みなし解散とは?要件と対処法を詳しく解説

みなし解散とは?要件と対処法を詳しく解説

家族経営や少人数の会社では、役員の任期満了による変更登記手続きをしないまま放置しているケースも少なくありません。

しかし、登記手続きをしないで長年放置していると、実態のない会社とみなされ、強制的に解散させられてしまう「みなし解散」の対象になる可能性があります

管轄法務局からのみなし解散の予告通知が来てはじめて、どのように対処したらいいか迷う方もいるでしょう。事業を継続したい場合と、そのまま会社を解散し清算手続きまでしたい場合とでは対処法が異なります。

本記事では、みなし解散の具体的な要件とその対処法について詳しく解説します。みなし解散についての対処法を知りたい方はぜひ参考にしてください。

みなし解散とは長期間登記を怠たった会社を強制解散させること

みなし解散とは、 長期間登記を怠った会社について経営実態がないとみなされ、公告手続きを経て強制的に解散されてしまう手続きです。 

会社が長期間登記を行わないのは、単に登記を怠っている以外にも、実際に事業を廃止し実態のない会社となっている場合も多いのです。

事業実体のない会社を休眠会社といい、これを放置できない理由としては以下の点が挙げられます。

  • 事業を廃止し実体を失った会社が、いつまでも登記上公示されたままとなるため、登記の信頼を失いかねないこと
  • 休眠会社を売買するなど、犯罪の手段とされかねないこと

そのため、みなし解散の処理を進める休眠会社の整理作業が昭和49年から始まり、平成26年以降は毎年実施されています。この整理作業により休眠会社約71万社が手続きを経て解散されています。(昭和49年~令和5年)

参考:法務省/休眠会社、休眠一般法人の整理作業について

みなし解散の対象となる会社

みなし解散の対象となる会社は、最後の登記から12年以上経過している会社です。

株式会社の役員の任期は最長10年です。同じ人が引き続き取締役などになる場合も重任(再任のこと)の登記は必要です。

最長10年に余裕を2年見て、12年以上変更登記を行わない会社は、実体のない可能性が高いと捉えられてみなし解散の対象とされます。

このみなし解散は、あくまで長年登記上の変更がないことで判断され、普通に営業している会社でも該当する可能性があるため注意が必要です。

また、最後の登記以降に、会社の登記事項証明書や代表者届出印の印鑑証明書の交付請求を行っていても、みなし解散の対象からは外れません。

※特例有限会社や持分会社(合同会社、合名会社など)については、役員任期の定めがないため、役員の変更がない限り登記の必要がなく、みなし解散の対象にはなりません。

(取締役の任期)
第332条 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない
(監査役の任期)
第336条 監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない

参考:e-Gov法令検索/会社法

みなし解散がいつ行われるかは公表されていない

対象となった会社のみなし解散の実行がいつ行われるかは、特に公表されていません。知らない間にみなし解散の対象となっていることもあり得るので注意が必要です。

自身の会社がみなし解散の対象となっているかどうかは、最後に登記を行った日付けから12年以上経っていないかを確認して判断しましょう

平成26年度からは毎年、休眠会社にみなし解散の通知書が送付されています。

例えば、令和5年度においては、令和5年10月12日(木)の時点で対象となった休眠会社に対し、「みなし解散による官報公告を出した旨、また、令和5年12月12日(火)までに下記のいずれかの手続きがなされない限り、令和5年12月13日付けで解散したものとみなし、登記官により職権で解散の登記をする。」という内容の通知が発行されています。

  • 必要な登記(役員変更等の登記)の申請
  • 「まだ事業を廃止していない」旨の届出

事業を継続する場合は、指定された期限までにいずれかの手続きを行わなければ、みなし解散が決定してしまいます。

参考:法務省/休眠会社、休眠一般法人の整理作業について

みなし解散の流れ

みなし解散の流れ

みなし解散の流れは、以下のとおり3つのステップを踏みます。

  1. 法務大臣による公告がなされる
  2. 管轄登記所による通知
  3. みなし解散決定

詳しく見ていきましょう。

法務大臣による公告がなされる

法務大臣から、最後の登記から12年が経過している株式会社(休眠会社)に対して、2か月以内にその本店の所在地を管轄する登記所に必要な登記の申請もしくは事業を廃止していない旨の届出をすべき旨の官報公告がなされます。(会社法第472条第1項)

管轄登記所による通知

合わせて、管轄登記所から休眠会社に対して、官報公告がなされた旨の通知書が届きます(会社法第472条第2項)。

まだ事業を廃止していない休眠会社は、何らかの理由で管轄登記所からの通知書が届かない場合であっても、2か月の期日までに、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります。その届出をしない限り、期日の翌日付けで解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記を行います。

管轄登記所からの通知書が届かない場合、商号を変更又は本店を移転しているにもかかわらず、その変更の登記がされていないことが原因になってることがあります。このような休眠会社については、期日までに商号変更又は本店移転の登記をしましょう。

会社の実情に沿った登記申請をすることにより、休眠会社整理作業の対象外となり、みなし解散の登記がされません。

みなし解散決定

官報公告から2か月以内に必要な登記申請をするか、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をすると、みなし解散登記を回避できます。しかし、官報公告からどちらの手続きもしないまま2か月が経過すると、休眠会社は解散したものとみなされます

解散したものとみなされると、登記官が職権で解散の登記を行い、会社の登記簿に「令和〇年〇月〇日会社法第472条第1項の規定により解散」という記録がされます。

参考:e-Gov法令検索/会社法
参考:法務省/令和令和5年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

みなし解散となったが事業を継続したい場合

事業を実際に行っていて変更登記を怠っていただけの会社が、「みなし解散」の通知書を受けた場合は、事業継続のための手続きを行わなければなりません。

みなし解散の官報公告がなされてから経過した期間により、必要な手続きが異なります。

公告日から2か月以内の継続手続き

官報公告がなされてから2か月以内であれば、法務局で役員変更など最新の状態の登記、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出のいずれかをすることにより、みなし解散を回避できます(会社法第472条第1項)。

期日の余裕がない場合は、まず「まだ事業を廃止していない」旨の届出を出し、みなし解散の手続きを停止させてから変更登記を行いましょう。

従来の登記からの変更登記(役員重任登記を含む)手続きを行うことが必要です。

なお、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしただけでは、みなし解散の手続きが停止するだけで、翌年以降に再び整理作業の対象になります。いずれにせよ、早めの登記申請を行うべきでしょう。

公告日から2か月経過後3年以内の継続手続き

官報公告日から何もしないまま2か月が経過すると、会社は解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記がされてしまいます。
解散の登記がされると、取締役も自動的に退任になるため、登記官の職権で抹消されます。(監査役は自動的には抹消されません。)

みなし解散の登記をされた会社は、会社の清算をするためだけの「清算会社」となります。本来の会社事業を行うことはできません。

ただし、みなし解散から3年以内であれば、会社の継続手続きをし、会社を元の状態に復活させることが可能です(会社法第473条)。

※現在事業を行っていなくても、近いうちに再開するのであれば、会社継続登記を行っておくことをおすすめします。新たに会社の設立登記をしなくていいからです。

会社の継続手続きをする場合、次の手続きが必要になります。

1.清算人の登記
みなし解散によっていったん「清算会社」となるため、清算人を選任してその旨を登記する必要があります(会社法第477条)。

※清算人とは・・会社が解散してから法人格が消滅するまでの清算業務を担当する役員のこと。清算人になるのは原則として取締役ですが、定款や株主総会の決議で別段の定めがあればその定めに従います。清算人になるものがいない場合は、利害関係人の申立てにより裁判所が選任します(会社法第478条)。

2.会社継続の登記
会社を継続することについて、株主総会の特別決議を経て、その2週間以内に継続の登記をする必要があります(会社法第473条)。

※特別決議とは・・株主総会において議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権における3分の2以上の賛成を必要とする決議(会社法309条2項)

3.取締役の選任の登記
みなし解散によって取締役及び代表取締役は全員退任することになるので、改めて取締役及び代表取締役を選任して登記しなければなりません。

みなし解散から3年経過すると継続できない

みなし解散の登記がされてから、さらに3年が経過すると、株主総会決議による会社継続はできなくなり清算手続きしかできません

会社を継続したい場合には、必ず解散から3年以内に継続の手続をしましょう。

みなし解散となりそのまま会社を清算したい場合

みなし解散となり、事業実態がないのでそのまま会社を清算したい場合でも、会社の清算が自動的に終わるわけではありません。清算結了の手続きが必要です。

清算結了登記を行い会社を完全に消滅させる

株式会社がみなし解散となった後、事業を行っておらず再開する予定がない場合は、清算結了登記を行い会社を完全に消滅させましょう。

清算結了は、次の手順を経ます。

1.清算人の登記
清算手続きを行う者として、清算人が就任した上で、その旨を登記します(会社法第477条、第478条、第928条第1項)。

2.財産目録・貸借対照表等の作成
清算人は就任後遅滞なく会社の財産状況を調査し、財産目録と貸借対照表を作成します。作成された財産目録と貸借対照表は、株主総会の承認を受けなければなりません(会社法第492条)。

3.清算人による現務の結了
清算人が、残った在庫の売却、取引先との契約の解約など、現務の結了を行います(会社法第481条第1号)。

4.債権者保護手続き
2か月以上の期間を設けた債権申出の官報公告および債権者への個別催告を行う必要があります(会社法第499条)。

5. 残余財産の分配
残った財産(残余財産)は、清算人が株主に対して分配します。(会社法第481条第3号)。残余財産の割り当てに関する事項は、清算人の決定において行います(会社法第504条第1項)。

6.決算報告の作成・株主総会による承認
清算人は、清算事務の終了後決算報告を提出し、株主総会の承認を受ける必要があります(会社法第507条第1項、第3項)。

7. 清算結了登記
株主総会による決算報告の承認日から2週間以内に、清算結了登記を行います(会社法第929条)。
清算結了登記により会社の法人格が消滅します。会社が閉鎖したことの確認は、「閉鎖事項証明書」を法務局で取得することでできます。

清算結了登記の費用相場は10万円前後

清算結了登記の費用相場は10万円前後です。

内訳は、以下のとおりです。

官報掲載費用約4万円
登録免許税9,000円(清算人就任)+2,000円(清算結了)
司法書士費用4万~8万円(会社の形態によって費用が異なります。)

みなし解散が行われた際の3つの注意点

また、みなし解散が行われた際に3つの注意すべき点があります。

  • 放置すると過料の制裁を課される可能性がある
  • みなし解散後も会社は精算されず法人税がかかり続ける
  • みなし解散後10年経過すると登記記録が閉鎖される恐れがある

次に詳しく解説しましょう。

放置すると過料の制裁を課される可能性がある

みなし解散の対象となった休眠会社は、過料の制裁を課される可能性があります

株式会社の場合は、役員の変更(重任を含む)から2週間以内に、役員変更の登記をしなければなりません。みなし解散の対象となった時点で、登記を放置していることは明らかです。登記官は、過料の事件として裁判所に対して通知します。

大幅に手続きを放置していることが明らかなので、会社法違反事件として、裁判所から会社代表者個人宛に過料を納付するようにという決定通知が届きます。

会社法の規定に従った登記を怠った場合、「100万円以下の過料」に処される可能性があります(会社法第976条)。実際の過料の額は、登記申請期限を超過した日数によりますが、2、3万から10万円を超える金額が多いようです。

みなし解散後も会社は精算されず法人税がかかり続ける

みなし解散が行われても会社は清算されずに、法人税などの税負担は続きます。解散登記を行えば、事業年度開始日から解散日までを事業年度として、法人税などの申告手続きが必要です。 その後も、残余財産が確定するまで、解散の日の翌日から1年ごとに法人税の申告をする必要があります。

清算結了まで法人税はかかるので、続ける予定がないのであれば清算結了登記を早めに行い会社を消滅させましょう

みなし解散後10年経過すると登記記録が閉鎖される恐れがある

みなし解散後10年が経過すると、登記官が強制的に登記簿を閉鎖できます(商業登記規則第81条)。実際に清算結了が済んでいなくても、職権で閉鎖します。

しかし、閉鎖された後でも、清算結了が済んでいない(不動産の処分が済んでいないなど)場合には、「清算を結了していない旨の申出」をすることで、閉鎖された登記を復活することも可能です。

そして再び清算人を選任し、その清算人が不動産等を処分して名義変更手続きが終わった後、再度会社の清算結了登記をし、会社を消滅させます。

参考:e-Gov法令検索/会社法
参考:e-Gov法令検索/商業登記規則

みなし解散とは?要件と対処法を詳しく解説

みなし解散とは?要件と対処法を詳しく解説

家族経営や少人数の会社では、役員の任期満了による変更登記手続きをしないまま放置しているケースも少なくありません。

しかし、登記手続きをしないで長年放置していると、実態のない会社とみなされ、強制的に解散させられてしまう「みなし解散」の対象になる可能性があります

管轄法務局からのみなし解散の予告通知が来てはじめて、どのように対処したらいいか迷う方もいるでしょう。事業を継続したい場合と、そのまま会社を解散し清算手続きまでしたい場合とでは対処法が異なります。

本記事では、みなし解散の具体的な要件とその対処法について詳しく解説します。みなし解散についての対処法を知りたい方はぜひ参考にしてください。

みなし解散とは長期間登記を怠たった会社を強制解散させること

みなし解散とは、 長期間登記を怠った会社について経営実態がないとみなされ、公告手続きを経て強制的に解散されてしまう手続きです。 

会社が長期間登記を行わないのは、単に登記を怠っている以外にも、実際に事業を廃止し実態のない会社となっている場合も多いのです。

事業実体のない会社を休眠会社といい、これを放置できない理由としては以下の点が挙げられます。

  • 事業を廃止し実体を失った会社が、いつまでも登記上公示されたままとなるため、登記の信頼を失いかねないこと
  • 休眠会社を売買するなど、犯罪の手段とされかねないこと

そのため、みなし解散の処理を進める休眠会社の整理作業が昭和49年から始まり、平成26年以降は毎年実施されています。この整理作業により休眠会社約71万社が手続きを経て解散されています。(昭和49年~令和5年)

参考:法務省/休眠会社、休眠一般法人の整理作業について

みなし解散の対象となる会社

みなし解散の対象となる会社は、最後の登記から12年以上経過している会社です。

株式会社の役員の任期は最長10年です。同じ人が引き続き取締役などになる場合も重任(再任のこと)の登記は必要です。

最長10年に余裕を2年見て、12年以上変更登記を行わない会社は、実体のない可能性が高いと捉えられてみなし解散の対象とされます。

このみなし解散は、あくまで長年登記上の変更がないことで判断され、普通に営業している会社でも該当する可能性があるため注意が必要です。

また、最後の登記以降に、会社の登記事項証明書や代表者届出印の印鑑証明書の交付請求を行っていても、みなし解散の対象からは外れません。

※特例有限会社や持分会社(合同会社、合名会社など)については、役員任期の定めがないため、役員の変更がない限り登記の必要がなく、みなし解散の対象にはなりません。

(取締役の任期)
第332条 取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない
(監査役の任期)
第336条 監査役の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社において、定款によって、同項の任期を選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない

参考:e-Gov法令検索/会社法

みなし解散がいつ行われるかは公表されていない

対象となった会社のみなし解散の実行がいつ行われるかは、特に公表されていません。知らない間にみなし解散の対象となっていることもあり得るので注意が必要です。

自身の会社がみなし解散の対象となっているかどうかは、最後に登記を行った日付けから12年以上経っていないかを確認して判断しましょう

平成26年度からは毎年、休眠会社にみなし解散の通知書が送付されています。

例えば、令和5年度においては、令和5年10月12日(木)の時点で対象となった休眠会社に対し、「みなし解散による官報公告を出した旨、また、令和5年12月12日(火)までに下記のいずれかの手続きがなされない限り、令和5年12月13日付けで解散したものとみなし、登記官により職権で解散の登記をする。」という内容の通知が発行されています。

  • 必要な登記(役員変更等の登記)の申請
  • 「まだ事業を廃止していない」旨の届出

事業を継続する場合は、指定された期限までにいずれかの手続きを行わなければ、みなし解散が決定してしまいます。

参考:法務省/休眠会社、休眠一般法人の整理作業について

みなし解散の流れ

みなし解散の流れ

みなし解散の流れは、以下のとおり3つのステップを踏みます。

  1. 法務大臣による公告がなされる
  2. 管轄登記所による通知
  3. みなし解散決定

詳しく見ていきましょう。

法務大臣による公告がなされる

法務大臣から、最後の登記から12年が経過している株式会社(休眠会社)に対して、2か月以内にその本店の所在地を管轄する登記所に必要な登記の申請もしくは事業を廃止していない旨の届出をすべき旨の官報公告がなされます。(会社法第472条第1項)

管轄登記所による通知

合わせて、管轄登記所から休眠会社に対して、官報公告がなされた旨の通知書が届きます(会社法第472条第2項)。

まだ事業を廃止していない休眠会社は、何らかの理由で管轄登記所からの通知書が届かない場合であっても、2か月の期日までに、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をする必要があります。その届出をしない限り、期日の翌日付けで解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記を行います。

管轄登記所からの通知書が届かない場合、商号を変更又は本店を移転しているにもかかわらず、その変更の登記がされていないことが原因になってることがあります。このような休眠会社については、期日までに商号変更又は本店移転の登記をしましょう。

会社の実情に沿った登記申請をすることにより、休眠会社整理作業の対象外となり、みなし解散の登記がされません。

みなし解散決定

官報公告から2か月以内に必要な登記申請をするか、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出をすると、みなし解散登記を回避できます。しかし、官報公告からどちらの手続きもしないまま2か月が経過すると、休眠会社は解散したものとみなされます

解散したものとみなされると、登記官が職権で解散の登記を行い、会社の登記簿に「令和〇年〇月〇日会社法第472条第1項の規定により解散」という記録がされます。

参考:e-Gov法令検索/会社法
参考:法務省/令和令和5年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

みなし解散となったが事業を継続したい場合

事業を実際に行っていて変更登記を怠っていただけの会社が、「みなし解散」の通知書を受けた場合は、事業継続のための手続きを行わなければなりません。

みなし解散の官報公告がなされてから経過した期間により、必要な手続きが異なります。

公告日から2か月以内の継続手続き

官報公告がなされてから2か月以内であれば、法務局で役員変更など最新の状態の登記、または「まだ事業を廃止していない」旨の届出のいずれかをすることにより、みなし解散を回避できます(会社法第472条第1項)。

期日の余裕がない場合は、まず「まだ事業を廃止していない」旨の届出を出し、みなし解散の手続きを停止させてから変更登記を行いましょう。

従来の登記からの変更登記(役員重任登記を含む)手続きを行うことが必要です。

なお、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしただけでは、みなし解散の手続きが停止するだけで、翌年以降に再び整理作業の対象になります。いずれにせよ、早めの登記申請を行うべきでしょう。

公告日から2か月経過後3年以内の継続手続き

官報公告日から何もしないまま2か月が経過すると、会社は解散したものとみなされ、登記官の職権で解散の登記がされてしまいます。
解散の登記がされると、取締役も自動的に退任になるため、登記官の職権で抹消されます。(監査役は自動的には抹消されません。)

みなし解散の登記をされた会社は、会社の清算をするためだけの「清算会社」となります。本来の会社事業を行うことはできません。

ただし、みなし解散から3年以内であれば、会社の継続手続きをし、会社を元の状態に復活させることが可能です(会社法第473条)。

※現在事業を行っていなくても、近いうちに再開するのであれば、会社継続登記を行っておくことをおすすめします。新たに会社の設立登記をしなくていいからです。

会社の継続手続きをする場合、次の手続きが必要になります。

1.清算人の登記
みなし解散によっていったん「清算会社」となるため、清算人を選任してその旨を登記する必要があります(会社法第477条)。

※清算人とは・・会社が解散してから法人格が消滅するまでの清算業務を担当する役員のこと。清算人になるのは原則として取締役ですが、定款や株主総会の決議で別段の定めがあればその定めに従います。清算人になるものがいない場合は、利害関係人の申立てにより裁判所が選任します(会社法第478条)。

2.会社継続の登記
会社を継続することについて、株主総会の特別決議を経て、その2週間以内に継続の登記をする必要があります(会社法第473条)。

※特別決議とは・・株主総会において議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権における3分の2以上の賛成を必要とする決議(会社法309条2項)

3.取締役の選任の登記
みなし解散によって取締役及び代表取締役は全員退任することになるので、改めて取締役及び代表取締役を選任して登記しなければなりません。

みなし解散から3年経過すると継続できない

みなし解散の登記がされてから、さらに3年が経過すると、株主総会決議による会社継続はできなくなり清算手続きしかできません

会社を継続したい場合には、必ず解散から3年以内に継続の手続をしましょう。

みなし解散となりそのまま会社を清算したい場合

みなし解散となり、事業実態がないのでそのまま会社を清算したい場合でも、会社の清算が自動的に終わるわけではありません。清算結了の手続きが必要です。

清算結了登記を行い会社を完全に消滅させる

株式会社がみなし解散となった後、事業を行っておらず再開する予定がない場合は、清算結了登記を行い会社を完全に消滅させましょう。

清算結了は、次の手順を経ます。

1.清算人の登記
清算手続きを行う者として、清算人が就任した上で、その旨を登記します(会社法第477条、第478条、第928条第1項)。

2.財産目録・貸借対照表等の作成
清算人は就任後遅滞なく会社の財産状況を調査し、財産目録と貸借対照表を作成します。作成された財産目録と貸借対照表は、株主総会の承認を受けなければなりません(会社法第492条)。

3.清算人による現務の結了
清算人が、残った在庫の売却、取引先との契約の解約など、現務の結了を行います(会社法第481条第1号)。

4.債権者保護手続き
2か月以上の期間を設けた債権申出の官報公告および債権者への個別催告を行う必要があります(会社法第499条)。

5. 残余財産の分配
残った財産(残余財産)は、清算人が株主に対して分配します。(会社法第481条第3号)。残余財産の割り当てに関する事項は、清算人の決定において行います(会社法第504条第1項)。

6.決算報告の作成・株主総会による承認
清算人は、清算事務の終了後決算報告を提出し、株主総会の承認を受ける必要があります(会社法第507条第1項、第3項)。

7. 清算結了登記
株主総会による決算報告の承認日から2週間以内に、清算結了登記を行います(会社法第929条)。
清算結了登記により会社の法人格が消滅します。会社が閉鎖したことの確認は、「閉鎖事項証明書」を法務局で取得することでできます。

清算結了登記の費用相場は10万円前後

清算結了登記の費用相場は10万円前後です。

内訳は、以下のとおりです。

官報掲載費用約4万円
登録免許税9,000円(清算人就任)+2,000円(清算結了)
司法書士費用4万~8万円(会社の形態によって費用が異なります。)

みなし解散が行われた際の3つの注意点

また、みなし解散が行われた際に3つの注意すべき点があります。

  • 放置すると過料の制裁を課される可能性がある
  • みなし解散後も会社は精算されず法人税がかかり続ける
  • みなし解散後10年経過すると登記記録が閉鎖される恐れがある

次に詳しく解説しましょう。

放置すると過料の制裁を課される可能性がある

みなし解散の対象となった休眠会社は、過料の制裁を課される可能性があります

株式会社の場合は、役員の変更(重任を含む)から2週間以内に、役員変更の登記をしなければなりません。みなし解散の対象となった時点で、登記を放置していることは明らかです。登記官は、過料の事件として裁判所に対して通知します。

大幅に手続きを放置していることが明らかなので、会社法違反事件として、裁判所から会社代表者個人宛に過料を納付するようにという決定通知が届きます。

会社法の規定に従った登記を怠った場合、「100万円以下の過料」に処される可能性があります(会社法第976条)。実際の過料の額は、登記申請期限を超過した日数によりますが、2、3万から10万円を超える金額が多いようです。

みなし解散後も会社は精算されず法人税がかかり続ける

みなし解散が行われても会社は清算されずに、法人税などの税負担は続きます。解散登記を行えば、事業年度開始日から解散日までを事業年度として、法人税などの申告手続きが必要です。 その後も、残余財産が確定するまで、解散の日の翌日から1年ごとに法人税の申告をする必要があります。

清算結了まで法人税はかかるので、続ける予定がないのであれば清算結了登記を早めに行い会社を消滅させましょう

みなし解散後10年経過すると登記記録が閉鎖される恐れがある

みなし解散後10年が経過すると、登記官が強制的に登記簿を閉鎖できます(商業登記規則第81条)。実際に清算結了が済んでいなくても、職権で閉鎖します。

しかし、閉鎖された後でも、清算結了が済んでいない(不動産の処分が済んでいないなど)場合には、「清算を結了していない旨の申出」をすることで、閉鎖された登記を復活することも可能です。

そして再び清算人を選任し、その清算人が不動産等を処分して名義変更手続きが終わった後、再度会社の清算結了登記をし、会社を消滅させます。

参考:e-Gov法令検索/会社法
参考:e-Gov法令検索/商業登記規則