特別清算とは?できる条件や破産との違いをわかりやすく解説

会社の負債が多くなってきた、資金繰りに四苦八苦している、こんな悩みを抱えた会社の経営者の中には、会社を整理しようと考えている方も多いでしょう。
しかし多額の負債のある会社では、単純に法人を解散すればよいというわけではなく、会社が抱えている債務を清算する必要があります。会社を清算する手続きでは破産が一般的ですが、特別清算という手続きを行えるケースもあります。特別清算とはどのような手続きでしょうか。破産とどこが違うのでしょうか。
本記事では、特別清算とは何か、破産との違いや手続きの流れなどを詳しく解説します。
特別清算とは債権者の同意を得て行う法的手続き
特別清算とは、債務超過状態にある会社を清算する倒産処理手続きです。本章では破産との違いや特別清算手続きを行う条件、手続きの種類について説明します。
特別清算と破産の違い

特別清算は、資金繰り状態が厳しく多額の負債を抱えている会社を清算する手続きであり、破産と同様に清算型倒産処理手続きです。
会社財産を債権者に分配する役割を担っているのは、特別清算では特別清算人であり、破産手続きでは破産管財人です。しかし、大きな違いは、手続きの根拠となる法律は特別清算では会社法であり、破産では破産法であることです。特別清算は株式会社しか利用できませんが、破産では個人あるいは株式会社以外の形態の法人でも利用できます。
また、手続きの開始原因が特別清算では「清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情がある場合」あるいは「債務超過の疑いがある場合」であるのに対し、破産では支払不能または債務超過である場合と異なります。さらに、債権者集会で債権者の同意が必要であることなど、債権者の関与が破産手続きよりも多くなります。
特別清算ができる条件は限定されている
特別清算を行える条件は限定されており、次の4条件を満たさなければなりません。
株式会社であること
会社法上、特別清算手続きを利用できるのは株式会社だけです。特例有限会社や合同会社や合資会社、個人事業主などは特別清算手続きを利用できません
債権者の3分の2以上の同意が得られること
債権者の頭数の過半数かつ総議決権額の3分の2以上の同意が必要です。破産手続きでは債権者の同意は要りませんが、特別清算では必要であり同意を得られなければ特別清算を行えません。
例えば、債権者の数が30社存在し、債権額の合計が300万円だとしましょう。このケースでは30社の過半数である16社、債権額は3分の2以上の200万円以上が必要となります。特別清算手続きを開始しても、必要な債権者の同意が得られないときは手続きを進められないため、途中で破産手続きに切り替えざるを得ません。
こうなると無駄に時間と労力を費やしてしまいます。債権者の同意を得られる可能性が薄いときは、最初から破産手続きを実施した方が良いでしょう。
株主の同意が得られること
特別清算手続きを行うには、債権者の同意を得る前に株主の同意を得ておかなければなりません。特別清算手続きを行う前提として株式会社を解散しなければならないからです。
会社法第309条第2項第11号に規定されているとおり、株式会社を解散することは特別決議事項となっているのです。特別決議を行うためには、発行済み株主株式総数の過半数の株式を有する株主が出席し、出席した株主の議決権数の3分の2以上の賛成が必要となります。
つまり少なくとも全株主の50%×3分の2以上の賛成が必要となり、株式を大量に保有している株主の反対がある場合や株主が特別決議に集まらない場合には、株式会社を解散できないため注意が必要です。
支払余力があり債権者に一定の弁済ができること
特別清算による手続をするためには、会社の資産から税金や社会保険料、労働債権等などを支払った後も支払余力があり、債権者に対し、未払いになっている債権の一部を弁済可能であることが必要です。
税金や社会保険料、労働債権等を支払えば会社の資産がなくなってしまい、債権者への弁済が全くできない場合は、特別清算手続によることはできません。
特別清算を検討すべき場面
特別清算を検討すべき代表的な場面として、子会社を清算するケースが挙げられます。親会社が子会社を清算するときには、親会社から子会社に貸付けし、外部からの借入れなどの負債を全て清算することがあります。
その結果、最終的に残った子会社から親会社への借金について、特別清算手続きを行うわけです。このような場合には、債権者である親会社は清算会社である子会社の株式の大半を所有しているため、特別清算手続きを行うことの同意も容易に得られます。したがって厳格な手続きが必要な破産手続きを行う必要性は乏しいといえます。
特別清算で簡易迅速に手続きを進められることは親会社にとって大きなメリットです。この他に特別清算を検討すべきケースとしては①収益の上がらない不採算事業部門を新設会社に移し、その後で当該新設会社を清算するケース、②事業譲渡した後で債権者の同意を得た上で譲渡会社を清算するケースなどがあります。
特別清算手続きは2種類
特別清算手続きには協定型と和解型の2種類があります。2パターンのうちいずれを選ぶかの基準は、①債権者の数、②債権者からの同意が得られる可能性の有無などです。債権者の数が少なく、同意を得られる見込みがあれば和解型を選んでもいいでしょう。
協定型
協定型は、債権者集会を行い債務の弁済方法についての協定を各債権者と行う手続きです。協定が債権者集会で可決されたときには、裁判所によって協定の許可を得て債務の弁済を行なっていきます。債権者集会で債務の弁済額や弁済の免除について協定を行います。可決要件を満たし、裁判所の許可を得れば、その協定に同意しなかった債権者であっても、その協定に拘束されます。協定案の可決要件は 議決権者の過半数の出席と、議決権総数の3分の2以上の同意です。
和解型
和解型は、裁判所の許可を得て、すべての債権者との個別の和解により会社の債務を清算する手続きです。基本的には親会社の税務対策として行われるケースが多くなっています。債権者数が少ない場合によく利用され、全債権者との間で個別に「債務の一部を弁済し残りの債務を免除する」といった内容について和解を行い、その和解について裁判所の許可を得る手続きです。
特別清算の流れを具体的に解説
特別清算の具体的な流れを、順を追って解説いたします。
弁護士と相談する
特別清算の手続は通常、弁護士に依頼して行います。まず、弁護士と相談し、特別清算をすべきか否か、手続を進めることについてのメリット、デメリットの解説を受けたうえで、判断することが重要です。
株主総会での解散決議
特別清算を行うことが決定したら、まず、株主総会を開催し、会社の解散を決議する必要があります。会社の解散は、「特別決議」で決めなければならず、過半数の株主が出席し、かつ3分の2以上の同意を得ることが必要です。また、従業員を整理解雇し、事務所を借りている場合は退去しなければなりません。
清算人が資産の売却などを進める
解散決議の後は清算人が特別清算の手続を進めていきます。清算人とは、会社解散後の清算事務を行う人を指します。多くの場合、清算人には清算会社の代表取締役や取締役あるいは会社が依頼した弁護士が就任します。会社の資産を売却して現金化し、まだ支払われていない取引債権があれば回収します。
債権の届け出を求める官報公告を行なう
官報公告により、債権者に会社の解散を知らせて、債権を届け出るよう促します。官報公告というのは、国の広報誌である官報に掲載することにより公に告知することです。また、会社が把握している債権者に対しては、官報公告とは別に、個別に債権届出を求める通知を送ることが義務付けられています。
裁判所に特別清算を申し立てる
下記の必要書類を準備して裁判所に特別清算を申し立てます。特別清算を申し立てると、裁判所が特別清算開始を決定します。
① 会社の登記事項証明書
② 財産目録等
解散の時点で作成した財産目録、貸借対照表について提出します。
A)財産目録・貸借対照表提出書
B)清算財産目録
C)清算貸借対照表および株主総会の承認決議の議事録写し
D) 貸借対照表及び損益計算書(直近2期分)
③ 株主名簿(解散時)、債権者及び債務者名簿(住所記載不要)
④ 債権申出催告の官報公告写し
⑤ 債権者の特別清算申立同意書
裁判実務では、申し立ての際に総債権額3分の2以上の債権者からの同意書提出が必要とされています。
⑥ 定款
⑦ 事業譲渡契約書または会社分割契約書写し(事業譲渡等をしていた場合)など
債権額を確定し裁判所に協定案を提出する
債権者からの届け出をもとに各債権者の債権額を確定させます。そのうえで、債権者との協定案を作成して裁判所に提出します。協定案には、現金化した会社の資産を原資に、債権者に対する債務について未払い額の何パーセントを支払うか(弁済率)や支払期日(弁済期日)を記載します。そして、協定による支払を終えた後は残りの債務は免除されることも協定案に記載します。
債権者集会で協定を可決し裁判所に協定を認可してもらう
協定案提出後に裁判所で債権者集会が開かれます。ここで、債権者の3分の2以上の同意を得て、協定を可決することが特別清算手続きにおいて最も重要です。そのうえで、協定案を裁判所に認可してもらいます。
協定に従って債権者に弁済をする
認可された協定内容どおりに債権者へ弁済します。
裁判所が終結決定を行い法人格が消滅する
協定に基づいた弁済が終了すると、裁判所が終結決定を行います。これで残りの債務は消滅し、また法人格も消滅します。
特別清算の費用相場は100〜200万円
中小企業の特別清算手続きでも費用は100万円以上になることが多くあります。本章では特別清算手続きにかかる費用について解説します。
裁判所に納める予納金は5万円程
予納金とは、特別清算を申立てするにあたり裁判所に納めるお金です。東京地方裁判所では協定型の特別清算手続きであれば5万円、和解型であれば9,632円に設定されています。
弁護士費用は100万円以上
特別清算にかかる費用として予納金の他に、特別清算を申し立てる際の弁護士費用が必要です。また、弁護士は特別清算申立て以外に、申立て前に資料を収集し債権者の同意を得るための活動を行い、特別清算を申し立てた後にも裁判所に協力し必要な交渉や折衝を行うなど、特別清算を成立させるために重要な役割を担っています。そのため弁護士に対する費用も100万円以上かかることが往々にしてあります。
特別清算のメリット3つ
本章では特別清算のメリットを3つ解説します。
手続きが簡易で期間がかからない
特別清算は、債権者の同意を得られるか否かが重要なポイントです。この点をクリアできれば、破産手続きより短時間で手続きを進められます。特別清算は破産手続きと比較して柔軟な対応が認められるため、債権者の同意を得やすい形で進められます。和解型の特別清算では、債権者からの同意が得られた場合は2~3カ月ほどで終結するケースもあります。
裁判所への費用を抑えられる
裁判所に支払う費用を抑えられることも、特別清算のメリットです。特別清算も破産も、裁判所に予納金を支払わなければなりませんが、破産の場合は数十万円から数百万円になることがあります。対して、特別清算では多くの場合5万円程度で済みます。
自社で清算人を選任できる
特別清算を行う清算人を会社が選任できることも、会社にとってはメリットです。会社の消滅に関する手続きを、自社の代表取締役や他の取締役ができる、あるいは自社の顧問弁護士に依頼できるのは安心です。これに対し破産手続きでは、裁判所が見ず知らずの弁護士が破産管財人に選任します。破産の場合、会社の事情を知らない人が手続きを行うことや、破産管財人への報酬など、会社にとっては不安な要素が多いです。
特別清算のデメリット4つ
本章では特別清算のデメリットを4つ解説します。
債権者が同意してくれない場合がある
特別清算を完了させるには下記の条件を満たす必要があります。
- 債権者の過半数の同意
- 総債権額の過半数の同意
協定案の内容に上記の同意を得られなければ特別清算はできません。
一定の支払い余力が必要となる
会社の資産から社会保険料や税金、労働債権などを支払っても、未払いの債権の一部を弁済できる余力が必要です。支払い余力が全くなくなってしまう場合は、特別清算手続きはできません。
債権額で債権者と揉めている
会社と債権者の間で、債権額における意見の対立がある場合は、特別清算の手続きができません。破産手続きであれば、債権額の意見が対立していても行えます。
株式会社以外は利用できない
特別清算を利用できるのは株式会社だけです。したがって合同会社や合名会社、特例有限会社などが清算型の法的整理を行うときは特別清算を利用できず、破産を選択することになります。
特別清算とは?できる条件や破産との違いをわかりやすく解説

会社の負債が多くなってきた、資金繰りに四苦八苦している、こんな悩みを抱えた会社の経営者の中には、会社を整理しようと考えている方も多いでしょう。
しかし多額の負債のある会社では、単純に法人を解散すればよいというわけではなく、会社が抱えている債務を清算する必要があります。会社を清算する手続きでは破産が一般的ですが、特別清算という手続きを行えるケースもあります。特別清算とはどのような手続きでしょうか。破産とどこが違うのでしょうか。
本記事では、特別清算とは何か、破産との違いや手続きの流れなどを詳しく解説します。
特別清算とは債権者の同意を得て行う法的手続き
特別清算とは、債務超過状態にある会社を清算する倒産処理手続きです。本章では破産との違いや特別清算手続きを行う条件、手続きの種類について説明します。
特別清算と破産の違い

特別清算は、資金繰り状態が厳しく多額の負債を抱えている会社を清算する手続きであり、破産と同様に清算型倒産処理手続きです。
会社財産を債権者に分配する役割を担っているのは、特別清算では特別清算人であり、破産手続きでは破産管財人です。しかし、大きな違いは、手続きの根拠となる法律は特別清算では会社法であり、破産では破産法であることです。特別清算は株式会社しか利用できませんが、破産では個人あるいは株式会社以外の形態の法人でも利用できます。
また、手続きの開始原因が特別清算では「清算の遂行に著しい支障をきたすべき事情がある場合」あるいは「債務超過の疑いがある場合」であるのに対し、破産では支払不能または債務超過である場合と異なります。さらに、債権者集会で債権者の同意が必要であることなど、債権者の関与が破産手続きよりも多くなります。
特別清算ができる条件は限定されている
特別清算を行える条件は限定されており、次の4条件を満たさなければなりません。
株式会社であること
会社法上、特別清算手続きを利用できるのは株式会社だけです。特例有限会社や合同会社や合資会社、個人事業主などは特別清算手続きを利用できません
債権者の3分の2以上の同意が得られること
債権者の頭数の過半数かつ総議決権額の3分の2以上の同意が必要です。破産手続きでは債権者の同意は要りませんが、特別清算では必要であり同意を得られなければ特別清算を行えません。
例えば、債権者の数が30社存在し、債権額の合計が300万円だとしましょう。このケースでは30社の過半数である16社、債権額は3分の2以上の200万円以上が必要となります。特別清算手続きを開始しても、必要な債権者の同意が得られないときは手続きを進められないため、途中で破産手続きに切り替えざるを得ません。
こうなると無駄に時間と労力を費やしてしまいます。債権者の同意を得られる可能性が薄いときは、最初から破産手続きを実施した方が良いでしょう。
株主の同意が得られること
特別清算手続きを行うには、債権者の同意を得る前に株主の同意を得ておかなければなりません。特別清算手続きを行う前提として株式会社を解散しなければならないからです。
会社法第309条第2項第11号に規定されているとおり、株式会社を解散することは特別決議事項となっているのです。特別決議を行うためには、発行済み株主株式総数の過半数の株式を有する株主が出席し、出席した株主の議決権数の3分の2以上の賛成が必要となります。
つまり少なくとも全株主の50%×3分の2以上の賛成が必要となり、株式を大量に保有している株主の反対がある場合や株主が特別決議に集まらない場合には、株式会社を解散できないため注意が必要です。
支払余力があり債権者に一定の弁済ができること
特別清算による手続をするためには、会社の資産から税金や社会保険料、労働債権等などを支払った後も支払余力があり、債権者に対し、未払いになっている債権の一部を弁済可能であることが必要です。
税金や社会保険料、労働債権等を支払えば会社の資産がなくなってしまい、債権者への弁済が全くできない場合は、特別清算手続によることはできません。
特別清算を検討すべき場面
特別清算を検討すべき代表的な場面として、子会社を清算するケースが挙げられます。親会社が子会社を清算するときには、親会社から子会社に貸付けし、外部からの借入れなどの負債を全て清算することがあります。
その結果、最終的に残った子会社から親会社への借金について、特別清算手続きを行うわけです。このような場合には、債権者である親会社は清算会社である子会社の株式の大半を所有しているため、特別清算手続きを行うことの同意も容易に得られます。したがって厳格な手続きが必要な破産手続きを行う必要性は乏しいといえます。
特別清算で簡易迅速に手続きを進められることは親会社にとって大きなメリットです。この他に特別清算を検討すべきケースとしては①収益の上がらない不採算事業部門を新設会社に移し、その後で当該新設会社を清算するケース、②事業譲渡した後で債権者の同意を得た上で譲渡会社を清算するケースなどがあります。
特別清算手続きは2種類
特別清算手続きには協定型と和解型の2種類があります。2パターンのうちいずれを選ぶかの基準は、①債権者の数、②債権者からの同意が得られる可能性の有無などです。債権者の数が少なく、同意を得られる見込みがあれば和解型を選んでもいいでしょう。
協定型
協定型は、債権者集会を行い債務の弁済方法についての協定を各債権者と行う手続きです。協定が債権者集会で可決されたときには、裁判所によって協定の許可を得て債務の弁済を行なっていきます。債権者集会で債務の弁済額や弁済の免除について協定を行います。可決要件を満たし、裁判所の許可を得れば、その協定に同意しなかった債権者であっても、その協定に拘束されます。協定案の可決要件は 議決権者の過半数の出席と、議決権総数の3分の2以上の同意です。
和解型
和解型は、裁判所の許可を得て、すべての債権者との個別の和解により会社の債務を清算する手続きです。基本的には親会社の税務対策として行われるケースが多くなっています。債権者数が少ない場合によく利用され、全債権者との間で個別に「債務の一部を弁済し残りの債務を免除する」といった内容について和解を行い、その和解について裁判所の許可を得る手続きです。
特別清算の流れを具体的に解説
特別清算の具体的な流れを、順を追って解説いたします。
弁護士と相談する
特別清算の手続は通常、弁護士に依頼して行います。まず、弁護士と相談し、特別清算をすべきか否か、手続を進めることについてのメリット、デメリットの解説を受けたうえで、判断することが重要です。
株主総会での解散決議
特別清算を行うことが決定したら、まず、株主総会を開催し、会社の解散を決議する必要があります。会社の解散は、「特別決議」で決めなければならず、過半数の株主が出席し、かつ3分の2以上の同意を得ることが必要です。また、従業員を整理解雇し、事務所を借りている場合は退去しなければなりません。
清算人が資産の売却などを進める
解散決議の後は清算人が特別清算の手続を進めていきます。清算人とは、会社解散後の清算事務を行う人を指します。多くの場合、清算人には清算会社の代表取締役や取締役あるいは会社が依頼した弁護士が就任します。会社の資産を売却して現金化し、まだ支払われていない取引債権があれば回収します。
債権の届け出を求める官報公告を行なう
官報公告により、債権者に会社の解散を知らせて、債権を届け出るよう促します。官報公告というのは、国の広報誌である官報に掲載することにより公に告知することです。また、会社が把握している債権者に対しては、官報公告とは別に、個別に債権届出を求める通知を送ることが義務付けられています。
裁判所に特別清算を申し立てる
下記の必要書類を準備して裁判所に特別清算を申し立てます。特別清算を申し立てると、裁判所が特別清算開始を決定します。
① 会社の登記事項証明書
② 財産目録等
解散の時点で作成した財産目録、貸借対照表について提出します。
A)財産目録・貸借対照表提出書
B)清算財産目録
C)清算貸借対照表および株主総会の承認決議の議事録写し
D) 貸借対照表及び損益計算書(直近2期分)
③ 株主名簿(解散時)、債権者及び債務者名簿(住所記載不要)
④ 債権申出催告の官報公告写し
⑤ 債権者の特別清算申立同意書
裁判実務では、申し立ての際に総債権額3分の2以上の債権者からの同意書提出が必要とされています。
⑥ 定款
⑦ 事業譲渡契約書または会社分割契約書写し(事業譲渡等をしていた場合)など
債権額を確定し裁判所に協定案を提出する
債権者からの届け出をもとに各債権者の債権額を確定させます。そのうえで、債権者との協定案を作成して裁判所に提出します。協定案には、現金化した会社の資産を原資に、債権者に対する債務について未払い額の何パーセントを支払うか(弁済率)や支払期日(弁済期日)を記載します。そして、協定による支払を終えた後は残りの債務は免除されることも協定案に記載します。
債権者集会で協定を可決し裁判所に協定を認可してもらう
協定案提出後に裁判所で債権者集会が開かれます。ここで、債権者の3分の2以上の同意を得て、協定を可決することが特別清算手続きにおいて最も重要です。そのうえで、協定案を裁判所に認可してもらいます。
協定に従って債権者に弁済をする
認可された協定内容どおりに債権者へ弁済します。
裁判所が終結決定を行い法人格が消滅する
協定に基づいた弁済が終了すると、裁判所が終結決定を行います。これで残りの債務は消滅し、また法人格も消滅します。
特別清算の費用相場は100〜200万円
中小企業の特別清算手続きでも費用は100万円以上になることが多くあります。本章では特別清算手続きにかかる費用について解説します。
裁判所に納める予納金は5万円程
予納金とは、特別清算を申立てするにあたり裁判所に納めるお金です。東京地方裁判所では協定型の特別清算手続きであれば5万円、和解型であれば9,632円に設定されています。
弁護士費用は100万円以上
特別清算にかかる費用として予納金の他に、特別清算を申し立てる際の弁護士費用が必要です。また、弁護士は特別清算申立て以外に、申立て前に資料を収集し債権者の同意を得るための活動を行い、特別清算を申し立てた後にも裁判所に協力し必要な交渉や折衝を行うなど、特別清算を成立させるために重要な役割を担っています。そのため弁護士に対する費用も100万円以上かかることが往々にしてあります。
特別清算のメリット3つ
本章では特別清算のメリットを3つ解説します。
手続きが簡易で期間がかからない
特別清算は、債権者の同意を得られるか否かが重要なポイントです。この点をクリアできれば、破産手続きより短時間で手続きを進められます。特別清算は破産手続きと比較して柔軟な対応が認められるため、債権者の同意を得やすい形で進められます。和解型の特別清算では、債権者からの同意が得られた場合は2~3カ月ほどで終結するケースもあります。
裁判所への費用を抑えられる
裁判所に支払う費用を抑えられることも、特別清算のメリットです。特別清算も破産も、裁判所に予納金を支払わなければなりませんが、破産の場合は数十万円から数百万円になることがあります。対して、特別清算では多くの場合5万円程度で済みます。
自社で清算人を選任できる
特別清算を行う清算人を会社が選任できることも、会社にとってはメリットです。会社の消滅に関する手続きを、自社の代表取締役や他の取締役ができる、あるいは自社の顧問弁護士に依頼できるのは安心です。これに対し破産手続きでは、裁判所が見ず知らずの弁護士が破産管財人に選任します。破産の場合、会社の事情を知らない人が手続きを行うことや、破産管財人への報酬など、会社にとっては不安な要素が多いです。
特別清算のデメリット4つ
本章では特別清算のデメリットを4つ解説します。
債権者が同意してくれない場合がある
特別清算を完了させるには下記の条件を満たす必要があります。
- 債権者の過半数の同意
- 総債権額の過半数の同意
協定案の内容に上記の同意を得られなければ特別清算はできません。
一定の支払い余力が必要となる
会社の資産から社会保険料や税金、労働債権などを支払っても、未払いの債権の一部を弁済できる余力が必要です。支払い余力が全くなくなってしまう場合は、特別清算手続きはできません。
債権額で債権者と揉めている
会社と債権者の間で、債権額における意見の対立がある場合は、特別清算の手続きができません。破産手続きであれば、債権額の意見が対立していても行えます。
株式会社以外は利用できない
特別清算を利用できるのは株式会社だけです。したがって合同会社や合名会社、特例有限会社などが清算型の法的整理を行うときは特別清算を利用できず、破産を選択することになります。