始決定後に管財人(弁護士)が選任されます。弁護士が破産者に代わって財産を管理し、債権者に換価処分(お金に変えて分配すること)を行います。

管財事件の場合は、破産者の財産を調査したり債権者集会を開いたりする必要があるため、相当な期間が必要です。少額管財の場合で2か月〜3か月程度、通常管財の場合は4か月〜7か月程度の期間が必要となります。

合計すると、申立て準備から半年〜1年程度かかります。ただ、この期間は目安であり、複雑な事件の場合はさらに期間がかかる場合もあるため注意してください。

自己破産にかかる弁護士費用・裁判費用は30〜100万円程

自己破産の費用は大きく分けて「弁護士費用」と「裁判所へ支払う費用」です。目安として、30万円〜100万円程度の費用が発生します。金額に大きな差があるのは、依頼する弁護士や手続きの内容によって異なるためです。

弁護士費用裁判所費用(与納金)合計
同時廃止30万円〜0円30万円
少額管財30万円〜20万円〜50万円
通常管財50万円〜50万円〜100万円

参考:裁判所|よくある質問

上記金額はあくまでも目安であるため、実際の費用は異なる場合があります。また、裁判所へ支払う費用は、与納金の他に官報公告費用(1万円強)や申立て手数料が別途発生します。

自己破産のメリットは?早めに解決して状況を改善しよう

自己破産を行う最大のメリットは「借金を免責できること」です。免責許可決定が下されると、これまで返済に苦労していた借金の返済義務は一切なくなります。また、これまで嫌になる程来ていた電話や督促状、訴状も一切届かなくなり、借金によるストレスもなくなるでしょう。

さらに、「自己破産をするとすべての財産を失うことになる」と考えている人も多いですが、実は、一部残しておける財産もあるのです。たとえば、最低限の現金や生活必需品等は、自己破産時の財産には含まれません。

次に、自己破産のメリットや残しておける財産について詳しく解説します。

借金返済が免除になり債権者からの催促が止まる

自己破産による免責が確定すると、最終的に非免責債権を除くすべての債権の支払い義務が免除されます。

【非免責債権とは?】
非免責債権とは、賠償金や罰金、租税公課等、自己破産をしても無くならない債権です。

借金自体は無くならないものの、法的に返済義務がなくなるため、債権者も債権の請求をできなくなります。そのため、免責が確定した時点で、自己破産の対象となった債権者からは、今後一切の請求を受けることはありません。

ちなみに、借金の返済が免除されるタイミングは「免責確定後」ですが、債権者からの督促が止まるのは「弁護士に相談をした時点」です。

通常、自己破産を検討している債務者は、初めに弁護士や司法書士といった法律の専門家に借金の整理を依頼します。このとき、弁護士等はすべての債権者に対して「受任通知書」を送付します。

債権者は、弁護士等から受任通知書が届いた時点で、債務者に対して直接連絡をしたり借金の返済を求めたりしてはいけません。これは、貸金業法第21条に記されていることです。

そのため、債務者は初めに弁護士へ債務の相談をしに行き、依頼をした時点で督促等は一切止まるようになっています。ただし、免責が確定するまでは借金の返済義務が免除されているわけではないため、その点は注意しましょう。

【ポイント】
弁護士等に依頼をした時点で一切の取り立てが停止するため、破産申立て準備期間や破産手続中も債権者から連絡が来ることはありません。また、債権者側に受任通知が届くまで、依頼から数日程度かかる場合があります。このときに電話等があった場合は「〇〇法律事務所に債務の相談(依頼)をしています」と伝えれば、その後の督促はピタッっと止まるため安心してください。

訴訟されてても差し押さえが中止・失効に

現在、強制執行(差し押さえ)中の財産がある場合は、破産手続開始決定時点で一時的に留保されます。その後、免責許可が決定されると、強制執行の効力は失効します。

ただし、これまでに差し押さえられた財産については、一切戻ってきません。そのため、自己破産を検討される場合は、できるだけ早めに弁護士へ相談をし、手続きを介したほうが良いです。

生活に必要な財産は残せる!現金は99万円以下

自己破産をしても生活に必要となる財産は、基本的に残しておけます。自己破産によって残しておける財産は、大きく分けて「自由財産」と「新得財産」があります。

自由財産とは、破産手続開始決定時点で破産者が所有している財産のうち、破産財団に含まれない財産を言います。自由財産に含まれる主な財産は以下のとおりです。

  • 99万円以下の現金
  • 差押禁止財産

まず、基本的に99万円以下の現金は手元に残しておけます。自己破産を行うことによって、原則すべての財産が処分の対象となります。そのため、最低限度の生活を送るための資金として、99万円以下の現金であれば処分対象になりません。

そして、国税徴収法(第75条)に定められている「差押禁止財産」も残しておけます。差押禁止財産は以下が該当します。

  • 生活必需品(寝具・タンス・テレビ・衣服等)
  • 生計を立てる上で必要となるもの
  • 給料の一部
  • 公的年金

等々

また、自己破産では「自由財産の拡張」が認められています。自己破産の拡張とは、通常は換価処分の対象となる財産であっても、特別な事情がある場合は破産財団に含まない財産を指します。

たとえば、現金は原則99万円までしか残しておけません。しかし、たとえば「妻の病気の治療費で150万円が必要」といった場合、自由財産の拡張が認められれば150万円まで残しておける仕組みです。

【ポイント】
「自己破産をすると自動車を失う」と考えている人も多いですが、実務上は初年度登録から5年度以上経過している場合は、価値ゼロとして判断されます。つまり、換価処分の対象にはなりません(高級車等、価値が明らかにある場合を除く)。ただし、ローンが残っている場合、ローン会社に引き上げられてしまうため残しておけません。

破産手続き完了後に得た財産は没収されない

自己破産をしても残しておける財産に「新得財産」というものがあります。新得財産とは「新しく得た財産」を指し、破産手続開始決定後に得た財産は破産財団に含まないことを意味します。

自己破産するとどうなる?デメリットを解説

自己破産するデメリット

自己破産は、「現在の債務を免責できる」という大きなメリットがあります。しかし、以下のようなデメリットもあるため注意しなければいけません。

  • 財産を現金化して債務者の返済に当てなければいけない
  • クレジットカードの作成・新規借入が5年以上は難しい
  • 官報に個人情報が掲載される
  • 一部の職業や資格が制限される
  • 破産手続き中は引っ越しや海外渡航に許可が必要
  • 破産手続き中の郵便物は、管財人に管理される

次に、自己破産するとどうなるのか、デメリットについても詳しく解説します。

財産を現金化して債務者の返済にあてる必要がある

自己破産は、破産者が所有する自由財産や新得財産を除くすべての財産を換価処分しなければいけません。たとえば、住宅や生命保険等もすべて換価処分の対象になります。

そもそも、自己破産という手続きは借金を免責にする手続きであり、債務者は大きな経済的利益を受けます。一方で、債権者は債務者から得られるはずであった利息や元金を得られなくなるため、大きな経済的損失が発生します。

そのため、債務者側も所有する一定以上の財産を債権者に対して分配しなければ、割に合いません。よって、債務者は一定以上の財産を処分しなければいけません。

クレジットカードの作成・新規借入が最低5年はできない

自己破産をすると、個人信用情報機関に事故情報(自己破産をした情報)が掲載されます。事故情報が掲載されている間は、クレジットカードの新規作成や新たな借入が難しくなります。

ただし、法律で「金融事故を起こした人に対して、クレジットカードを発行してはいけない」や「融資を行ってはいけない」と定められているわけではありません。そのため、自己破産をしたからといって、絶対にクレジットカードの発行や新たな借入ができなくなるわけではありません。あくまでも、クレジットカード会社や各金融機関の判断によります。

とはいえ、一般的に見て金融事故を起こした履歴が明らかである人に対して融資を行うのは、リスクしかありません。あえてリスクを負ってまでクレジットカードを発行したり、融資をしたりする金融機関は少ないです。

上記のことから、自己破産後クレジットカードの作成・新規借入は難しいと言われています。

【ポイント】
自己破産による事故情報登録期間はJICCおよびCICで5年間、全銀協で7年間です。全銀協は、主に銀行カードローンやその他ローン、クレジットカードを所有していた人が該当します。なお、自己破産をした場合は免責確定で完済扱いとなるため、免責確定が起算日となります。

官報に自己破産者として住所・氏名が掲載される

自己破産をすると破産手続開始決定時点と免責許可決定時点の2回、官報に個人情報が掲載されてしまいます。

官報は国の機関紙であり、誰でも閲覧できるものです。そのため、家族や友人等に見られてしまう可能性もあるため注意しなければいけません。しかし、実際に官報を閲覧している人は少ないため、自己破産を知られてしまう可能性は低いため安心してください。

そもそも、官報に破産情報を掲載する理由は、破産者の債権者に対して公表をするためです。たとえば、破産申立てを行い免責許可決定が下された場合、裁判所から債権者に対して通知が届くことはありません。

そのため、債権者は官報を確認したうえで自社の債務者の破産手続開始決定を受けたことや免責許可が決定したことを知ります。

つまり、官報は破産者に対する戒めのために行われるものではなく、債権者に対して知らせる目的があります。

上記のことからもわかるように、官報を閲覧する人は主に金融機関関係者や信用情報機関で勤務している人たちです。

一部の職業や資格が制限されて就業できない場合もある

破産申立てを行い、破産手続開始決定を受けると債務者は「破産者」になります。破産者になると、さまざまな資格制限を受けます。資格制限を受けている間は、一定の職に就けないため注意しましょう。

自己破産による資格制限は、各資格の法律によって定められており、たとえば警備員や生命保険募集員、士業などさまざまな職業(資格)が該当します。

制限を受ける期間は破産者である期間であるため、免責許可決定が下された時点で復権します。そのため、通常は半年〜1年程度で復権できるため安心してください。

ただし、万が一、免責不許可となった場合は破産者状態が続きます。免責不許可の場合、免責不許可から10年経過もしくは何らかの形で債務が消滅した場合(債務免除や完済をした場合など)、または個人再生による再生認可を受けた場合は復権します。

破産手続き中は引っ越しや海外渡航に許可が必要になる

破産手続き中に引っ越しや海外渡航を行う際は、裁判所の許可を得なければいけません。とくに管財事件として破産手続きが行われている場合は、渡航と制限される場合があるため注意しましょう。

引っ越しや渡航を制限する目的は、裁判所や管財人と破産者が常に連絡を取り合える状態にしておく必要があるためです。

破産手続き中は郵便物が管財人によって管理される

自己破産のうち、管財事件の場合はすべての郵便物を管財人に管理・チェックされます。管財事件は財産がある場合や免責不許可事由に該当する場合に選択される手続きであるため、財産隠し等を防止する目的から郵便物等の管理が行われます。

管財人によるチェックが完了次第、破産者にすべて渡されるためその点は安心してください。

自己破産をする前に他の債務整理も検討しよう

債務を整理するための手続きは、自己破産の他にも以下のようなものがあります。

  • 原則利息のみをカットして元金の完済を目指す「任意整理」
  • 借金を大幅にカットできる「個人再生」

自己破産は、借金を免責にできるという大きなメリットがある反面、先ほども紹介したとおりさまざまなデメリットがあります。そのため、自己破産を最終手段として検討しておいたほうが良いでしょう。

次に、自己破産の前に検討しておきたい債務整理手続きについて詳しく解説します。

債権者と交渉する任意整理で借金完済を目指す

任意整理は、債権者と交渉をして原則利息部分をカットし、元金のみを3年〜5年程度で完済を目指す債務整理手続きです。カットされる利息は、遅延損害金(遅延利息)と経過利息、将来利息の3種類です。

任意整理は、その他の債務整理とは異なり、債権者との交渉次第です。そのため、債権者(金融機関)の中には、初めから「任意整理お断り!」といった姿勢をとっているところもある点がデメリットです。

また、契約期間が極端に短い場合や返済回数が少ない場合は、交渉が難航し、利息の一部が残る可能性があるため注意が必要です。

一方で、任意整理は「交渉」であり、法的手続きではありません。そのため、個人再生や自己破産と比較して簡易的に手続きを行える点がメリットです。費用も抑えられるため、支払い能力がある人は検討されてみてはいかがでしょうか。

安定した収入があるなら個人再生も視野に入れる

個人再生は、借金を大幅に減額できる債務整理手続きです。減額できる金額等は以下のとおりです。

借金額最低弁済額
100万円以下全額
100万円〜500万円300万円
500万円〜1,500万円1/5
1,500万円〜3,000万円500万円
3,000万円〜5,000万円1/10

個人再生による基本的な最低弁済額は上記のとおりです。ただし、個人再生の種類や財産の程度によっては可処分所得基準や精算価値保障基準が適用される場合もあります。

個人再生は必ず一部の借金が残ります。しかし、自己破産とは異なり、住宅を残しておくことができるため、「住宅を失いたくない」と考えている人に向いている債務整理です。

また、資格制限もなく自己破産で言う免責不許可事由もありません。そのため、自己破産手続きが難しい人も検討できる手続きです。

自己破産に関するよくある質問

自己破産に関するよくある質問を紹介します。

自己破産して免除になったお金は誰が払う?

免責となったお金は、誰も支払い義務を負いません。債務者は、所有する財産の範囲で換価処分の義務を負いますが、超える部分の返済義務は負いません。また、他の誰かが債務者の代わりに借金を返済することもありません。つまり、債権者側が大きな経済的損失を受ける仕組みです。

生活保護者や失業者でも自己破産できる?

「支払不能」と判断されれば自己破産は可能です。とくに、生活保護受給者の場合、保護費での借金返済は許されていないため、必然的に自己破産を選択せざるを得ません。失業者の場合、今後再就職して返済できるかどうか、によって判断されますが、返済能力がない場合は破産手続きが可能です。

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