企業再生とは?条件や手法などを事例も交えて解説

企業再生とは?条件や手法などを事例も交えて解説

「企業再生とは何か」

「どのような条件や手法があるのか」

「実際の事例を知りたい」

経営不振の会社を立て直したいと考えている方は、上記のような疑問を抱えているのではないでしょうか。

企業再生は、経営不振に陥った企業が再び健全な経営状態に戻るための一連の取り組みです。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。債務の圧縮、経営体制の見直し、事業の再編など、多岐にわたる課題に直面します。

この記事では、企業再生の基本から具体的な手法、実際の成功や失敗事例などを詳しく解説します。

企業再生とは経営不振の原因を排除し復活させること

企業再生とは

企業再生とは、経営不振の原因を取り除き、企業を健全な状態に戻す一連の取り組みです。

企業再生の内容には、法的整理私的整理専門家の協力を得た経営戦略の見直し・財務改善・事業再編などが含まれます。

企業再生は会社清算より多くのメリットを生むことがある

経営不振に陥った会社は、廃業して清算するか、または企業再生に取り組むかの選択を迫られます。どちらがよいかは状況によりますが、企業再生に成功すれば多くのメリットを得ることができます。

企業再生の主なメリットとしては、雇用の維持や経営者の収入確保、債権者への返済の最大化などが挙げられます。まず、企業再生により従業員の雇用を守ることができます。

また、経営者が退任せずに続投する場合には、経営者は引き続き収入を得ることができます。また、企業が破産する場合は代表者も連鎖的に破産するケースが多いですが、企業再生に成功すれば代表者の個人破産を避けられるケースが多いです。

さらに、企業再生に成功すれば、破産を選択する場合に比べて、より多くの金額を債権者に返済することができます。

このように、可能であれば企業再生を選択することで、廃業・清算を選択する場合よりも多くのメリットを享受できます。経営不振に陥った企業の経営者は、企業再生の可能性を模索しましょう。

企業再生と事業再生の違い

企業再生に似た言葉として「事業再生」があります。

企業再生と事業再生は、どちらも法律上定義された用語ではなく、実務上も明確に区別されているわけではありません。いずれも不振に陥った企業(あるいは企業が行う事業)を立て直す一連の取り組みを意味すると理解すればよいでしょう。

企業再生の進め方を順に解説

企業再生は、経営不振の原因を徹底的に分析し、具体的な改善策を計画・実行して、企業を再び健全な経営状態に戻す取り組みです。

これらの取り組みにより、企業は持続可能な成長を取り戻し、従業員や取引先などの関係者への影響を最小限に抑えられます。

企業再生の手順は、大まかに以下のとおりです。

  1. 現状分析
    経営不振の原因を徹底的に分析します。財務状況・経営体制・市場環境・競合状況などを詳しく調査します。
  2. 改善計画の策定
    分析結果を基に、具体的な改善策を計画します。事業戦略の見直し・コスト削減・マーケティング戦略の強化などが含まれます。
  3. 実行とモニタリング
    改善計画を実行し、その進捗を継続的にモニタリングします。また、モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて改善計画の修正を行います。
  4. 評価と改善
    実行した改善策の効果を評価します。目標達成度や新たな課題を確認し、さらなる改善策を講じます。

企業再生は、徹底的な現状分析と具体的な改善計画の策定、継続的なモニタリングと評価・改善によって進められます。

企業再生ができる5つの条件

企業再生ができる5つの条件

企業再生を成功させるためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。

これらの条件が整えば、企業再生の成功によって、企業は再び成長軌道に乗ることができる可能性があります。

企業再生を成功させるための条件としては、主に以下の5つが挙げられます。

  • 負債の圧縮で資金繰りを正常化できる見込みがあること
  • 債権者の協力が得られること
  • 事業内容に需要や社会的意義があること
  • 経営者や再生の意欲があること
  • 実現可能性が高い改善計画であること

負債の圧縮で資金繰りを正常化できる見込みがあること

企業再生が成功するためには、負債の圧縮によって資金繰りを正常化できる見込みあることが重要です。

資金繰りが改善されなければ、企業再生は成功しません。

経営難に陥った企業が再生するためには、まず負債を減らすことが必要です。

負債が減れば、毎月の返済負担が軽減され、キャッシュフローの改善が期待できます

負債の圧縮による資金繰りの改善は、経営基盤の安定と持続的な成長に繋がるため、企業再生における不可欠の要素といえます。

債権者の協力が得られること

債権者の支援なくしては、資金繰りや再生計画の実行が困難となり、企業再生の実現は難しくなります。

企業の債務を圧縮する手続きは、法的整理私的整理の二つに大別されますが、どちらの場合も債権者の同意と協力を得ることが重要な要素となります。

また、債権者との信頼関係を築き、協力を取り付けることで、企業再生の過程で新たな資金援助を受けられ、再生プロセスが円滑に進みます。

企業再生に取り組む際は、債権者との対話を大切にし、債権者の理解と協力を得るための努力を惜しまないことが重要です。

事業内容に需要や社会的意義があること

企業再生が成功するためには、事業内容に需要や社会的意義があることが重要です。

需要がある事業は、スピーディな収益の回復が期待できます。反対に、需要がなければ収益がなかなか回復せず、企業再生の過程で頓挫してしまう可能性が高いでしょう。

また、事業が社会にとって重要な役割を果たしている場合、企業再生への支援や協力を得やすくなります。

例えば、地域のインフラを支える企業や、雇用を創出する企業は高く評価され、スムーズに企業再生を進められる可能性が高いでしょう。

経営者に再生の意欲があること

企業再生が成功するためには、経営者が強い再生意欲を有していることが不可欠です。

企業再生の取り組みは厳しいものであり、経営者の強いリーダーシップが求められます。

経営者が強い意欲と改革に向けた具体的な取り組みを示すことで、従業員のモチベーションが向上し、一致団結が生まれます。

また、経営者の決意が債権者や取引先に伝われば、協力を得やすくなります。

さらに、意欲的な経営者は困難な決断や計画の実行に対する抵抗が少なく、迅速な行動が可能です。

既存の経営陣に十分な再生意欲がない場合は、外部から経営者を招聘することも検討すべきでしょう。

実現可能性が高い改善計画であること

企業再生を成功させるためには、実現可能性の高い改善計画が必要です。

現実的かつ具体的な改善計画を策定すれば、企業再生を効果的に進める基本的な指針となります。

改善計画において実現可能な目標を設定することで、関係者からの信頼も得やすくなります。

また、改善計画の中に具体的な行動計画を定めることで、実行段階での混乱を防ぎ、スムーズな進行が可能となります。

改善計画の実現可能性を維持するためには、企業再生の過程における見直しも重要です。計画の進行状況を定期的に見直し、必要に応じて改善することで、具体的な状況に即した実現可能性を確保しましょう。

企業再生の手法とメリットやデメリットを解説

企業再生のプロセスでは、企業の債務を圧縮することが必要不可欠です。

債務を圧縮する手続きは、法的整理と私的整理の2つに大別され、それぞれにメリットとデメリットがあります。

法的整理と私的整理の手法とメリット・デメリットを解説します。

  • 法的整理の2つの手法をわかりやすく解説
  • 法的整理のメリットとデメリット
  • 私的整理の5つの手法をわかりやすく解説
  • 私的整理のメリットとデメリット

法的整理の2つの手法をわかりやすく解説

企業再生の法的整理には、「民事再生」「会社更生」の2つの手法があります。

法的整理は、法律のルールと裁判手続きに従って行われるため、公平性が担保され、債権者の理解と協力を得やすくなります。

ここでは、民事再生と会社更生の2つの手法を解説します。

民事再生

民事再生は、支払不能または債務超過のおそれが生じた企業につき、再生計画に基づき債務を圧縮して経営再建を目指す法的整理手続きです。

民事再生では、現経営陣が引き続き経営を行うことを原則としますが、退任させて新経営陣を選任するケースもあります。

民事再生は、会社更生に比べて費用を抑えつつ行うことができます。現経営陣の続投が可能な点も含めて、中小企業の再生にも適した手続きといえるでしょう。

会社更生

会社更生は、支払不能または債務超過のおそれが生じた企業につき、更生計画に基づく抜本的な改革を行って経営再建を目指す法的整理手続きです。

会社更生では、民事再生とは異なり、既存経営陣の退任が必須とされています。会社更生を行う企業は、新経営陣の下で再生を目指すことになります。

また、担保権や株主権を変更できる点も、会社更生の大きな特徴です。民事再生と比べても、会社更生は強力な手続きであり、抜本的な企業再生に繋がります。

会社更生には非常に多額の費用がかかるため、基本的には大企業に向いている手続きといえます。

法的整理のメリットとデメリット

法的整理には、裁判所の関与によって公正性が担保される一方、手続きの公開による企業イメージの低下や費用の増加といったデメリットがあります。

企業の状況に応じて、メリットとデメリットを慎重に比較することが重要です。

【メリット】

公正性・透明性の確保:裁判所の関与により、公正かつ透明な形で手続きが行われるため、債権者の理解を得やすい

多数決による決定:債権者数や債権額に応じた多数決で再生計画が承認されるため、一部の債権者の反対があっても債務の圧縮などが可能

法的保護:強制執行の停止などによって債務者の資産が法的に保護されるため、再生計画の実行がスムーズに進む

【デメリット】

企業イメージの低下:法的整理の事実が官報公告されることで、企業イメージが悪化する可能性がある

費用の増加:裁判所に納付する手続き費用や専門家への依頼費用が発生するため、コストがかかる

取引先への影響:主要取引先との取引停止や取引量の減少など、営業活動に支障をきたす可能性がある

私的整理の5つの手法をわかりやすく解説

私的整理は、裁判所の関与を避け、債権者との協議を通じて債務の圧縮を行う手法です。

柔軟で迅速に債務を圧縮できる可能性がありますが、手続きの透明性に欠ける点や債権者間の不公平が生じる点などを理由に、債権者の同意をスムーズに得られないリスクもあります

ここでは、私的整理の5つの手法をわかりやすく解説します。

私的整理ガイドライン

私的整理ガイドラインは、私的整理を行う際に従うべき基準を定めたガイドラインです。金融機関は私的整理ガイドラインを尊重する傾向にあり、その内容に従うことでスムーズな私的整理が期待できます。

私的整理ガイドラインに基づく私的整理は、主要債権者である金融機関などを参加させて行うため、成功すれば大幅に債務を圧縮することができます。

参考:全国銀行協会の「私的整理ガイドライン」

中小企業再生支援スキーム

中小企業再生支援スキームは、中小企業が経営再建を図るために設けられた制度で、公的な支援機関が企業の財務改善や経営再建を支援します。

中小企業再生支援スキームは制度化されているため、私的整理の中でも透明性・公正性が確保されます。

また、スキーム内において弁護士や会計士などの専門家によるサポートを受けることもできます。私的整理ガイドラインや事業再生ADRなど、他の私的整理手法と連携できる点も大きな特徴です。

参考:中小企業庁「中小企業再生支援スキーム」

REVICによる事業再生支援

REVIC(株式会社地域経済活性化支援機構)は、地域の中核となる企業を中心に事業再生を支援しています。

REVICは国が設立した公的・中立的な機関であるため、私的整理の中では透明性と信頼性が高い手続きの一つといえます。

また、金融、経営、法務の専門家と連携し、企業の財務状況を詳細に分析して最適な再生計画を策定できる点や、債務整理・資本増強・事業再構築など、多様な手法を組み合わせて支援を受けられる点も大きな特徴です。

特定認証ADR手続き(事業再生ADR)

特定認証ADR手続き(事業再生ADR)は、裁判外紛争解決手続(ADR)の一つであり、裁判所を通さずに債権者と債務者の合意を図る方法です。

事業再生ADRを取り扱うのは、専門的知識を有する会員で構成される「一般社団法人事業再生実務家協会」という第三者機関です。公的・中立的な機関の関与により、公正かつ透明な形で私的整理を進めることができます。

また事業再生ADRにおいては、産業競争力強化法に基づいてつなぎ融資債権が優遇されているため、金融機関からつなぎ融資を受けやすいという特徴があります。

企業再生ファンド

企業再生ファンドは、投資家から集めた資金を用いて、経営不振に陥った企業の再建を行うファンドです。

公的な制度である事業再生ADRなどとは異なり、企業再生ファンドは民間資金を活用している点が大きな特徴です。迅速性・柔軟性に長けており、大規模な資金調達も行い得る一方で、ファンドによる強い経営介入を受けるのが難点といえます。

私的整理のメリットとデメリット

私的整理には、裁判所の関与を避けて債権者と直接協議することで、柔軟かつ迅速に債務を圧縮できるメリットがあります。

また、非公開で手続きが進められるため、法的整理に比べると企業イメージへの悪影響を回避しやすいことのメリットの一つです。

ただし、手続きの透明性や債権者間の公平性確保については課題があるため、私的整理を進めるに当たっては慎重な対応が求められます。

また、私的整理に参加する債権者については、そのすべての同意を得なければなりません。法的整理では反対債権者との間でも債権カットが認められ得るのに対して、私的整理では債権者の同意を得ることがいっそう重要になります。

また、私的整理の具体的な各手法には、それぞれに固有のメリットとデメリットがあります。

私的整理ガイドライン
メリット:経団連や全国銀行協会が認定した一般的な指針として広く受け入れられており、金融機関を中心とした債権者の協力を得やすい。
デメリット:支配株主の権利の消滅および既存株主の割合的地位の減少・消滅、ならびに経営者の退任が原則とされているため、オーナー経営者の影響力は大幅に失われる。

中小企業再生支援スキーム
メリット:中立的な第三者機関である中小企業再生支援協議会が支援するため、透明性と公正性が確保される。
デメリット:再建計画に関する数値基準が厳しい。

REVICによる事業再生支援
メリット:中立的な第三者機関であるREVICが関与するため、透明性と公正性が確保される。
デメリット:大規模な事業者(資本金の額または出資の総額が5億円を超え、かつ常時使用する従業員の数が1000人を超える事業者)は利用できない。

事業再生ADR
メリット:中立的な第三者機関が介入し、非公開で柔軟に再生を進められる。金融機関からのつなぎ融資を受けやすい。
デメリット:数千万円から1億円程度の高額な費用がかかる。

企業再生ファンド
メリット:民間投資家の資金を活用できるため、大規模な資金調達も実行し得る。
デメリット:投資家の意向に左右されるため、企業の独自性が失われる可能性がある。

私的整理に共通するメリット・デメリットや、各手法に固有のメリットとデメリットを踏まえて、企業の状況に応じて適切な手法を選択することが重要です。

M&Aによる企業再生2つの方法

「M&A」とは、企業や企業が行う事業を売買する取引を意味します。M&Aは、企業再生の一環として行われることもあります。

企業再生において用いられるM&A手法には、主に事業譲渡と会社分割の2つがあり、それぞれの企業の状況や再生目標に応じて選択されます。

M&Aによる企業再生の2つの手法を解説します。

  • 事業譲渡
  • 会社分割

事業譲渡

事業譲渡とは、企業が行う事業の一部を他社へ譲渡することをいいます。企業再生の場面では、採算事業をスポンサー企業に譲渡し、不採算事業を清算する手法が主に採用されています(=第二会社方式)。

事業譲渡を通じた企業再生は、企業の健全な部分を存続させつつ、不採算部門を削ぎ落して負債の削減等を図るために有効です。不採算部門については清算を行うことになりますが、採算部門については煩雑な法的手続きを要することなく、スムーズに事業を継続することができます。

特に中小企業の再生においては、事業譲渡が多く利用されています。

会社分割

会社分割とは、会社の一部を分離して他社に承継させることをいいます。事業再生と同様に、採算部門を会社分割によって他社に承継させ、残った不採算部門を清算する手法がよく用いられます(=第二会社方式)。

会社分割の特徴は、分割対象となる事業に関する権利義務を包括的に承継できる点です。個別に承継手続きが必要な事業譲渡に比べて、スムーズに採算部門の承継を完了できます。

ただし、会社分割に当たっては、会社法で定められた複雑な手続きを経る必要があるため、専門家のサポートが必要不可欠です。

企業再生を進める際のポイントや注意点

企業再生を成功させるためには、適切な手法を選択し、計画的かつ柔軟に対応することが不可欠です。

企業再生の取り組みにおいては、専門家の協力を得ることや、従業員のモチベーションを維持するための施策が重要です。

また、業務改善を優先し、人員整理は最終手段とすることが望まれます。

企業再生を進める際のポイントや注意点を解説します。

  • 弁護士や企業再生コンサルなど専門家の協力を得る
  • 業務改善を優先し人員整理は最終手段とする

弁護士や企業再生コンサルなど専門家の協力を得る

企業再生の過程では、法的および財務的な専門知識が必要になります。

そのため、企業再生を成功させるには、弁護士や企業再生コンサルタントなどの専門家の協力が不可欠です。

弁護士の協力を得ることで、法的整理や私的整理による債務の圧縮を適切かつスムーズに進めることができます。

企業再生コンサルタントに依頼すれば、企業の財務状況を詳細に分析し、実現可能な再生計画を策定してもらえます。

このように、専門家の支援を得ることで、企業再生が成功する可能性が大いに高まります

業務改善を優先し人員整理は最終手段とする

企業再生においては、業務改善を最優先し、人員整理は最終手段とすることが重要です。

業務改善に成功すれば、経費節減および生産性の上昇によって業績の向上が期待できます。従業員の残業時間も減り、労働の負担軽減に繋がるでしょう。

また、人員整理を避けることで従業員の不安を和らげ、モチベーションを維持できます。従業員の協力を得ることができれば、企業文化が維持され、企業再生の過程でも一体感を持って業務に取り組めます。

このように、人員整理を極力回避しつつ業務改善を推進すれば、経費削減と生産性向上を図りつつ従業員の士気を維持することができ、企業の持続的な成長を取り戻すことに繋がります。

企業再生の具体的な事例を2つ紹介

企業再生に関する成功事例と失敗事例を分析することは、実際に企業再生へ取り組む上での重要なポイントや注意点に関するよりよい理解の助けとなります。

企業再生の具体的な事例を2つ紹介します。

  • 企業再生に成功した日本航空
  • 企業再生に失敗したレナウン

企業再生に成功した日本航空

日本航空(JAL)は経営破綻後、徹底したリストラと事業再構築を行い、企業再生に成功しました。

大規模な債務削減や公的資金の注入により、短期間で再上場を果たし、経営基盤の強化にも成功しています。

日本航空は2010年に会社更生法の適用を受け、5000億円以上の債権放棄を通じて債務の圧縮を行い、3500億円の公的資金の出資を受けて資金繰りを安定させました。

さらに不採算事業の売却や大型機の処分、大規模なリストラを実施し、経費削減を図っています。

これらの再建計画は、企業再生支援機構の支援の下で策定され、計画的に実行されました。

日本航空の企業再生の成功には、法的整理手続き・公的資金の注入・事業構造の改革・専門家の協力などが大きく寄与しています。

これらの要素を適切に組み合わせることで、大企業であるにもかかわらず短期間での再生が可能となりました。

企業再生に失敗したレナウン

レナウンは民事再生手続きを通じて企業再生に取り組みましたが、経営改善に失敗し、最終的に破産手続きに移行しました。

レナウンの企業再生が失敗した原因は、不採算事業の整理や新型コロナウイルスの影響に適切に対応できなかったためと考えられます。

バブル崩壊後、高価格帯衣料品の需要が急激に低下し、レナウンの経営は悪化しました。

消費者の嗜好が変化し、レナウンの製品が市場での競争力を失ったことも一因です。

また、適切なタイミングでの人員削減や不採算事業の整理が行えず、コスト削減が不十分でした。

2020年5月に民事再生法の適用を受けましたが、市場環境のさらなる悪化により再生計画は進行せず、同年10月に破産手続きへと移行しました。

レナウンの企業再生においては、買収スキームや譲渡代金についての交渉がまとまらなかったために包括的なスポンサーが付かなかったことが、失敗の主要因と考えられます。

再生計画の実効性と市場環境への適応力などが、市場から十分に評価されなかったことの帰結といえるでしょう。

企業再生を成功させるには、適切なタイミングでのリストラや現実的な計画の策定、具体的な戦略の実行などが求められます。

さらに、市場の変化を見極めつつ柔軟に対応することも、企業再生の可能性を高めるための重要なポイントです。

監修者

阿部 由羅(あべ ゆら)先生

2016年12月 弁護士登録(69期)

ゆら総合法律事務所

企業再生とは?条件や手法などを事例も交えて解説

企業再生とは?条件や手法などを事例も交えて解説

「企業再生とは何か」

「どのような条件や手法があるのか」

「実際の事例を知りたい」

経営不振の会社を立て直したいと考えている方は、上記のような疑問を抱えているのではないでしょうか。

企業再生は、経営不振に陥った企業が再び健全な経営状態に戻るための一連の取り組みです。しかし、その道のりは決して平坦ではありません。債務の圧縮、経営体制の見直し、事業の再編など、多岐にわたる課題に直面します。

この記事では、企業再生の基本から具体的な手法、実際の成功や失敗事例などを詳しく解説します。

企業再生とは経営不振の原因を排除し復活させること

企業再生とは

企業再生とは、経営不振の原因を取り除き、企業を健全な状態に戻す一連の取り組みです。

企業再生の内容には、法的整理私的整理専門家の協力を得た経営戦略の見直し・財務改善・事業再編などが含まれます。

企業再生は会社清算より多くのメリットを生むことがある

経営不振に陥った会社は、廃業して清算するか、または企業再生に取り組むかの選択を迫られます。どちらがよいかは状況によりますが、企業再生に成功すれば多くのメリットを得ることができます。

企業再生の主なメリットとしては、雇用の維持や経営者の収入確保、債権者への返済の最大化などが挙げられます。まず、企業再生により従業員の雇用を守ることができます。

また、経営者が退任せずに続投する場合には、経営者は引き続き収入を得ることができます。また、企業が破産する場合は代表者も連鎖的に破産するケースが多いですが、企業再生に成功すれば代表者の個人破産を避けられるケースが多いです。

さらに、企業再生に成功すれば、破産を選択する場合に比べて、より多くの金額を債権者に返済することができます。

このように、可能であれば企業再生を選択することで、廃業・清算を選択する場合よりも多くのメリットを享受できます。経営不振に陥った企業の経営者は、企業再生の可能性を模索しましょう。

企業再生と事業再生の違い

企業再生に似た言葉として「事業再生」があります。

企業再生と事業再生は、どちらも法律上定義された用語ではなく、実務上も明確に区別されているわけではありません。いずれも不振に陥った企業(あるいは企業が行う事業)を立て直す一連の取り組みを意味すると理解すればよいでしょう。

企業再生の進め方を順に解説

企業再生は、経営不振の原因を徹底的に分析し、具体的な改善策を計画・実行して、企業を再び健全な経営状態に戻す取り組みです。

これらの取り組みにより、企業は持続可能な成長を取り戻し、従業員や取引先などの関係者への影響を最小限に抑えられます。

企業再生の手順は、大まかに以下のとおりです。

  1. 現状分析
    経営不振の原因を徹底的に分析します。財務状況・経営体制・市場環境・競合状況などを詳しく調査します。
  2. 改善計画の策定
    分析結果を基に、具体的な改善策を計画します。事業戦略の見直し・コスト削減・マーケティング戦略の強化などが含まれます。
  3. 実行とモニタリング
    改善計画を実行し、その進捗を継続的にモニタリングします。また、モニタリングの結果を踏まえ、必要に応じて改善計画の修正を行います。
  4. 評価と改善
    実行した改善策の効果を評価します。目標達成度や新たな課題を確認し、さらなる改善策を講じます。

企業再生は、徹底的な現状分析と具体的な改善計画の策定、継続的なモニタリングと評価・改善によって進められます。

企業再生ができる5つの条件

企業再生ができる5つの条件

企業再生を成功させるためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。

これらの条件が整えば、企業再生の成功によって、企業は再び成長軌道に乗ることができる可能性があります。

企業再生を成功させるための条件としては、主に以下の5つが挙げられます。

  • 負債の圧縮で資金繰りを正常化できる見込みがあること
  • 債権者の協力が得られること
  • 事業内容に需要や社会的意義があること
  • 経営者や再生の意欲があること
  • 実現可能性が高い改善計画であること

負債の圧縮で資金繰りを正常化できる見込みがあること

企業再生が成功するためには、負債の圧縮によって資金繰りを正常化できる見込みあることが重要です。

資金繰りが改善されなければ、企業再生は成功しません。

経営難に陥った企業が再生するためには、まず負債を減らすことが必要です。

負債が減れば、毎月の返済負担が軽減され、キャッシュフローの改善が期待できます

負債の圧縮による資金繰りの改善は、経営基盤の安定と持続的な成長に繋がるため、企業再生における不可欠の要素といえます。

債権者の協力が得られること

債権者の支援なくしては、資金繰りや再生計画の実行が困難となり、企業再生の実現は難しくなります。

企業の債務を圧縮する手続きは、法的整理私的整理の二つに大別されますが、どちらの場合も債権者の同意と協力を得ることが重要な要素となります。

また、債権者との信頼関係を築き、協力を取り付けることで、企業再生の過程で新たな資金援助を受けられ、再生プロセスが円滑に進みます。

企業再生に取り組む際は、債権者との対話を大切にし、債権者の理解と協力を得るための努力を惜しまないことが重要です。

事業内容に需要や社会的意義があること

企業再生が成功するためには、事業内容に需要や社会的意義があることが重要です。

需要がある事業は、スピーディな収益の回復が期待できます。反対に、需要がなければ収益がなかなか回復せず、企業再生の過程で頓挫してしまう可能性が高いでしょう。

また、事業が社会にとって重要な役割を果たしている場合、企業再生への支援や協力を得やすくなります。

例えば、地域のインフラを支える企業や、雇用を創出する企業は高く評価され、スムーズに企業再生を進められる可能性が高いでしょう。

経営者に再生の意欲があること

企業再生が成功するためには、経営者が強い再生意欲を有していることが不可欠です。

企業再生の取り組みは厳しいものであり、経営者の強いリーダーシップが求められます。

経営者が強い意欲と改革に向けた具体的な取り組みを示すことで、従業員のモチベーションが向上し、一致団結が生まれます。

また、経営者の決意が債権者や取引先に伝われば、協力を得やすくなります。

さらに、意欲的な経営者は困難な決断や計画の実行に対する抵抗が少なく、迅速な行動が可能です。

既存の経営陣に十分な再生意欲がない場合は、外部から経営者を招聘することも検討すべきでしょう。

実現可能性が高い改善計画であること

企業再生を成功させるためには、実現可能性の高い改善計画が必要です。

現実的かつ具体的な改善計画を策定すれば、企業再生を効果的に進める基本的な指針となります。

改善計画において実現可能な目標を設定することで、関係者からの信頼も得やすくなります。

また、改善計画の中に具体的な行動計画を定めることで、実行段階での混乱を防ぎ、スムーズな進行が可能となります。

改善計画の実現可能性を維持するためには、企業再生の過程における見直しも重要です。計画の進行状況を定期的に見直し、必要に応じて改善することで、具体的な状況に即した実現可能性を確保しましょう。

企業再生の手法とメリットやデメリットを解説

企業再生のプロセスでは、企業の債務を圧縮することが必要不可欠です。

債務を圧縮する手続きは、法的整理と私的整理の2つに大別され、それぞれにメリットとデメリットがあります。

法的整理と私的整理の手法とメリット・デメリットを解説します。

  • 法的整理の2つの手法をわかりやすく解説
  • 法的整理のメリットとデメリット
  • 私的整理の5つの手法をわかりやすく解説
  • 私的整理のメリットとデメリット

法的整理の2つの手法をわかりやすく解説

企業再生の法的整理には、「民事再生」「会社更生」の2つの手法があります。

法的整理は、法律のルールと裁判手続きに従って行われるため、公平性が担保され、債権者の理解と協力を得やすくなります。

ここでは、民事再生と会社更生の2つの手法を解説します。

民事再生

民事再生は、支払不能または債務超過のおそれが生じた企業につき、再生計画に基づき債務を圧縮して経営再建を目指す法的整理手続きです。

民事再生では、現経営陣が引き続き経営を行うことを原則としますが、退任させて新経営陣を選任するケースもあります。

民事再生は、会社更生に比べて費用を抑えつつ行うことができます。現経営陣の続投が可能な点も含めて、中小企業の再生にも適した手続きといえるでしょう。

会社更生

会社更生は、支払不能または債務超過のおそれが生じた企業につき、更生計画に基づく抜本的な改革を行って経営再建を目指す法的整理手続きです。

会社更生では、民事再生とは異なり、既存経営陣の退任が必須とされています。会社更生を行う企業は、新経営陣の下で再生を目指すことになります。

また、担保権や株主権を変更できる点も、会社更生の大きな特徴です。民事再生と比べても、会社更生は強力な手続きであり、抜本的な企業再生に繋がります。

会社更生には非常に多額の費用がかかるため、基本的には大企業に向いている手続きといえます。

法的整理のメリットとデメリット

法的整理には、裁判所の関与によって公正性が担保される一方、手続きの公開による企業イメージの低下や費用の増加といったデメリットがあります。

企業の状況に応じて、メリットとデメリットを慎重に比較することが重要です。

【メリット】

公正性・透明性の確保:裁判所の関与により、公正かつ透明な形で手続きが行われるため、債権者の理解を得やすい

多数決による決定:債権者数や債権額に応じた多数決で再生計画が承認されるため、一部の債権者の反対があっても債務の圧縮などが可能

法的保護:強制執行の停止などによって債務者の資産が法的に保護されるため、再生計画の実行がスムーズに進む

【デメリット】

企業イメージの低下:法的整理の事実が官報公告されることで、企業イメージが悪化する可能性がある

費用の増加:裁判所に納付する手続き費用や専門家への依頼費用が発生するため、コストがかかる

取引先への影響:主要取引先との取引停止や取引量の減少など、営業活動に支障をきたす可能性がある

私的整理の5つの手法をわかりやすく解説

私的整理は、裁判所の関与を避け、債権者との協議を通じて債務の圧縮を行う手法です。

柔軟で迅速に債務を圧縮できる可能性がありますが、手続きの透明性に欠ける点や債権者間の不公平が生じる点などを理由に、債権者の同意をスムーズに得られないリスクもあります

ここでは、私的整理の5つの手法をわかりやすく解説します。

私的整理ガイドライン

私的整理ガイドラインは、私的整理を行う際に従うべき基準を定めたガイドラインです。金融機関は私的整理ガイドラインを尊重する傾向にあり、その内容に従うことでスムーズな私的整理が期待できます。

私的整理ガイドラインに基づく私的整理は、主要債権者である金融機関などを参加させて行うため、成功すれば大幅に債務を圧縮することができます。

参考:全国銀行協会の「私的整理ガイドライン」

中小企業再生支援スキーム

中小企業再生支援スキームは、中小企業が経営再建を図るために設けられた制度で、公的な支援機関が企業の財務改善や経営再建を支援します。

中小企業再生支援スキームは制度化されているため、私的整理の中でも透明性・公正性が確保されます。

また、スキーム内において弁護士や会計士などの専門家によるサポートを受けることもできます。私的整理ガイドラインや事業再生ADRなど、他の私的整理手法と連携できる点も大きな特徴です。

参考:中小企業庁「中小企業再生支援スキーム」

REVICによる事業再生支援

REVIC(株式会社地域経済活性化支援機構)は、地域の中核となる企業を中心に事業再生を支援しています。

REVICは国が設立した公的・中立的な機関であるため、私的整理の中では透明性と信頼性が高い手続きの一つといえます。

また、金融、経営、法務の専門家と連携し、企業の財務状況を詳細に分析して最適な再生計画を策定できる点や、債務整理・資本増強・事業再構築など、多様な手法を組み合わせて支援を受けられる点も大きな特徴です。

特定認証ADR手続き(事業再生ADR)

特定認証ADR手続き(事業再生ADR)は、裁判外紛争解決手続(ADR)の一つであり、裁判所を通さずに債権者と債務者の合意を図る方法です。

事業再生ADRを取り扱うのは、専門的知識を有する会員で構成される「一般社団法人事業再生実務家協会」という第三者機関です。公的・中立的な機関の関与により、公正かつ透明な形で私的整理を進めることができます。

また事業再生ADRにおいては、産業競争力強化法に基づいてつなぎ融資債権が優遇されているため、金融機関からつなぎ融資を受けやすいという特徴があります。

企業再生ファンド

企業再生ファンドは、投資家から集めた資金を用いて、経営不振に陥った企業の再建を行うファンドです。

公的な制度である事業再生ADRなどとは異なり、企業再生ファンドは民間資金を活用している点が大きな特徴です。迅速性・柔軟性に長けており、大規模な資金調達も行い得る一方で、ファンドによる強い経営介入を受けるのが難点といえます。

私的整理のメリットとデメリット

私的整理には、裁判所の関与を避けて債権者と直接協議することで、柔軟かつ迅速に債務を圧縮できるメリットがあります。

また、非公開で手続きが進められるため、法的整理に比べると企業イメージへの悪影響を回避しやすいことのメリットの一つです。

ただし、手続きの透明性や債権者間の公平性確保については課題があるため、私的整理を進めるに当たっては慎重な対応が求められます。

また、私的整理に参加する債権者については、そのすべての同意を得なければなりません。法的整理では反対債権者との間でも債権カットが認められ得るのに対して、私的整理では債権者の同意を得ることがいっそう重要になります。

また、私的整理の具体的な各手法には、それぞれに固有のメリットとデメリットがあります。

私的整理ガイドライン
メリット:経団連や全国銀行協会が認定した一般的な指針として広く受け入れられており、金融機関を中心とした債権者の協力を得やすい。
デメリット:支配株主の権利の消滅および既存株主の割合的地位の減少・消滅、ならびに経営者の退任が原則とされているため、オーナー経営者の影響力は大幅に失われる。

中小企業再生支援スキーム
メリット:中立的な第三者機関である中小企業再生支援協議会が支援するため、透明性と公正性が確保される。
デメリット:再建計画に関する数値基準が厳しい。

REVICによる事業再生支援
メリット:中立的な第三者機関であるREVICが関与するため、透明性と公正性が確保される。
デメリット:大規模な事業者(資本金の額または出資の総額が5億円を超え、かつ常時使用する従業員の数が1000人を超える事業者)は利用できない。

事業再生ADR
メリット:中立的な第三者機関が介入し、非公開で柔軟に再生を進められる。金融機関からのつなぎ融資を受けやすい。
デメリット:数千万円から1億円程度の高額な費用がかかる。

企業再生ファンド
メリット:民間投資家の資金を活用できるため、大規模な資金調達も実行し得る。
デメリット:投資家の意向に左右されるため、企業の独自性が失われる可能性がある。

私的整理に共通するメリット・デメリットや、各手法に固有のメリットとデメリットを踏まえて、企業の状況に応じて適切な手法を選択することが重要です。

M&Aによる企業再生2つの方法

「M&A」とは、企業や企業が行う事業を売買する取引を意味します。M&Aは、企業再生の一環として行われることもあります。

企業再生において用いられるM&A手法には、主に事業譲渡と会社分割の2つがあり、それぞれの企業の状況や再生目標に応じて選択されます。

M&Aによる企業再生の2つの手法を解説します。

  • 事業譲渡
  • 会社分割

事業譲渡

事業譲渡とは、企業が行う事業の一部を他社へ譲渡することをいいます。企業再生の場面では、採算事業をスポンサー企業に譲渡し、不採算事業を清算する手法が主に採用されています(=第二会社方式)。

事業譲渡を通じた企業再生は、企業の健全な部分を存続させつつ、不採算部門を削ぎ落して負債の削減等を図るために有効です。不採算部門については清算を行うことになりますが、採算部門については煩雑な法的手続きを要することなく、スムーズに事業を継続することができます。

特に中小企業の再生においては、事業譲渡が多く利用されています。

会社分割

会社分割とは、会社の一部を分離して他社に承継させることをいいます。事業再生と同様に、採算部門を会社分割によって他社に承継させ、残った不採算部門を清算する手法がよく用いられます(=第二会社方式)。

会社分割の特徴は、分割対象となる事業に関する権利義務を包括的に承継できる点です。個別に承継手続きが必要な事業譲渡に比べて、スムーズに採算部門の承継を完了できます。

ただし、会社分割に当たっては、会社法で定められた複雑な手続きを経る必要があるため、専門家のサポートが必要不可欠です。

企業再生を進める際のポイントや注意点

企業再生を成功させるためには、適切な手法を選択し、計画的かつ柔軟に対応することが不可欠です。

企業再生の取り組みにおいては、専門家の協力を得ることや、従業員のモチベーションを維持するための施策が重要です。

また、業務改善を優先し、人員整理は最終手段とすることが望まれます。

企業再生を進める際のポイントや注意点を解説します。

  • 弁護士や企業再生コンサルなど専門家の協力を得る
  • 業務改善を優先し人員整理は最終手段とする

弁護士や企業再生コンサルなど専門家の協力を得る

企業再生の過程では、法的および財務的な専門知識が必要になります。

そのため、企業再生を成功させるには、弁護士や企業再生コンサルタントなどの専門家の協力が不可欠です。

弁護士の協力を得ることで、法的整理や私的整理による債務の圧縮を適切かつスムーズに進めることができます。

企業再生コンサルタントに依頼すれば、企業の財務状況を詳細に分析し、実現可能な再生計画を策定してもらえます。

このように、専門家の支援を得ることで、企業再生が成功する可能性が大いに高まります

業務改善を優先し人員整理は最終手段とする

企業再生においては、業務改善を最優先し、人員整理は最終手段とすることが重要です。

業務改善に成功すれば、経費節減および生産性の上昇によって業績の向上が期待できます。従業員の残業時間も減り、労働の負担軽減に繋がるでしょう。

また、人員整理を避けることで従業員の不安を和らげ、モチベーションを維持できます。従業員の協力を得ることができれば、企業文化が維持され、企業再生の過程でも一体感を持って業務に取り組めます。

このように、人員整理を極力回避しつつ業務改善を推進すれば、経費削減と生産性向上を図りつつ従業員の士気を維持することができ、企業の持続的な成長を取り戻すことに繋がります。

企業再生の具体的な事例を2つ紹介

企業再生に関する成功事例と失敗事例を分析することは、実際に企業再生へ取り組む上での重要なポイントや注意点に関するよりよい理解の助けとなります。

企業再生の具体的な事例を2つ紹介します。

  • 企業再生に成功した日本航空
  • 企業再生に失敗したレナウン

企業再生に成功した日本航空

日本航空(JAL)は経営破綻後、徹底したリストラと事業再構築を行い、企業再生に成功しました。

大規模な債務削減や公的資金の注入により、短期間で再上場を果たし、経営基盤の強化にも成功しています。

日本航空は2010年に会社更生法の適用を受け、5000億円以上の債権放棄を通じて債務の圧縮を行い、3500億円の公的資金の出資を受けて資金繰りを安定させました。

さらに不採算事業の売却や大型機の処分、大規模なリストラを実施し、経費削減を図っています。

これらの再建計画は、企業再生支援機構の支援の下で策定され、計画的に実行されました。

日本航空の企業再生の成功には、法的整理手続き・公的資金の注入・事業構造の改革・専門家の協力などが大きく寄与しています。

これらの要素を適切に組み合わせることで、大企業であるにもかかわらず短期間での再生が可能となりました。

企業再生に失敗したレナウン

レナウンは民事再生手続きを通じて企業再生に取り組みましたが、経営改善に失敗し、最終的に破産手続きに移行しました。

レナウンの企業再生が失敗した原因は、不採算事業の整理や新型コロナウイルスの影響に適切に対応できなかったためと考えられます。

バブル崩壊後、高価格帯衣料品の需要が急激に低下し、レナウンの経営は悪化しました。

消費者の嗜好が変化し、レナウンの製品が市場での競争力を失ったことも一因です。

また、適切なタイミングでの人員削減や不採算事業の整理が行えず、コスト削減が不十分でした。

2020年5月に民事再生法の適用を受けましたが、市場環境のさらなる悪化により再生計画は進行せず、同年10月に破産手続きへと移行しました。

レナウンの企業再生においては、買収スキームや譲渡代金についての交渉がまとまらなかったために包括的なスポンサーが付かなかったことが、失敗の主要因と考えられます。

再生計画の実効性と市場環境への適応力などが、市場から十分に評価されなかったことの帰結といえるでしょう。

企業再生を成功させるには、適切なタイミングでのリストラや現実的な計画の策定、具体的な戦略の実行などが求められます。

さらに、市場の変化を見極めつつ柔軟に対応することも、企業再生の可能性を高めるための重要なポイントです。

監修者

阿部 由羅(あべ ゆら)先生

2016年12月 弁護士登録(69期)

ゆら総合法律事務所