清算人とは?選任方法や職務内容をわかりやすく解説

会社を解散し、綺麗に終了させるには清算人が必要です。清算人は取締役に代わって会社の中心となり、会社を消滅させるための手続きを進めていきます。
とはいえ、清算人の具体的な選任方法や職務内容など、会社の経営に携わる方でも詳しくご存じない方は多いでしょう。
清算人については、会社経営において知っておくべき重要な知識の一つです。精算手続きを誤れば、信用失墜や法的責任に繋がりかねません。
本記事では、清算人について詳しく解説していきます。最後まで読めば「清算人は誰を選ぶべき?」「清算人にはどのような責任がある?」のような疑問が解消されるでしょう。
清算人とは清算会社で清算業務を執行する者
清算人は、「会社の清算業務を執行する役割を担った人」です。清算とは、会社が解散した後に、会社の所有している資産・負債を法律に則って処分する手続きをいいます。
会社が解散すると、今まで会社の運営を行っていた代表取締役などの役員は退任し、清算業務のために専任されるのが、清算人です。また、会社には取締役会のかわりに、清算会が設置されます。
清算人に関して、国税庁および国税徴収法で、以下のように定められています。
5 法第34条第1項の「清算人」とは、解散法人(合併により解散した法人及び破産手続が終了していない法人を除く。)の清算事務を執行する者で分配等をした者をいい、納付通知書を発する時において清算人でない者も含まれる。
引用元:国税庁ホームページ
なお、清算人に就任することを承諾した上、清算事務を第三者に一任している者は、直接に清算事務に関与しなくても法第34条第1項の「清算人」に該当する(昭和52.2.14最高判参照)。
国税徴収法第34条
引用元:e-Gov検索
法人が解散した場合において、その法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税を納付しないで残余財産の分配又は引渡しをしたときは、その法人に対し滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に限り、清算人及び残余財産の分配又は引渡しを受けた者(前条の規定の適用を受ける者を除く。以下この項において同じ。)は、その滞納に係る国税につき第二次納税義務を負う。ただし、清算人は分配又は引渡しをした財産の価額の限度において、残余財産の分配又は引渡しを受けた者はその受けた財産の価額の限度において、それぞれその責めに任ずる。
清算人は、清算人として就任を承諾したうえで業務を第三者に任せている場合、業務を直接行った者ではなく委託した人が「清算人」に該当します。
また、財産のみを分配し会社の払うべき国税を滞納すると、清算人と財産の分配を受けた人が滞納した税金の納税義務を負わなければいけません。
清算人の資格がある者
結論からいいますと、清算人には特別な資格がなくてもなれます。ただし、会社の監査役は清算人にはなれません。また、法人にも清算人の資格がないです。
そのほか会社法第331条1項に定められている「取締役の欠格事由」に該当する人は、清算人になれません。
【清算人になれない人】
- 法人
- 会社法、一般法人法、金融商品取引法、民事再生法などの会社に関する法律に違反し、刑に処せられるまたは執行される、もしくは執行猶予期間が終わってから2年経過していない人
- 上記以外の法律に違反し、禁固以上の罪に処せられ執行されていない人もしくは執行を受けることがなくなるまでの人
たとえば、窃盗罪で罰金刑に処された場合、「会社に関する法律以外の法令に違反し禁固刑以下の罪」なので、清算人になる資格があります。
とはいえ、「なる資格があること」と「選任されること」はまったくの別問題です。清算人の選任方法については、後ほど詳しく解説します。
清算人は報酬をもらえる
会社の解散後、清算人は清算業務を行います。清算期間の間、清算人は役員として報酬を受け取れます。
清算人の報酬は清算株式会社と清算持分会社で異なります。
- 清算株式会社・・・定款もしくは株主総会で清算人の報酬が決まる
- 清算持分会社・・・会社と清算人の結んだ委託契約に沿って報酬が支払われる
さらに、清算株式会社の報酬は、会社法第361条1項で具体的に定められています。
会社法第361条1項
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
イ 当該株式会社の募集株式 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ 当該株式会社の募集新株予約権 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
引用元:e-Gov検索
簡単に説明すると、以下のことを株主総会で決定します。
- 報酬の金額が確定している場合は、その金額
- 報酬の金額が確定していない場合は、金額の具体的な算定法
- 報酬が金銭でない場合は、上限や法務省令で定める事項など、具体的な内容
ただし、裁判所が清算人を決定した場合、清算人の報酬額を決めるのは裁判所です。
清算人には誰がなる? 5つの選任方法
清算人の選任については、会社法第478条1項で以下のように定められています。
次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。
一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 株主総会の決議によって選任された者
引用元:e-Gov検索
また、選任の優先順位は以下のとおりです。
ア 定款で定める者
イ 株主総会の決議によって選任された者
ウ 上記ア、イで清算人になる者がいない場合は取締役
引用元:裁判所ホームページ
株主総会で選任されれば、誰でも清算人に就任可能です。もし、定款や株主総会、取締役のいずれかで清算人のなり手がない場合は、裁判所が選任します。
詳しく説明していきます。
代表取締役がなる
代表取締役が清算人になるケースは、3つ考えられます。
- 定款で「代表取締役が清算人になる」と定められている
- 株主総会の決議で選任された
- 定款および株主総会で清算人になる者がいなかった
特別な事情がない場合、会社解散前の代表取締役や取締役が、そのまま清算人に就任することは珍しくありません。
株主総会の決議により選任
清算人は株主総会で選任できます。
清算人を選任する株主総会は、解散決議をする株主総会と同時に行われることがほとんどです。また、解散には特別決議をする必要がありますが、清算は普通決議で問題ありません。
決議方法 | 決議の概要 | |
---|---|---|
解散 | 特別決議 | 議決権を行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上が賛成しなければならない(会社法第309条2項) |
清算 | 普通決議 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席 し、かつ 出席した株主の議決権の過半数 をもって行う(会社法第309条1項) |
株主総会での選任で、取締役や代表取締役が清算人に選ばれることもよくあります。
定款の定めによる清算人
会社の定款で清算人が定められている場合、定められている人が清算人に就任します。
厚生労働省から社団医療法人の定款例が公表されているので見てみましょう。
本社団が解散したときは、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となる。ただし、社員総会の議決によって理事以外の者を選任することができる。
引用元:厚生労働省「社団医療法人の定款例」
しかし、実際のところ定款であらかじめ「清算人の定め」を設置している会社はほとんどありません。
また、定款で定められていたとしても、定められている清算人が拒否をした場合はほかの方法で選任する必要があります。
法定清算人
定款で定めや株主総会の選任で清算人が決まらない場合、解散前の会社の代表取締役や取締役が清算人に就任します。これが「法定清算人」です。
つまり、代表取締役や取締役が清算人になるときは、選任のされ方によって法定清算人かどうかが異なります。
定款に清算人は代表取締役(取締役)と定められている | 法定清算人ではない |
---|---|
株主総会で代表取締役(取締役)が清算人に選ばれる | 法定清算人ではない |
定款や株主総会で清算人が選任されないため取締役が清算人に就任する | 法定清算人 |
たとえば、定款に「取締役が清算人になる」と定められているのにも関わらず、取締役が拒否したとします。その後、株主総会で清算人が選出されない場合、結局は取締役が清算人になります。
また、清算人は人数制限がないので、法定清算人に選ばれるのは取締役全員です。その際、代表取締役が代表清算人になります。
裁判所の選任による清算人
裁判所が清算人を選任する要件は以下の2つです。
- 会社法478条1項の選任方法で清算人となる者がいない
- 利害関係人(株主や債権者、監査役など)による申立てである
「代表取締役」「定款」「株主総会」「法定清算人」の4つの選任方法で清算人が選任できない場合、裁判所が清算人を選びます。
裁判所による選任の期間は、問題なければ申立てから10日から2週間が目安です。
また、裁判所へ申立てをして清算人を選任する場合、公平性を保つために利害関係人からの推薦人の受けつけはしていません。原則として、裁判所が適任であると判断した弁護士が清算人に就任します。
清算人の主な職務内容は4つ

清算人の職務は、会社の財産の現況を調査するところから始まります。
会社法第492条1項
清算人(清算人会設置会社にあっては、第四百八十九条第七項各号に掲げる清算人)は、その就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日における財産目録及び貸借対照表(以下この条及び次条において「財産目録等」という。)を作成しなければならない。
引用元:e-Gov検索
そのほか、清算人の職務は会社法第481条で定められています。
会社法第481条
清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
引用元:e-Gov検索
清算人の職務は「会社財産の現況調査」「現務の結了」「債権の取り立ておよび債務の弁済」「残余財産の分配」の4つです。
以下に詳しく説明します。
会社財産の現況調査
清算人は、就任後遅滞なく会社の財産の現況を調査し、会社が解散した日における財産目録と貸借対照表を作成しなければいけません。
財産目録や貸借対照表の作成は、会社の財産を明らかにし、債務の弁済の可能性や残余財産の分配についての情報を提供するために行う業務です。
また、清算人は財産の現況調査とともに債権者を把握します。
会社法第499条
清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
引用元:e-Gov検索
清算人は会社の債権者に対して「一定期間内に債権を申し出るように」官報に公告および個別に催告しなければいけません。期間内に申し出のない債権者は、清算から除外します。
また、作成した財産目録と貸借対照表は株主総会で承認を得た後、清算結了登記から10年間保管が必要です。
現務の結了
現務の結了とは、「会社の解散時にまだ終わっていない残務を整理し、終わらせること」です。
現務の結了には以下のようなものがあります。
- 取引先と交わしている継続的契約の終了
- 従業員の労働契約の解消
- 現務の結了に必要な新たな法律行為
たとえば、従業員の労働契約にともなって、従業員の離職の手続きをしなくてはいけません。従業員が全員退職した後には、年金事務所や労働基準監督署などに事業廃止の届出を提出する義務があります。
また、第三者の債務の保証をするといった、新たな法律行為は原則認められません。ただし、すでに締結済みの売買契約の履行のために、仕掛品を完成させるのに必要な物品の購入をしたり、在庫商品の売却をしたりするのは認められています。
債権の取り立ておよび債務の弁済
清算人は、債務の弁済や残余財産の分配をするために、会社の財産を換価処分します。債権の取り立ては、換価処分の方法の一つです。そのほか事業譲渡や不動産売却などを行います。
換価処分 | 具体的な手続き |
---|---|
債権の取り立て | ・債務者などから債権を取り立てる ・不動産などで抵当権が付いている場合は、抵当に入っている不動産を売却して代金を回収する ・履行していない債権は、債権譲渡するケースもある |
事業譲渡 | 株主総会の特別決議で承認を得て、会社の事業を譲渡する(会社法第467条) |
不動産の売却 | 通常の不動産の任意売却と同じ手続き |
また、清算人は債務の弁済のために、会社の債権者に対して「一定期間内に債権を申し出るように」官報に公告および個別に催告しますが、弁済には制限があります。
会社法第500条
引用元:e-Gov検索
清算株式会社は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。この場合において、清算株式会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
2 前項の規定にかかわらず、清算株式会社は、前条第一項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算株式会社の財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算人が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
官報の公告や催告を行っている期間に、一部の債権者だけに弁済する行為は認められません。ただし、裁判所の許可を得れば、光熱費や通信費など少額の債権の弁済は可能です。
残余財産の分配
債権の取り立てと債務の弁済を終了し、まだ財産が残っている場合、清算人は株主に対して残余財産の分配を行います。
残余財産の分配において、清算人は「残余財産の種類」と「株主に対する残余財産の割当てに関する事項」を定めなければいけません。
会社法第504条第1項
引用元:e-Gov検索
清算株式会社は、残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定(清算人会設置会社にあっては、清算人会の決議)によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 残余財産の種類
二 株主に対する残余財産の割当てに関する事項
清算人は、株主平等の原則にもとづき、株主が所有している株式の数に応じて分配を行います。
会社法第109条1項
引用元:e-Gov検索
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
残余財産の分配は金銭で行われることが原則ですが、金銭以外の現物の分配も可能です。
清算人になると義務と責任が伴う
清算人は取り締まりと同様、会社に対して義務と責任を負っています。
- 忠実義務
- 報告義務
- 競業避止義務
- 利益相反取引の制限
清算人が義務を怠った場合、損害賠償金を支払わなければいけません。
会社法第423条1項
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:e-Gov検索
忠実義務
清算人の忠実義務は、会社法第355条に定められています。
会社法第355条
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
引用元:e-Gov検索
忠実義務とは、「清算人自身や第三者の利益ではなく、会社の利益を最優先させる義務」を指します。清算人は法令や定款、株主総会の決議を順守して、会社のために職務を遂行しなくてはいけません。
たとえば、会社の不動産を実際の価値とは不相応に安い金額で売却した場合、会社に不利益をもたらしたことになるので、忠実義務違反といえます。
報告義務
清算人の報告義務は、清算の透明性や公平性を保つために不可欠です。報告義務にもとづいて、清算人は清算の進捗状況や財務状況などを、定期的に株主へ報告する義務があります。
また、会社に著しい損害をおよぼす恐れのある事実がわかったときも、すぐに株主に報告しなければいけません。
会社法第357条
取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならない。
引用元:e-Gov検索
また、清算人は清算の事務すべて終了したとき、遅れることなく決算報告をし、株主総会で承認を得る義務があります。
会社法第507条
清算株式会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない。
引用元:e-Gov検索
競業避止義務
清算人の競業避止義務とは、「清算人が会社との利害関係が競合するような取引を避ける義務」です。
会社法第356条
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
引用元:e-Gov検索
清算人は清算人本人や第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、株主総会で承認を得なくてはいけません。
「会社の事業の部類に属する取引」とは、会社が行っている取引と以下の内容が競合する取引です。
- 目的物(商品やサービスの種類)
- 市場(商圏や流通段階)
競業避止義務の目的は、会社の利益よりも清算人の利益が優先されるのを防ぐことなので、忠実義務にも繋がります。
利益相反取引の制限
清算人の利益相反取引とは、「会社の利益を犠牲にして、清算人や第三者が利益を得るようにする取引」です。利益相反取引の制限は、会社法第356条第1項2号・3号に明示されています。
第356条第1項2号・3号
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
引用元:e-Gov検索
利益相反取引に該当する行為をしようとするとき、清算人は、株主総会で承認を得なくてはいけません。また、利益相反取引は、清算人と会社間の売買契約にも該当します。
たとえば、清算人が市場価格よりも安い価格で会社の土地を購入したり、清算人に有利な条件で購入したりした場合は、利益相反義務違反です。
清算人に関するよくある質問
最後に、清算人についてよくある質問にお答えしていきます。
清算人が亡くなってしまった場合はどうなりますか?
清算人が死亡しても、清算手続きは止められません。
清算人が複数人いる場合、死亡した清算人のほかの清算人が事務を引き継ぎます。ただし、定款で清算人の人数が定められている場合や清算人の人数が減少して清算事務に支障をきたす場合は、新たに清算人を選任しなくてはいけません。
また、清算人が1人だった場合は清算人がいなくなってしまうので、新たな清算人の選任が必要です。
選任方法は「株主総会での選任」「裁判所への申立て」の2つがあります。清算人が死亡して新たに清算人を選任する場合は、裁判所への申立てるケースが多いです。
株主総会で新たな清算人を選任する場合でも、裁判所に「新しい清算人を選任する申請」を行ってから、株主総会を開きます。
清算人と代表清算人の違いを教えてください
代表清算人と清算人は、会社の代表取締役と取締役のような立場です。代表清算人は清算会社の代表の役割を担います。清算人が1人の場合はその清算人が代表清算人です。
会社に清算会が設置されている場合、清算人から代表清算人が選任されます。反対に、会社に清算会が設置されておらず複数人の清算人がいるときは、清算人それぞれが代表清算人です。
また以下の方法で、代表清算人が選任されるケースもあります。
- 定款で定められている場合、定款に定められた清算人が代表清算人になる
- 株主総会の決議で代表清算人が選任される
- 法定清算人の場合は代表取締役が代表清算人になる
- 裁判所が清算人を定める場合、裁判所が代表清算人を選任する
清算人とは?選任方法や職務内容をわかりやすく解説

会社を解散し、綺麗に終了させるには清算人が必要です。清算人は取締役に代わって会社の中心となり、会社を消滅させるための手続きを進めていきます。
とはいえ、清算人の具体的な選任方法や職務内容など、会社の経営に携わる方でも詳しくご存じない方は多いでしょう。
清算人については、会社経営において知っておくべき重要な知識の一つです。精算手続きを誤れば、信用失墜や法的責任に繋がりかねません。
本記事では、清算人について詳しく解説していきます。最後まで読めば「清算人は誰を選ぶべき?」「清算人にはどのような責任がある?」のような疑問が解消されるでしょう。
清算人とは清算会社で清算業務を執行する者
清算人は、「会社の清算業務を執行する役割を担った人」です。清算とは、会社が解散した後に、会社の所有している資産・負債を法律に則って処分する手続きをいいます。
会社が解散すると、今まで会社の運営を行っていた代表取締役などの役員は退任し、清算業務のために専任されるのが、清算人です。また、会社には取締役会のかわりに、清算会が設置されます。
清算人に関して、国税庁および国税徴収法で、以下のように定められています。
5 法第34条第1項の「清算人」とは、解散法人(合併により解散した法人及び破産手続が終了していない法人を除く。)の清算事務を執行する者で分配等をした者をいい、納付通知書を発する時において清算人でない者も含まれる。
引用元:国税庁ホームページ
なお、清算人に就任することを承諾した上、清算事務を第三者に一任している者は、直接に清算事務に関与しなくても法第34条第1項の「清算人」に該当する(昭和52.2.14最高判参照)。
国税徴収法第34条
引用元:e-Gov検索
法人が解散した場合において、その法人に課されるべき、又はその法人が納付すべき国税を納付しないで残余財産の分配又は引渡しをしたときは、その法人に対し滞納処分を執行してもなおその徴収すべき額に不足すると認められる場合に限り、清算人及び残余財産の分配又は引渡しを受けた者(前条の規定の適用を受ける者を除く。以下この項において同じ。)は、その滞納に係る国税につき第二次納税義務を負う。ただし、清算人は分配又は引渡しをした財産の価額の限度において、残余財産の分配又は引渡しを受けた者はその受けた財産の価額の限度において、それぞれその責めに任ずる。
清算人は、清算人として就任を承諾したうえで業務を第三者に任せている場合、業務を直接行った者ではなく委託した人が「清算人」に該当します。
また、財産のみを分配し会社の払うべき国税を滞納すると、清算人と財産の分配を受けた人が滞納した税金の納税義務を負わなければいけません。
清算人の資格がある者
結論からいいますと、清算人には特別な資格がなくてもなれます。ただし、会社の監査役は清算人にはなれません。また、法人にも清算人の資格がないです。
そのほか会社法第331条1項に定められている「取締役の欠格事由」に該当する人は、清算人になれません。
【清算人になれない人】
- 法人
- 会社法、一般法人法、金融商品取引法、民事再生法などの会社に関する法律に違反し、刑に処せられるまたは執行される、もしくは執行猶予期間が終わってから2年経過していない人
- 上記以外の法律に違反し、禁固以上の罪に処せられ執行されていない人もしくは執行を受けることがなくなるまでの人
たとえば、窃盗罪で罰金刑に処された場合、「会社に関する法律以外の法令に違反し禁固刑以下の罪」なので、清算人になる資格があります。
とはいえ、「なる資格があること」と「選任されること」はまったくの別問題です。清算人の選任方法については、後ほど詳しく解説します。
清算人は報酬をもらえる
会社の解散後、清算人は清算業務を行います。清算期間の間、清算人は役員として報酬を受け取れます。
清算人の報酬は清算株式会社と清算持分会社で異なります。
- 清算株式会社・・・定款もしくは株主総会で清算人の報酬が決まる
- 清算持分会社・・・会社と清算人の結んだ委託契約に沿って報酬が支払われる
さらに、清算株式会社の報酬は、会社法第361条1項で具体的に定められています。
会社法第361条1項
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
イ 当該株式会社の募集株式 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ 当該株式会社の募集新株予約権 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容
引用元:e-Gov検索
簡単に説明すると、以下のことを株主総会で決定します。
- 報酬の金額が確定している場合は、その金額
- 報酬の金額が確定していない場合は、金額の具体的な算定法
- 報酬が金銭でない場合は、上限や法務省令で定める事項など、具体的な内容
ただし、裁判所が清算人を決定した場合、清算人の報酬額を決めるのは裁判所です。
清算人には誰がなる? 5つの選任方法
清算人の選任については、会社法第478条1項で以下のように定められています。
次に掲げる者は、清算株式会社の清算人となる。
一 取締役(次号又は第三号に掲げる者がある場合を除く。)
二 定款で定める者
三 株主総会の決議によって選任された者
引用元:e-Gov検索
また、選任の優先順位は以下のとおりです。
ア 定款で定める者
イ 株主総会の決議によって選任された者
ウ 上記ア、イで清算人になる者がいない場合は取締役
引用元:裁判所ホームページ
株主総会で選任されれば、誰でも清算人に就任可能です。もし、定款や株主総会、取締役のいずれかで清算人のなり手がない場合は、裁判所が選任します。
詳しく説明していきます。
代表取締役がなる
代表取締役が清算人になるケースは、3つ考えられます。
- 定款で「代表取締役が清算人になる」と定められている
- 株主総会の決議で選任された
- 定款および株主総会で清算人になる者がいなかった
特別な事情がない場合、会社解散前の代表取締役や取締役が、そのまま清算人に就任することは珍しくありません。
株主総会の決議により選任
清算人は株主総会で選任できます。
清算人を選任する株主総会は、解散決議をする株主総会と同時に行われることがほとんどです。また、解散には特別決議をする必要がありますが、清算は普通決議で問題ありません。
決議方法 | 決議の概要 | |
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解散 | 特別決議 | 議決権を行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の三分の二以上が賛成しなければならない(会社法第309条2項) |
清算 | 普通決議 | 議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席 し、かつ 出席した株主の議決権の過半数 をもって行う(会社法第309条1項) |
株主総会での選任で、取締役や代表取締役が清算人に選ばれることもよくあります。
定款の定めによる清算人
会社の定款で清算人が定められている場合、定められている人が清算人に就任します。
厚生労働省から社団医療法人の定款例が公表されているので見てみましょう。
本社団が解散したときは、合併及び破産手続開始の決定による解散の場合を除き、理事がその清算人となる。ただし、社員総会の議決によって理事以外の者を選任することができる。
引用元:厚生労働省「社団医療法人の定款例」
しかし、実際のところ定款であらかじめ「清算人の定め」を設置している会社はほとんどありません。
また、定款で定められていたとしても、定められている清算人が拒否をした場合はほかの方法で選任する必要があります。
法定清算人
定款で定めや株主総会の選任で清算人が決まらない場合、解散前の会社の代表取締役や取締役が清算人に就任します。これが「法定清算人」です。
つまり、代表取締役や取締役が清算人になるときは、選任のされ方によって法定清算人かどうかが異なります。
定款に清算人は代表取締役(取締役)と定められている | 法定清算人ではない |
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株主総会で代表取締役(取締役)が清算人に選ばれる | 法定清算人ではない |
定款や株主総会で清算人が選任されないため取締役が清算人に就任する | 法定清算人 |
たとえば、定款に「取締役が清算人になる」と定められているのにも関わらず、取締役が拒否したとします。その後、株主総会で清算人が選出されない場合、結局は取締役が清算人になります。
また、清算人は人数制限がないので、法定清算人に選ばれるのは取締役全員です。その際、代表取締役が代表清算人になります。
裁判所の選任による清算人
裁判所が清算人を選任する要件は以下の2つです。
- 会社法478条1項の選任方法で清算人となる者がいない
- 利害関係人(株主や債権者、監査役など)による申立てである
「代表取締役」「定款」「株主総会」「法定清算人」の4つの選任方法で清算人が選任できない場合、裁判所が清算人を選びます。
裁判所による選任の期間は、問題なければ申立てから10日から2週間が目安です。
また、裁判所へ申立てをして清算人を選任する場合、公平性を保つために利害関係人からの推薦人の受けつけはしていません。原則として、裁判所が適任であると判断した弁護士が清算人に就任します。
清算人の主な職務内容は4つ

清算人の職務は、会社の財産の現況を調査するところから始まります。
会社法第492条1項
清算人(清算人会設置会社にあっては、第四百八十九条第七項各号に掲げる清算人)は、その就任後遅滞なく、清算株式会社の財産の現況を調査し、法務省令で定めるところにより、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった日における財産目録及び貸借対照表(以下この条及び次条において「財産目録等」という。)を作成しなければならない。
引用元:e-Gov検索
そのほか、清算人の職務は会社法第481条で定められています。
会社法第481条
清算人は、次に掲げる職務を行う。
一 現務の結了
二 債権の取立て及び債務の弁済
三 残余財産の分配
引用元:e-Gov検索
清算人の職務は「会社財産の現況調査」「現務の結了」「債権の取り立ておよび債務の弁済」「残余財産の分配」の4つです。
以下に詳しく説明します。
会社財産の現況調査
清算人は、就任後遅滞なく会社の財産の現況を調査し、会社が解散した日における財産目録と貸借対照表を作成しなければいけません。
財産目録や貸借対照表の作成は、会社の財産を明らかにし、債務の弁済の可能性や残余財産の分配についての情報を提供するために行う業務です。
また、清算人は財産の現況調査とともに債権者を把握します。
会社法第499条
清算株式会社は、第四百七十五条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、二箇月を下ることができない。
2 前項の規定による公告には、当該債権者が当該期間内に申出をしないときは清算から除斥される旨を付記しなければならない。
引用元:e-Gov検索
清算人は会社の債権者に対して「一定期間内に債権を申し出るように」官報に公告および個別に催告しなければいけません。期間内に申し出のない債権者は、清算から除外します。
また、作成した財産目録と貸借対照表は株主総会で承認を得た後、清算結了登記から10年間保管が必要です。
現務の結了
現務の結了とは、「会社の解散時にまだ終わっていない残務を整理し、終わらせること」です。
現務の結了には以下のようなものがあります。
- 取引先と交わしている継続的契約の終了
- 従業員の労働契約の解消
- 現務の結了に必要な新たな法律行為
たとえば、従業員の労働契約にともなって、従業員の離職の手続きをしなくてはいけません。従業員が全員退職した後には、年金事務所や労働基準監督署などに事業廃止の届出を提出する義務があります。
また、第三者の債務の保証をするといった、新たな法律行為は原則認められません。ただし、すでに締結済みの売買契約の履行のために、仕掛品を完成させるのに必要な物品の購入をしたり、在庫商品の売却をしたりするのは認められています。
債権の取り立ておよび債務の弁済
清算人は、債務の弁済や残余財産の分配をするために、会社の財産を換価処分します。債権の取り立ては、換価処分の方法の一つです。そのほか事業譲渡や不動産売却などを行います。
換価処分 | 具体的な手続き |
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債権の取り立て | ・債務者などから債権を取り立てる ・不動産などで抵当権が付いている場合は、抵当に入っている不動産を売却して代金を回収する ・履行していない債権は、債権譲渡するケースもある |
事業譲渡 | 株主総会の特別決議で承認を得て、会社の事業を譲渡する(会社法第467条) |
不動産の売却 | 通常の不動産の任意売却と同じ手続き |
また、清算人は債務の弁済のために、会社の債権者に対して「一定期間内に債権を申し出るように」官報に公告および個別に催告しますが、弁済には制限があります。
会社法第500条
引用元:e-Gov検索
清算株式会社は、前条第一項の期間内は、債務の弁済をすることができない。この場合において、清算株式会社は、その債務の不履行によって生じた責任を免れることができない。
2 前項の規定にかかわらず、清算株式会社は、前条第一項の期間内であっても、裁判所の許可を得て、少額の債権、清算株式会社の財産につき存する担保権によって担保される債権その他これを弁済しても他の債権者を害するおそれがない債権に係る債務について、その弁済をすることができる。この場合において、当該許可の申立ては、清算人が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。
官報の公告や催告を行っている期間に、一部の債権者だけに弁済する行為は認められません。ただし、裁判所の許可を得れば、光熱費や通信費など少額の債権の弁済は可能です。
残余財産の分配
債権の取り立てと債務の弁済を終了し、まだ財産が残っている場合、清算人は株主に対して残余財産の分配を行います。
残余財産の分配において、清算人は「残余財産の種類」と「株主に対する残余財産の割当てに関する事項」を定めなければいけません。
会社法第504条第1項
引用元:e-Gov検索
清算株式会社は、残余財産の分配をしようとするときは、清算人の決定(清算人会設置会社にあっては、清算人会の決議)によって、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 残余財産の種類
二 株主に対する残余財産の割当てに関する事項
清算人は、株主平等の原則にもとづき、株主が所有している株式の数に応じて分配を行います。
会社法第109条1項
引用元:e-Gov検索
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
残余財産の分配は金銭で行われることが原則ですが、金銭以外の現物の分配も可能です。
清算人になると義務と責任が伴う
清算人は取り締まりと同様、会社に対して義務と責任を負っています。
- 忠実義務
- 報告義務
- 競業避止義務
- 利益相反取引の制限
清算人が義務を怠った場合、損害賠償金を支払わなければいけません。
会社法第423条1項
取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用元:e-Gov検索
忠実義務
清算人の忠実義務は、会社法第355条に定められています。
会社法第355条
取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。
引用元:e-Gov検索
忠実義務とは、「清算人自身や第三者の利益ではなく、会社の利益を最優先させる義務」を指します。清算人は法令や定款、株主総会の決議を順守して、会社のために職務を遂行しなくてはいけません。
たとえば、会社の不動産を実際の価値とは不相応に安い金額で売却した場合、会社に不利益をもたらしたことになるので、忠実義務違反といえます。
報告義務
清算人の報告義務は、清算の透明性や公平性を保つために不可欠です。報告義務にもとづいて、清算人は清算の進捗状況や財務状況などを、定期的に株主へ報告する義務があります。
また、会社に著しい損害をおよぼす恐れのある事実がわかったときも、すぐに株主に報告しなければいけません。
会社法第357条
取締役は、株式会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を株主(監査役設置会社にあっては、監査役)に報告しなければならない。
引用元:e-Gov検索
また、清算人は清算の事務すべて終了したとき、遅れることなく決算報告をし、株主総会で承認を得る義務があります。
会社法第507条
清算株式会社は、清算事務が終了したときは、遅滞なく、法務省令で定めるところにより、決算報告を作成しなければならない。
引用元:e-Gov検索
競業避止義務
清算人の競業避止義務とは、「清算人が会社との利害関係が競合するような取引を避ける義務」です。
会社法第356条
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。
引用元:e-Gov検索
清算人は清算人本人や第三者のために会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、株主総会で承認を得なくてはいけません。
「会社の事業の部類に属する取引」とは、会社が行っている取引と以下の内容が競合する取引です。
- 目的物(商品やサービスの種類)
- 市場(商圏や流通段階)
競業避止義務の目的は、会社の利益よりも清算人の利益が優先されるのを防ぐことなので、忠実義務にも繋がります。
利益相反取引の制限
清算人の利益相反取引とは、「会社の利益を犠牲にして、清算人や第三者が利益を得るようにする取引」です。利益相反取引の制限は、会社法第356条第1項2号・3号に明示されています。
第356条第1項2号・3号
取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。
二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。
三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。
引用元:e-Gov検索
利益相反取引に該当する行為をしようとするとき、清算人は、株主総会で承認を得なくてはいけません。また、利益相反取引は、清算人と会社間の売買契約にも該当します。
たとえば、清算人が市場価格よりも安い価格で会社の土地を購入したり、清算人に有利な条件で購入したりした場合は、利益相反義務違反です。
清算人に関するよくある質問
最後に、清算人についてよくある質問にお答えしていきます。
清算人が亡くなってしまった場合はどうなりますか?
清算人が死亡しても、清算手続きは止められません。
清算人が複数人いる場合、死亡した清算人のほかの清算人が事務を引き継ぎます。ただし、定款で清算人の人数が定められている場合や清算人の人数が減少して清算事務に支障をきたす場合は、新たに清算人を選任しなくてはいけません。
また、清算人が1人だった場合は清算人がいなくなってしまうので、新たな清算人の選任が必要です。
選任方法は「株主総会での選任」「裁判所への申立て」の2つがあります。清算人が死亡して新たに清算人を選任する場合は、裁判所への申立てるケースが多いです。
株主総会で新たな清算人を選任する場合でも、裁判所に「新しい清算人を選任する申請」を行ってから、株主総会を開きます。
清算人と代表清算人の違いを教えてください
代表清算人と清算人は、会社の代表取締役と取締役のような立場です。代表清算人は清算会社の代表の役割を担います。清算人が1人の場合はその清算人が代表清算人です。
会社に清算会が設置されている場合、清算人から代表清算人が選任されます。反対に、会社に清算会が設置されておらず複数人の清算人がいるときは、清算人それぞれが代表清算人です。
また以下の方法で、代表清算人が選任されるケースもあります。
- 定款で定められている場合、定款に定められた清算人が代表清算人になる
- 株主総会の決議で代表清算人が選任される
- 法定清算人の場合は代表取締役が代表清算人になる
- 裁判所が清算人を定める場合、裁判所が代表清算人を選任する