会社の資金繰りが厳しいときの対処法は?資金調達の方法も解説

会社の資金繰りが厳しいときの対処法は?資金調達の方法も解説

ビジネスでは仕入れなど取引先への支払いや納税など、さまざまな理由でお金が必要になります。

キャッシュフローが健全であれば問題ありませんが、場合によっては資金不足に悩むこともあるでしょう。

そうなると、何らかの方法で資金調達する必要がありますが、方法によっては会社の存続に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

資金調達を実行するとなると、最低でも数日から数週間かかるイメージをお持ちの方が一般的だとおもいます。しかし、即日ファクタリングを利用することで、今日中に資金調達も可能です。

このように、資金調達の方法は多岐にわたりますが、全てを把握するのは難しいでしょう。

そこで今回は、会社の資金繰りが厳しいときに避けるべき資金調達の方法と、適切な資金調達方法について解説します。

資金繰りが厳しくても絶対にやってはいけない3つのこと

資金繰りが厳しくても絶対にやってはいけない3つのこと

資金繰りが厳しいときには、何らかの方法で資金調達を行いキャッシュフローを改善する必要があります。

しかし、資金難だからといって、やるべきではない資金調達の方法があることに注意が必要です。

この記事では、具体的に以下の3つの方法を避けるべきであると警鐘を鳴らします。

街金融や商工ローンからの借入れ

一般的に、ビジネス目的での資金調達は、銀行からの融資や株式発行などで賄うことがありますが、これらの方法が難しい場合だと「街金融」や「商工ローン」といった方法を模索するケースもあるでしょう。

しかし、健全なビジネスの継続を考慮するのであれば、これらの方法で資金調達するのは避けるべきです。

理由はいくつかありますが、大きな理由としてはまず「金利が高い」ことが挙げられます。

融資額が大きく、融資決定の際の審査基準が比較的厳しく設けられている銀行融資に比べると、これらの借り入れは融資難易度が低いことから金利が高く設定されることが多いのです。

そうなると返済の際に多くの金利を負担しなければならず、資金繰りが厳しい状態が余計に悪化してしまうでしょう。

また、これらの方法で資金調達している事実が知られてしまうと、「銀行からの融資を受けにくくなる」というデメリットもあります。

銀行は融資の是非を決める審査をする際に既存の借り入れ状態をチェックしますが、その中に街金融や商工ローンからの借り入れが含まれていると厳しく審査される可能性が高まるため、余計に資金調達が厳しくなる可能性があるのです。

税金や社会保険料の滞納すること

会社の資金繰りが悪化してしまうと、本来であればルール通りに納めるべき「法人税」などの税金や「社会保険料」のように、ビジネスの継続に欠かせない支払いが困難になるケースもあるかもしれません。

しかし、いくら資金繰りが厳しい状況であるとはいえ、これらの支払いを滞らせることは、可能な限り避けるべきです。

通常、ある程度の短い期間であれば、そこまで大きなデメリットが発生することはないでしょう。

しかし、あまりにも長い期間において支払いが滞ってしまうと、会社の存続に支障をきたすほどの大きなペナルティを背負うことになりかねません。

たとえば法人税の支払いが遅れてしまうと、支払いが遅れた期間に応じて延滞税が発生し、納税する金額が増えてしまいます。

さらに納税の延滞が続くと、最終的には会社が保有する財産を差し押さえられてしまい、差し押さえられた財産の内容によっては事業の継続が難しくなってしまうケースも考えられるのです。

このように、税金や保険料の支払いが滞ると、最終的に事業の継続が困難になる結末を迎える可能性が高まるため、資金繰りが良くない状況であっても延滞は避けるべきだと言えます。

融通手形を振り出す

ビジネスの世界では、決済手段として「手形」と呼ばれるものを発行することがあります。

そしてビジネスの世界では、実際の商取引が存在しないにもかかわらず手形が発行される「融通手形」と呼ばれる手形が発行されるケースがあるのです。

融通手形とは、資金が必要な会社が、取引先などの関係者から手形を発行してもらい、これを金融機関などで手形割引を利用して現金化するという形をとる資金調達方法となります。

融通手形を受け取った会社は、手形の決済期日までに手形を振り出してくれた相手に対して手形金額相当を支払うことで損をさせないという流れになりますが、この方法も資金繰りを悪化させる原因になるのです。

融通手形は基本的に手形割引、つまり手形の額面金額から数割を差し引いた金額を受け取り、手形の振出人に対して額面金額通りの金額を支払います。

そのため、一時的な資金繰りにはちょうど良い方法ではありますが、決済金額を見ると割り引かれている分だけ損をするのです。

また、手形の決済期日までに額面金額の支払いをしないと、融通手形を発行してくれた相手への裏切り行為になり、相手との関係性を悪化させる可能性があります。 

それを避けるために別の取引先に融通手形の発行を依頼して資金を確保するという方法もありますが、すでに資金繰りに悩んでいる状態ですからその支払いも困難になり、余計に資金繰りを悪化させるという悪循環に陥る可能性が高いのです。

会社の資金繰りが厳しい時にやるべき5つのこと

会社の資金繰りが厳しいときには、すぐにでも資金調達を実行したいと思うでしょう。

しかし、無計画に資金調達を実施しても、返済のめどが立たずに負債が増える結果に終わるかもしれません。

そのため、資金繰りが厳しいと感じたときには、まず以下の5つの行動をとることをおすすめします。

現状を把握し原因を究明する

資金繰りが厳しいと判断したら、まずは現時点での会社の財務体質などの現状把握を行い、資金繰りが悪化した原因を究明しましょう。

通常、健全なビジネスが継続できていれば、そう簡単には資金繰りが悪化して現金不足に陥るようなことはありません。

資金繰りが悪化している時は、会社にかかわるどこかに必ず資金難状態に陥った明確な原因が1つ以上存在しているはずです。

まずは会社の貸借対照表や損益計算書といったデータを参照し、とくに直近の現金の出入りについて調査してください。

可能であれば、資金繰りが悪化している状態になっているようなデータが発見できるまで、過去の資料をチェックしましょう。

資金繰りが悪化している過去のデータが見つかれば、その直近で何か現金の状態を悪くする要因が起こっている可能性が高いです。

資金繰りの現状と、資金繰り悪化の原因を究明しないと、これから行う資金難対策についても有効な手立てを打ち出すことは難しいでしょう。

経営計画を見直し財務体質を改善する

資金繰りが悪化しているということは、会社の財務体質が良くない状態にあるということです。

財務体質」とは、会社の財務の基本的な状態のことであり、負債が少ない=自己資本比率が高い状態であれば、一般的に「財務体質が良い」と評価されます。

財務体質は自社の評価にもつながり、たとえば銀行から融資を受ける際には財務体質についても審査され、財務体質が良くないと融資を受けられなかったり、融資限度額が低く評価されるなどのデメリットがあるのです。

財務体質が悪化する主な要因は、会社の経営状態が良くない、つまり事業でしっかりと利益を出せていないことが挙げられます。

健全に利益を出せている状態が続いていれば資産も増えますので財務体質が良くなりますが、利益が少なすぎたり損失を出し続けていると財務体質は悪化します。

そのため、直近の損益計算書を確認して、きちんと利益を出せているかどうか確認しましょう。

利益が不十分だと判断した場合は、経営計画を見直して、利益を出せる体質に変えていく必要があります。

採算が取れていない事業は縮小または撤退し、利益を出せている事業に注力することで事業を合理化すれば、経営状態は改善されるでしょう。

同時に、経費や人件費削減などにも着手することで、利益を圧迫するような費用を縮小することも重要です。

回収サイトと支払いサイトを見直す

会社の資金繰りが厳しいのであれば、「回収サイト」および「支払いサイト」の2つについて見直しを行い、取引先との交渉に臨むことをおすすめします。

一般的な商取引の場合、商慣習に則って取引で発生する代金の支払いを、月末や期末といった特定のタイミングでまとめて支払うというやり方があるのです。

簿記でいうところの「売掛金」「買掛金」などがこれに該当するのですが、これらの決済までの猶予期間が長すぎる・短すぎる場合だと、会社の資金繰りを悪化させる可能性があります。

自社の売掛金、つまり自社が将来的に取引代金を受け取る場合だと、回収サイトが長すぎるとなかなか債権を現金化できません。

逆に 自社の買掛金、つまり将来的に自社が取引代金を支払う場合であれば、支払いサイトが短すぎると短期間で現金が出て行ってしまいます。

これらのバランスがとれている場合であればキャッシュフローは健全な状態に落ち着くことが多いのですが、バランスが悪い場合だと会社に現金が残りにくくなり、資金繰りが悪化するのです。

そのため、自社と取引のある企業・業者との掛け取引について確認し、その回収サイト・支払いサイトが自社の取引において異常な期間であれば、交渉してその期間を正常な状態に改善することをおすすめします。

資金調達できる方法がないか検討する

上記の方法で財務体質を改善してみても、短期的にはそこまで大きな影響は出ないでしょう。

そのため、すぐにでも現金を確保したいという場合には、何らかの方法で資金調達をできないかどうかを検討する必要があります。

先ほど解説した3つの方法はおすすめできませんが、会社が資金調達をするための方法はほかにもいくつかあります。

オーソドックスな方法としては、銀行などの金融機関から資金調達する方法です。

一般的に銀行からの融資は審査基準が厳しいと言われていますが、融資を受けるのに成功すれば一度に多額の現金を確保できますし、金利もそこまで高く設定されないでしょう。

可能であれば会社の代表が自身の資産を持ち出して、増資を行うという方法もあります。

代表者自身の資産だけでなく、知り合いに資金提供を依頼して増資し、株主になってもらう のも可能です。

最近ではクラウドファンディングという手法もあり、事業の成長や社会への貢献度などを評価してもらって資金を集めるという方法もありますが、返礼品を用意する必要がある形式もあるので慎重に検討する必要があります。

また、事業内容によっては国や自治体が展開する補助金や助成金を利用する方法もあり、費用を削減する効果が期待できるでしょう。

会社の現状によって利用できる方法は限られますので、今の時点でどの方法が資金調達として現実的であるかを判断し、少しでも負担の少ない方法で資金調達を実施してください。

金融機関に返済猶予を相談する

これは可能であれば使いたくはない手段ではありますが、銀行などの金融機関から融資を受けている場合、その返済についての猶予を相談するという方法があります。

交渉内容次第ではありますが、主に「一定期間の返済額を減額する」「一定期間の返済について元本据え置きで利息だけ支払う」「返済期間を延長して1回あたりの返済額を減額する」のが一般的です。

「これって銀行側にメリットがないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は金融機関側にも一応のメリットがあります。

返済猶予の相談をする=資金繰りが厳しいと判断されるため、金融機関側は相手の財務状態が良くないことを察します。

資金難が続くと会社が倒産するリスクが高まりますので、もしそうなると金融機関側としてはその会社に対する債権が貸し倒れる(未回収に終わってしまう)可能性が高まるのです。

そのため、会社側からの返済猶予の交渉に応じることで資金繰りの悪化を回避し、倒産リスクを抑えることで貸し倒れリスクを抑えるという狙いがあります。

ここだけ見るとWin-Winの関係に見えなくもありませんが、会社側にとってデメリットもあるのです。

通常、返済猶予を受けることに成功した場合、交渉した金融機関からはその返済が終わるまで追加融資を受けることができません。

そうなるとほかの金融機関から融資を受ける必要がありますが、返済猶予の交渉が必要なほど財務体質が良くないので、金融機関からの評価が低く審査に通る可能性が少なくなるのです。

つまり、返済猶予の交渉を行うと、仮に成功したとしても資金調達の手段が限られるのです。

会社の資金繰りが厳しい時にできる資金調達法11選

会社の資金繰りが厳しい場合、何らかの方法で資金調達をする必要があり、会社の状況によっては選べる方法が限られてしまいます。

そこで、資金繰りを回復させられる可能性がある、法人・個人事業主向けの資金調達方法について解説します。 

金融機関からの融資

ビジネス向けの資金調達方法といえば、やはり代表的なものは「金融機関からの融資」でしょう。

銀行などの金融機関は個人向け・法人向けにさまざまな金融商品を打ち出しており、会社の運転資金向けにも資金を借り入れられます。

一般的な個人向けカードローン等の金融商品と比較すると、融資限度額が高額で、金利が低めなのが大きなメリットとなります。

とくに事業規模の大きな大企業の場合だと、銀行からの融資レベルの借入額でないと、資金繰りの悪化を解消できないケースが多いでしょう。

法人向けの融資の場合だと、不動産や売掛金、事業用の設備などの資産を担保として差し入れるタイプや、代表者が保証人になったり信用保証協会の保証を入れるなどの形で融資を受けるケースが多いです。

融資額の規模が一般向けの借り入れと比較すると高額であるため、審査基準が厳しめに設定されていることが多くなります。

審査においては会社の財務体質や経営状態、他社からの借り入れなどの状態をチェックされ、総合的に判断して「この会社ならば返済に問題ないだろう」と判断されれば融資を受けられます。

資金繰りが良くない状態でも経営状態に問題がなければ融資を受けられる可能性がありますので、資金繰りの改善を目標とする際には最優先で考慮するべき資金調達方法です。

公的融資

金融機関からの借り入れが難しい場合、「公的融資」を利用するという方法があります。

公的融資とは、国や地方自治体など、法律で認められている機関等の主体が貸し付けを行う融資制度です。

借り入れの規模が大きい一方で、民間の金融機関からの借り入れと比較すると金利が低めに設定されることが多いのが特徴となります。

公的融資は、新規事業の創出や雇用の創出・維持、税収の確保などを目的とした融資であり、個人事業主や中小企業のように大企業ほど信用がなく金融機関からの借り入れが難しいケースでも借り入れができるのがメリットの1つです。

また、民間の金融機関からの事業融資と比較すると、融資の際に担保や保証人の設定が不要なケースが多く、逆にこちらから担保を設定することにより金利を下げられる可能性もあります。

さまざまな機関からの借り入れが想定できますが、会社の所在地や事業内容によって利用できる借り入れの種類が限られる点には注意が必要です。

また、民間の金融機関からの融資以上に審査基準が厳しめに設定されており、加えて融資決定までに長い時間がかかるため、急いで会社の運転資金を確保しなければならない場合には間に合わない可能性がある点は大きなデメリットとなります。

助成金や補助金

国や自治体の制度を利用するという方法であれば、ほかにも「助成金」や「補助金」を利用するという方法があります。

助成金や補助金の中には法人や個人事業主向けの制度が用意されているケースもあり、条件を満たすことで利用でき、将来発生する費用の一部を助成してもらうことが可能です。

助成金や補助金の最大のメリットは、その多くが返済不要の制度であることから、金融機関からの融資のような借り入れと比較すると資金繰りが改善しやすいというメリットがあります。

ただし、資金繰りの改善のために助成金や補助金を利用することには、いくつかの注意点があります。

まず、助成金や補助金は前払いではなく、設定された条件を満たした後で支払われるため、資金繰り改善の効果が得られるのがしばらく先になってしまうのです。

次に、助成金や補助金は収入の一部として扱われるため、課税対象となって納税額が増加し、場合によっては余計に資金繰りを悪化させる可能性があります。

ほかにも、どんな助成金・補助金制度があるのかを自分で調べなければなりませんし、手続きもなかなか面倒、さらには金融機関からの融資と比べて目的や条件が細かく設定されているため、どの会社でも申し込めるわけではない点にも注意が必要です。

エンジェル投資家からの投資

起業して間もない場合であれば、「エンジェル投資家からの投資」を期待するという方法もあります。

エンジェル投資家とは、起業して間もない会社に対して出資を行う投資家です。

通常、起業して間もない会社は実績がありませんので、事業に対して信用が乏しく融資を受けることは難しいでしょう。

一方でエンジェル投資家は、本人に企業経験がある場合も多く、応援したい気持ちで投資する場合もありますし、エンジェル投資家は出資した金額相当の株式で対価を得る目的で出資する場合もあります。

エンジェル投資家からの出資を受けることは、会社側にもメリットが大きいのです。

通常、金融機関などからの借り入れは要するに「借金」ですから、将来的に返済する義務があります。

一方でエンジェル投資家からの出資については株式などで対価を支払っているため、金銭での返済については必要ありません。

また、エンジェル投資家の中には起業経験や会社を成長させた実績のある人物も多く、経営に関するアドバイス・サポートを受けられるケースもあります。

さらに、取引先を紹介してくれるケースもあるなど、会社の成長に深くかかわるような重要なサポートを得られる可能性もあるため、今後の資金繰りについても安心感が大きくなるのです。

少人数私募債

個人事業主の場合は利用できませんが、法人であれば「少人数私募債」という方法で資金調達できます。

少人数私募債とは、金融機関を経由せずに資金調達する、社債の形式の1つです。

公募債に対して私募債に分類される資金調達方法であり、私募債の中のさらに少人数私募債という分類は、募集対象が50人未満に制限される代わりに、投資家の性質が問われない(適格機関投資家でなくても良い)という特徴があります。

金融機関での審査が必要ないため、手続きの知識さえあれば比較的短期間で資金調達しやすい点がメリットです。

金融機関を通さない資金調達方法であるため、基本的に知り合いや取引先、親戚などの縁故者が中心となって資金を集めることになります。

また、少人数私募債の制限として、社債発行総額は1億円未満で、募集が50人未満であるという性質から譲渡制限を設ける必要があるのです。

金融機関からの信用が乏しい中小や零細企業にとって、まとまった金額を手軽に資金調達できる方法として重宝されています。

株式の発行

可能であれば、「株式の発行」によって資金調達するのも可能です。

株式の発行は銀行からの融資と異なり、返済義務がありません。

会社の財務体質を大幅に改善できる可能性がありますので、問題が生じないのであれば新株発行によって資金を集めて、資金繰りを改善しましょう。

ただし、株式の発行にはいくつかのデメリットも存在します。

まず、出資によって株式を取得した株主には、持ち株比率に応じて議決権が与えられるため、持ち株比率が多いと経営権を奪われてしまう可能性があるのです。

経営に積極的で必要な知識と経験がある株主であれば問題ありませんが、中にはそうでない株主がいい加減な文句だけを口に出すケースもあり、経営の健全性が損なわれてしまう可能性があります。

また、新株発行することにより、既存の株主からの反感を買う可能性があります。

新株を発行することはイコール発行済み株式の総数が増加することなので、既存の株主は持ち株比率が低下してしまい、これに反発して株式を売却してしまうケースが多いです。

株式市場では売り注文が増加した銘柄は株価が下落してしまうため、さまざまなトラブルの原因になりかねません。

さらに、株式発行により自社の自己資本が増加することで、法人税の納税額が増加してしまい、これが資金繰りを悪化させてしまう恐れもあります。

経営環境変化対応資金の活用

条件に合うのであれば「経営環境変化対応資金」を活用するという方法もあります。

経営環境変化対応資金とは、社会的または経済的な外的環境が変化したことを原因として、一時的に業績が悪化しているが、中長期的には回復の見込みがあるという場合に融資を受けられる制度です。

基準金利で返済できるので、金利による負担が少ないのが魅力となっています。

ただし、日本政策金融公庫が設定している条件を満たしていないと申請できません。

また、こうした外部環境の変化は一度に多くの会社に対して影響するケースも多く、そうなると一度に大量の申請が出されるため、場合によっては審査に時間がかかる可能性があります。

さらに、設備資金については15年の返済期間になっていますが、運転資金の場合は返済期間が8年と比較的短く設定されていますので、早期の事業回復と綿密な返済計画を用意する必要があるので注意してください。

企業再建資金の活用

同じく日本政策金融公庫が主体となって融資を行っている「企業再建資金」を活用する方法もあります。

企業再建資金とは、一定の条件を受け入れることを条件として、企業の再建を図るうえで必要な設備資金および運転資金を融資するという制度です。

金利も低めであり、返済期間も15年~20年と長いため、返済の負担が抑えられているのもメリットになります。

ただし、特定の条件で融資を受ける場合には、大きな注意点があります。

融資の条件次第では特定の要件が定められている場合があり、それを満たしていないと判断されてしまうと繰上償還を求められたり、金利が引き上げられる(特別金利から基準金利に変更される)デメリットが存在するのです。

資金繰りもそうですが、すでに会社の経営が傾いている状況にある場合であれば、この制度を活用することによって会社の再建を目指すという選択肢も積極的に検討するべきでしょう。

資産の売却

会社に有益な資産があるのであれば、資金繰りのためにこれを売却するという選択肢も検討する必要があるでしょう。

ビジネスには、さまざまな事業用の設備や建物などを必要とします。

たとえば製品を生産するのであれば、工場が必要ですし、生産用の機械設備も大量に用意する必要があるでしょう。

こうした資産はビジネスの継続にとって必要不可欠な要素ではありますが、会社の資金繰りの改善のために手放す決断をしなければならない場面もあるのです。

たとえば、資金繰りが良くないということは経営判断が間違っているケースも多く、自社の事業を見直してみると不採算事業がいくつか見つかるケースも珍しくありません。

その場合、その事業から撤退することで経営をスリム化・合理化し、利益を確保することで財務体質を徐々に改善できる可能性があります。

その際、切り離した事業で使用していた不動産や設備があれば、すでに使わなくなることが明確になっていますので売却して現金化することで、短期的に資金繰りを改善可能です。

ただし、採算が取れている事業に必要な資産まで売却してしまうと、事業規模が縮小されてしまい、余計に資金繰りが悪化する可能性があります。

もちろん、事業の悪化が続けば重要な資産にも手を出さなければならないため、傷が浅いうちに重要度の低い資産から売却を検討し、早めに財務体質の改善を目指すことが重要です。

ファクタリング

回収できるまでに時間がかかる売掛金債権がある場合であれば、「ファクタリング」という方法を活用することも可能です。

ファクタリングとは、一言でいえば売掛金債権の買い取りであり、ファクタリング会社に売掛金債権を譲渡することで手数料を引かれた分を現金として受け取ることができます。

支払期日がまだ到来していない売掛金を現金化できるため、資金繰りを改善できます

また、ファクタリングは債権の売却であるため、融資と異なり返済の必要がなく、将来的な財務体質の悪化を回避できるのです。

ファクタリングは自社とファクタリング会社の2者間で行われる場合と、これに売掛金がある取引先を加えた3者間で行われる場合の2パターンがありますが、後者の場合は取引先に債権譲渡の存在が知られてしまいます。

ただし、すべての売掛金をファクタリング会社に売却できるわけではありません。

まず、取引先との間で「譲渡禁止」の特約が設定されている売掛金は、ファクタリング会社に売却できません。

また、申し込みの際にはファクタリング会社で審査が行われますが、不良債権(回収の見込みが乏しい債権)については買い取ってもらえません。

リースバック

先ほど「資産の売却」という話をしましたが、売却してしまうと自社の資産ではなくなるため、事業の継続に支障をきたすことになりかねません。

そこで利用されている手法の1つが「リースバック」です。

リースバックでは、主に建物などの不動産を業者に買い取ってもらい、売却代金を得て対象の不動産を賃借することで以降も自社のビジネスに利用するという方法となります。

この方法では売却代金によって短期間で財務体質を改善でき、しかも賃借することでビジネスの継続にも影響を及ぼしません。

賃借中は賃料を支払う必要がありますが、会社の経営が回復したら売却した不動産を買い戻すことも可能です。

会社の資金繰りが厳しいときの対処法は?資金調達の方法も解説

会社の資金繰りが厳しいときの対処法は?資金調達の方法も解説

ビジネスでは仕入れなど取引先への支払いや納税など、さまざまな理由でお金が必要になります。

キャッシュフローが健全であれば問題ありませんが、場合によっては資金不足に悩むこともあるでしょう。

そうなると、何らかの方法で資金調達する必要がありますが、方法によっては会社の存続に悪影響を及ぼす可能性があるのです。

資金調達を実行するとなると、最低でも数日から数週間かかるイメージをお持ちの方が一般的だとおもいます。しかし、即日ファクタリングを利用することで、今日中に資金調達も可能です。

このように、資金調達の方法は多岐にわたりますが、全てを把握するのは難しいでしょう。

そこで今回は、会社の資金繰りが厳しいときに避けるべき資金調達の方法と、適切な資金調達方法について解説します。

資金繰りが厳しくても絶対にやってはいけない3つのこと

資金繰りが厳しくても絶対にやってはいけない3つのこと

資金繰りが厳しいときには、何らかの方法で資金調達を行いキャッシュフローを改善する必要があります。

しかし、資金難だからといって、やるべきではない資金調達の方法があることに注意が必要です。

この記事では、具体的に以下の3つの方法を避けるべきであると警鐘を鳴らします。

街金融や商工ローンからの借入れ

一般的に、ビジネス目的での資金調達は、銀行からの融資や株式発行などで賄うことがありますが、これらの方法が難しい場合だと「街金融」や「商工ローン」といった方法を模索するケースもあるでしょう。

しかし、健全なビジネスの継続を考慮するのであれば、これらの方法で資金調達するのは避けるべきです。

理由はいくつかありますが、大きな理由としてはまず「金利が高い」ことが挙げられます。

融資額が大きく、融資決定の際の審査基準が比較的厳しく設けられている銀行融資に比べると、これらの借り入れは融資難易度が低いことから金利が高く設定されることが多いのです。

そうなると返済の際に多くの金利を負担しなければならず、資金繰りが厳しい状態が余計に悪化してしまうでしょう。

また、これらの方法で資金調達している事実が知られてしまうと、「銀行からの融資を受けにくくなる」というデメリットもあります。

銀行は融資の是非を決める審査をする際に既存の借り入れ状態をチェックしますが、その中に街金融や商工ローンからの借り入れが含まれていると厳しく審査される可能性が高まるため、余計に資金調達が厳しくなる可能性があるのです。

税金や社会保険料の滞納すること

会社の資金繰りが悪化してしまうと、本来であればルール通りに納めるべき「法人税」などの税金や「社会保険料」のように、ビジネスの継続に欠かせない支払いが困難になるケースもあるかもしれません。

しかし、いくら資金繰りが厳しい状況であるとはいえ、これらの支払いを滞らせることは、可能な限り避けるべきです。

通常、ある程度の短い期間であれば、そこまで大きなデメリットが発生することはないでしょう。

しかし、あまりにも長い期間において支払いが滞ってしまうと、会社の存続に支障をきたすほどの大きなペナルティを背負うことになりかねません。

たとえば法人税の支払いが遅れてしまうと、支払いが遅れた期間に応じて延滞税が発生し、納税する金額が増えてしまいます。

さらに納税の延滞が続くと、最終的には会社が保有する財産を差し押さえられてしまい、差し押さえられた財産の内容によっては事業の継続が難しくなってしまうケースも考えられるのです。

このように、税金や保険料の支払いが滞ると、最終的に事業の継続が困難になる結末を迎える可能性が高まるため、資金繰りが良くない状況であっても延滞は避けるべきだと言えます。

融通手形を振り出す

ビジネスの世界では、決済手段として「手形」と呼ばれるものを発行することがあります。

そしてビジネスの世界では、実際の商取引が存在しないにもかかわらず手形が発行される「融通手形」と呼ばれる手形が発行されるケースがあるのです。

融通手形とは、資金が必要な会社が、取引先などの関係者から手形を発行してもらい、これを金融機関などで手形割引を利用して現金化するという形をとる資金調達方法となります。

融通手形を受け取った会社は、手形の決済期日までに手形を振り出してくれた相手に対して手形金額相当を支払うことで損をさせないという流れになりますが、この方法も資金繰りを悪化させる原因になるのです。

融通手形は基本的に手形割引、つまり手形の額面金額から数割を差し引いた金額を受け取り、手形の振出人に対して額面金額通りの金額を支払います。

そのため、一時的な資金繰りにはちょうど良い方法ではありますが、決済金額を見ると割り引かれている分だけ損をするのです。

また、手形の決済期日までに額面金額の支払いをしないと、融通手形を発行してくれた相手への裏切り行為になり、相手との関係性を悪化させる可能性があります。 

それを避けるために別の取引先に融通手形の発行を依頼して資金を確保するという方法もありますが、すでに資金繰りに悩んでいる状態ですからその支払いも困難になり、余計に資金繰りを悪化させるという悪循環に陥る可能性が高いのです。

会社の資金繰りが厳しい時にやるべき5つのこと

会社の資金繰りが厳しいときには、すぐにでも資金調達を実行したいと思うでしょう。

しかし、無計画に資金調達を実施しても、返済のめどが立たずに負債が増える結果に終わるかもしれません。

そのため、資金繰りが厳しいと感じたときには、まず以下の5つの行動をとることをおすすめします。

現状を把握し原因を究明する

資金繰りが厳しいと判断したら、まずは現時点での会社の財務体質などの現状把握を行い、資金繰りが悪化した原因を究明しましょう。

通常、健全なビジネスが継続できていれば、そう簡単には資金繰りが悪化して現金不足に陥るようなことはありません。

資金繰りが悪化している時は、会社にかかわるどこかに必ず資金難状態に陥った明確な原因が1つ以上存在しているはずです。

まずは会社の貸借対照表や損益計算書といったデータを参照し、とくに直近の現金の出入りについて調査してください。

可能であれば、資金繰りが悪化している状態になっているようなデータが発見できるまで、過去の資料をチェックしましょう。

資金繰りが悪化している過去のデータが見つかれば、その直近で何か現金の状態を悪くする要因が起こっている可能性が高いです。

資金繰りの現状と、資金繰り悪化の原因を究明しないと、これから行う資金難対策についても有効な手立てを打ち出すことは難しいでしょう。

経営計画を見直し財務体質を改善する

資金繰りが悪化しているということは、会社の財務体質が良くない状態にあるということです。

財務体質」とは、会社の財務の基本的な状態のことであり、負債が少ない=自己資本比率が高い状態であれば、一般的に「財務体質が良い」と評価されます。

財務体質は自社の評価にもつながり、たとえば銀行から融資を受ける際には財務体質についても審査され、財務体質が良くないと融資を受けられなかったり、融資限度額が低く評価されるなどのデメリットがあるのです。

財務体質が悪化する主な要因は、会社の経営状態が良くない、つまり事業でしっかりと利益を出せていないことが挙げられます。

健全に利益を出せている状態が続いていれば資産も増えますので財務体質が良くなりますが、利益が少なすぎたり損失を出し続けていると財務体質は悪化します。

そのため、直近の損益計算書を確認して、きちんと利益を出せているかどうか確認しましょう。

利益が不十分だと判断した場合は、経営計画を見直して、利益を出せる体質に変えていく必要があります。

採算が取れていない事業は縮小または撤退し、利益を出せている事業に注力することで事業を合理化すれば、経営状態は改善されるでしょう。

同時に、経費や人件費削減などにも着手することで、利益を圧迫するような費用を縮小することも重要です。

回収サイトと支払いサイトを見直す

会社の資金繰りが厳しいのであれば、「回収サイト」および「支払いサイト」の2つについて見直しを行い、取引先との交渉に臨むことをおすすめします。

一般的な商取引の場合、商慣習に則って取引で発生する代金の支払いを、月末や期末といった特定のタイミングでまとめて支払うというやり方があるのです。

簿記でいうところの「売掛金」「買掛金」などがこれに該当するのですが、これらの決済までの猶予期間が長すぎる・短すぎる場合だと、会社の資金繰りを悪化させる可能性があります。

自社の売掛金、つまり自社が将来的に取引代金を受け取る場合だと、回収サイトが長すぎるとなかなか債権を現金化できません。

逆に 自社の買掛金、つまり将来的に自社が取引代金を支払う場合であれば、支払いサイトが短すぎると短期間で現金が出て行ってしまいます。

これらのバランスがとれている場合であればキャッシュフローは健全な状態に落ち着くことが多いのですが、バランスが悪い場合だと会社に現金が残りにくくなり、資金繰りが悪化するのです。

そのため、自社と取引のある企業・業者との掛け取引について確認し、その回収サイト・支払いサイトが自社の取引において異常な期間であれば、交渉してその期間を正常な状態に改善することをおすすめします。

資金調達できる方法がないか検討する

上記の方法で財務体質を改善してみても、短期的にはそこまで大きな影響は出ないでしょう。

そのため、すぐにでも現金を確保したいという場合には、何らかの方法で資金調達をできないかどうかを検討する必要があります。

先ほど解説した3つの方法はおすすめできませんが、会社が資金調達をするための方法はほかにもいくつかあります。

オーソドックスな方法としては、銀行などの金融機関から資金調達する方法です。

一般的に銀行からの融資は審査基準が厳しいと言われていますが、融資を受けるのに成功すれば一度に多額の現金を確保できますし、金利もそこまで高く設定されないでしょう。

可能であれば会社の代表が自身の資産を持ち出して、増資を行うという方法もあります。

代表者自身の資産だけでなく、知り合いに資金提供を依頼して増資し、株主になってもらう のも可能です。

最近ではクラウドファンディングという手法もあり、事業の成長や社会への貢献度などを評価してもらって資金を集めるという方法もありますが、返礼品を用意する必要がある形式もあるので慎重に検討する必要があります。

また、事業内容によっては国や自治体が展開する補助金や助成金を利用する方法もあり、費用を削減する効果が期待できるでしょう。

会社の現状によって利用できる方法は限られますので、今の時点でどの方法が資金調達として現実的であるかを判断し、少しでも負担の少ない方法で資金調達を実施してください。

金融機関に返済猶予を相談する

これは可能であれば使いたくはない手段ではありますが、銀行などの金融機関から融資を受けている場合、その返済についての猶予を相談するという方法があります。

交渉内容次第ではありますが、主に「一定期間の返済額を減額する」「一定期間の返済について元本据え置きで利息だけ支払う」「返済期間を延長して1回あたりの返済額を減額する」のが一般的です。

「これって銀行側にメリットがないのでは?」と思われるかもしれませんが、実は金融機関側にも一応のメリットがあります。

返済猶予の相談をする=資金繰りが厳しいと判断されるため、金融機関側は相手の財務状態が良くないことを察します。

資金難が続くと会社が倒産するリスクが高まりますので、もしそうなると金融機関側としてはその会社に対する債権が貸し倒れる(未回収に終わってしまう)可能性が高まるのです。

そのため、会社側からの返済猶予の交渉に応じることで資金繰りの悪化を回避し、倒産リスクを抑えることで貸し倒れリスクを抑えるという狙いがあります。

ここだけ見るとWin-Winの関係に見えなくもありませんが、会社側にとってデメリットもあるのです。

通常、返済猶予を受けることに成功した場合、交渉した金融機関からはその返済が終わるまで追加融資を受けることができません。

そうなるとほかの金融機関から融資を受ける必要がありますが、返済猶予の交渉が必要なほど財務体質が良くないので、金融機関からの評価が低く審査に通る可能性が少なくなるのです。

つまり、返済猶予の交渉を行うと、仮に成功したとしても資金調達の手段が限られるのです。

会社の資金繰りが厳しい時にできる資金調達法11選

会社の資金繰りが厳しい場合、何らかの方法で資金調達をする必要があり、会社の状況によっては選べる方法が限られてしまいます。

そこで、資金繰りを回復させられる可能性がある、法人・個人事業主向けの資金調達方法について解説します。 

金融機関からの融資

ビジネス向けの資金調達方法といえば、やはり代表的なものは「金融機関からの融資」でしょう。

銀行などの金融機関は個人向け・法人向けにさまざまな金融商品を打ち出しており、会社の運転資金向けにも資金を借り入れられます。

一般的な個人向けカードローン等の金融商品と比較すると、融資限度額が高額で、金利が低めなのが大きなメリットとなります。

とくに事業規模の大きな大企業の場合だと、銀行からの融資レベルの借入額でないと、資金繰りの悪化を解消できないケースが多いでしょう。

法人向けの融資の場合だと、不動産や売掛金、事業用の設備などの資産を担保として差し入れるタイプや、代表者が保証人になったり信用保証協会の保証を入れるなどの形で融資を受けるケースが多いです。

融資額の規模が一般向けの借り入れと比較すると高額であるため、審査基準が厳しめに設定されていることが多くなります。

審査においては会社の財務体質や経営状態、他社からの借り入れなどの状態をチェックされ、総合的に判断して「この会社ならば返済に問題ないだろう」と判断されれば融資を受けられます。

資金繰りが良くない状態でも経営状態に問題がなければ融資を受けられる可能性がありますので、資金繰りの改善を目標とする際には最優先で考慮するべき資金調達方法です。

公的融資

金融機関からの借り入れが難しい場合、「公的融資」を利用するという方法があります。

公的融資とは、国や地方自治体など、法律で認められている機関等の主体が貸し付けを行う融資制度です。

借り入れの規模が大きい一方で、民間の金融機関からの借り入れと比較すると金利が低めに設定されることが多いのが特徴となります。

公的融資は、新規事業の創出や雇用の創出・維持、税収の確保などを目的とした融資であり、個人事業主や中小企業のように大企業ほど信用がなく金融機関からの借り入れが難しいケースでも借り入れができるのがメリットの1つです。

また、民間の金融機関からの事業融資と比較すると、融資の際に担保や保証人の設定が不要なケースが多く、逆にこちらから担保を設定することにより金利を下げられる可能性もあります。

さまざまな機関からの借り入れが想定できますが、会社の所在地や事業内容によって利用できる借り入れの種類が限られる点には注意が必要です。

また、民間の金融機関からの融資以上に審査基準が厳しめに設定されており、加えて融資決定までに長い時間がかかるため、急いで会社の運転資金を確保しなければならない場合には間に合わない可能性がある点は大きなデメリットとなります。

助成金や補助金

国や自治体の制度を利用するという方法であれば、ほかにも「助成金」や「補助金」を利用するという方法があります。

助成金や補助金の中には法人や個人事業主向けの制度が用意されているケースもあり、条件を満たすことで利用でき、将来発生する費用の一部を助成してもらうことが可能です。

助成金や補助金の最大のメリットは、その多くが返済不要の制度であることから、金融機関からの融資のような借り入れと比較すると資金繰りが改善しやすいというメリットがあります。

ただし、資金繰りの改善のために助成金や補助金を利用することには、いくつかの注意点があります。

まず、助成金や補助金は前払いではなく、設定された条件を満たした後で支払われるため、資金繰り改善の効果が得られるのがしばらく先になってしまうのです。

次に、助成金や補助金は収入の一部として扱われるため、課税対象となって納税額が増加し、場合によっては余計に資金繰りを悪化させる可能性があります。

ほかにも、どんな助成金・補助金制度があるのかを自分で調べなければなりませんし、手続きもなかなか面倒、さらには金融機関からの融資と比べて目的や条件が細かく設定されているため、どの会社でも申し込めるわけではない点にも注意が必要です。

エンジェル投資家からの投資

起業して間もない場合であれば、「エンジェル投資家からの投資」を期待するという方法もあります。

エンジェル投資家とは、起業して間もない会社に対して出資を行う投資家です。

通常、起業して間もない会社は実績がありませんので、事業に対して信用が乏しく融資を受けることは難しいでしょう。

一方でエンジェル投資家は、本人に企業経験がある場合も多く、応援したい気持ちで投資する場合もありますし、エンジェル投資家は出資した金額相当の株式で対価を得る目的で出資する場合もあります。

エンジェル投資家からの出資を受けることは、会社側にもメリットが大きいのです。

通常、金融機関などからの借り入れは要するに「借金」ですから、将来的に返済する義務があります。

一方でエンジェル投資家からの出資については株式などで対価を支払っているため、金銭での返済については必要ありません。

また、エンジェル投資家の中には起業経験や会社を成長させた実績のある人物も多く、経営に関するアドバイス・サポートを受けられるケースもあります。

さらに、取引先を紹介してくれるケースもあるなど、会社の成長に深くかかわるような重要なサポートを得られる可能性もあるため、今後の資金繰りについても安心感が大きくなるのです。

少人数私募債

個人事業主の場合は利用できませんが、法人であれば「少人数私募債」という方法で資金調達できます。

少人数私募債とは、金融機関を経由せずに資金調達する、社債の形式の1つです。

公募債に対して私募債に分類される資金調達方法であり、私募債の中のさらに少人数私募債という分類は、募集対象が50人未満に制限される代わりに、投資家の性質が問われない(適格機関投資家でなくても良い)という特徴があります。

金融機関での審査が必要ないため、手続きの知識さえあれば比較的短期間で資金調達しやすい点がメリットです。

金融機関を通さない資金調達方法であるため、基本的に知り合いや取引先、親戚などの縁故者が中心となって資金を集めることになります。

また、少人数私募債の制限として、社債発行総額は1億円未満で、募集が50人未満であるという性質から譲渡制限を設ける必要があるのです。

金融機関からの信用が乏しい中小や零細企業にとって、まとまった金額を手軽に資金調達できる方法として重宝されています。

株式の発行

可能であれば、「株式の発行」によって資金調達するのも可能です。

株式の発行は銀行からの融資と異なり、返済義務がありません。

会社の財務体質を大幅に改善できる可能性がありますので、問題が生じないのであれば新株発行によって資金を集めて、資金繰りを改善しましょう。

ただし、株式の発行にはいくつかのデメリットも存在します。

まず、出資によって株式を取得した株主には、持ち株比率に応じて議決権が与えられるため、持ち株比率が多いと経営権を奪われてしまう可能性があるのです。

経営に積極的で必要な知識と経験がある株主であれば問題ありませんが、中にはそうでない株主がいい加減な文句だけを口に出すケースもあり、経営の健全性が損なわれてしまう可能性があります。

また、新株発行することにより、既存の株主からの反感を買う可能性があります。

新株を発行することはイコール発行済み株式の総数が増加することなので、既存の株主は持ち株比率が低下してしまい、これに反発して株式を売却してしまうケースが多いです。

株式市場では売り注文が増加した銘柄は株価が下落してしまうため、さまざまなトラブルの原因になりかねません。

さらに、株式発行により自社の自己資本が増加することで、法人税の納税額が増加してしまい、これが資金繰りを悪化させてしまう恐れもあります。

経営環境変化対応資金の活用

条件に合うのであれば「経営環境変化対応資金」を活用するという方法もあります。

経営環境変化対応資金とは、社会的または経済的な外的環境が変化したことを原因として、一時的に業績が悪化しているが、中長期的には回復の見込みがあるという場合に融資を受けられる制度です。

基準金利で返済できるので、金利による負担が少ないのが魅力となっています。

ただし、日本政策金融公庫が設定している条件を満たしていないと申請できません。

また、こうした外部環境の変化は一度に多くの会社に対して影響するケースも多く、そうなると一度に大量の申請が出されるため、場合によっては審査に時間がかかる可能性があります。

さらに、設備資金については15年の返済期間になっていますが、運転資金の場合は返済期間が8年と比較的短く設定されていますので、早期の事業回復と綿密な返済計画を用意する必要があるので注意してください。

企業再建資金の活用

同じく日本政策金融公庫が主体となって融資を行っている「企業再建資金」を活用する方法もあります。

企業再建資金とは、一定の条件を受け入れることを条件として、企業の再建を図るうえで必要な設備資金および運転資金を融資するという制度です。

金利も低めであり、返済期間も15年~20年と長いため、返済の負担が抑えられているのもメリットになります。

ただし、特定の条件で融資を受ける場合には、大きな注意点があります。

融資の条件次第では特定の要件が定められている場合があり、それを満たしていないと判断されてしまうと繰上償還を求められたり、金利が引き上げられる(特別金利から基準金利に変更される)デメリットが存在するのです。

資金繰りもそうですが、すでに会社の経営が傾いている状況にある場合であれば、この制度を活用することによって会社の再建を目指すという選択肢も積極的に検討するべきでしょう。

資産の売却

会社に有益な資産があるのであれば、資金繰りのためにこれを売却するという選択肢も検討する必要があるでしょう。

ビジネスには、さまざまな事業用の設備や建物などを必要とします。

たとえば製品を生産するのであれば、工場が必要ですし、生産用の機械設備も大量に用意する必要があるでしょう。

こうした資産はビジネスの継続にとって必要不可欠な要素ではありますが、会社の資金繰りの改善のために手放す決断をしなければならない場面もあるのです。

たとえば、資金繰りが良くないということは経営判断が間違っているケースも多く、自社の事業を見直してみると不採算事業がいくつか見つかるケースも珍しくありません。

その場合、その事業から撤退することで経営をスリム化・合理化し、利益を確保することで財務体質を徐々に改善できる可能性があります。

その際、切り離した事業で使用していた不動産や設備があれば、すでに使わなくなることが明確になっていますので売却して現金化することで、短期的に資金繰りを改善可能です。

ただし、採算が取れている事業に必要な資産まで売却してしまうと、事業規模が縮小されてしまい、余計に資金繰りが悪化する可能性があります。

もちろん、事業の悪化が続けば重要な資産にも手を出さなければならないため、傷が浅いうちに重要度の低い資産から売却を検討し、早めに財務体質の改善を目指すことが重要です。

ファクタリング

回収できるまでに時間がかかる売掛金債権がある場合であれば、「ファクタリング」という方法を活用することも可能です。

ファクタリングとは、一言でいえば売掛金債権の買い取りであり、ファクタリング会社に売掛金債権を譲渡することで手数料を引かれた分を現金として受け取ることができます。

支払期日がまだ到来していない売掛金を現金化できるため、資金繰りを改善できます

また、ファクタリングは債権の売却であるため、融資と異なり返済の必要がなく、将来的な財務体質の悪化を回避できるのです。

ファクタリングは自社とファクタリング会社の2者間で行われる場合と、これに売掛金がある取引先を加えた3者間で行われる場合の2パターンがありますが、後者の場合は取引先に債権譲渡の存在が知られてしまいます。

ただし、すべての売掛金をファクタリング会社に売却できるわけではありません。

まず、取引先との間で「譲渡禁止」の特約が設定されている売掛金は、ファクタリング会社に売却できません。

また、申し込みの際にはファクタリング会社で審査が行われますが、不良債権(回収の見込みが乏しい債権)については買い取ってもらえません。

リースバック

先ほど「資産の売却」という話をしましたが、売却してしまうと自社の資産ではなくなるため、事業の継続に支障をきたすことになりかねません。

そこで利用されている手法の1つが「リースバック」です。

リースバックでは、主に建物などの不動産を業者に買い取ってもらい、売却代金を得て対象の不動産を賃借することで以降も自社のビジネスに利用するという方法となります。

この方法では売却代金によって短期間で財務体質を改善でき、しかも賃借することでビジネスの継続にも影響を及ぼしません。

賃借中は賃料を支払う必要がありますが、会社の経営が回復したら売却した不動産を買い戻すことも可能です。