計画倒産とは?違法性や事例をわかりやすく解説

計画倒産とは?違法性や事例をわかりやすく解説

計画倒産とは、「事前に計画をして意図的に行われる倒産のこと」を指します。また計画倒産は従業員や取引先の利益を害する行為があるため、詐欺罪や詐欺破産罪といった罪に問われる可能性のある行為です。

この記事では、計画倒産の仕組みや違法性、詐欺罪および詐欺破産罪の成立要件について詳しく解説しています。本記事最後では計画倒産に関するよくある質問も紹介していますので、疑問や不安を抱えている人はぜひ参考にしてください。

計画倒産とは事前に計画して意図的に行われる倒産のこと

計画倒産は要注意!

計画倒産とは従業員や取引先等への支払いを踏み倒すことを目的とした倒産方法です。会社が保有する財産を計画的に個人財産へ移動させた状態で倒産するため、従業員や取引先は金銭が支払われず、経済的な影響を受けます。

計画倒産は従業員や取引先を騙す行為であるため、詐欺罪に該当する可能性がある犯罪行為です。また、法人として破産手続きを行う場合は、詐欺破産罪(財産隠し)の罪に問われる可能性もあるため注意しなければいけません。

まずは、計画倒産と通常の倒産の違いについて詳しく解説します。

計画倒産と通常の倒産との違い

計画倒産とは、従業員や取引先への支払いを踏み倒し、会社の財産を経営者個人のものにしたうえで会社を倒産させる行為です。

たとえば、架空の取引先に支払いを行ったかのように見せて、個人口座にお金を移し、財産を隠匿したうえで倒産する行為です。他にも、倒産することを前提に商品を仕入れ、個人的に仕入れした商品を売却して自分のお金にしてしまう行為が該当します。

上記方法によって会社の財産や資産を個人の財産に変換したうえで、倒産を行うのが一連の流れです。上記流れが計画的な犯行であることから「計画倒産」と呼ばれています。

計画倒産は会社に対する債権者(従業員や取引先)の利益を害する行為であるため、違法であり詐欺罪や詐欺破産罪といった罪に問われる可能性があります。

一方で、通常の倒産とは「会社の経営状態が芳しくなく、支払いをしなければいけない債務を支払いできない状態」を指します。「倒産」という言葉は法律的な用語ではなく、明確な定義はないものの、一般的には上記の状態が倒産です。

具体的には、以下に該当した場合は「事実上の倒産」と見なされます。

  • 銀行から取引停止処分を受けた場合
  • 内整理(法的手続きを行わず、代表者が債権者と直接話し合いを行い、整理を行うこと)
  • 会社更生手続きの開始
  • 民事再生手続きの開始
  • 破産(法人破産)手続きの開始
  • 特別清算の開始

参考:帝国データバンク|倒産の定義

計画倒産と通常の倒産の大きな違いは、「会社の財産および資産を債権者に返還しているかどうか」です。

通常の倒産を行う場合は、会社に残っている資産を債権者に平等に分配します。機械設備等の財産が残っている場合は、事業を継続するか法人破産するかによって異なります。法人破産する場合は、機械設備等も換価処分が前提です。

一方で、計画倒産は会社の財産や資産を経営者個人が何らかの方法で自分のものにしてしまう行為です。

計画倒産は詐欺罪・詐欺破産罪に問われる場合がある

計画倒産は詐欺罪・詐欺破産罪に問われる場合がある

計画倒産は、会社の債権者の利益を害する行為であり、詐欺罪(刑法246条)や詐欺破産罪(破産法265条)に該当し、処罰される可能性があります。

詐欺罪は「①欺罔行為(相手を騙す行為) ②被害者の錯誤 ③被害者による交付行為 ④利益の移転」によって成立します。たとえば、従業員や取引先を騙して金銭を支払わなかった場合に詐欺罪が成立する可能性があるため注意しなければいけません。

詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、初犯であっても実刑判決が下される可能性が高い犯罪です。

実刑判決とは?

実刑判決とは、懲役刑のうち執行猶予が付かなかった判決を指します。執行猶予が付かなければ、直ちに刑務所へ収容されて一定期間刑務作業(強制労働)を行う刑罰(自由刑)が執行されます。

また、詐欺破産罪とは破産手続きに関することを定めている「破産法」という法律にある犯罪です。破産は、裁判所にて行う手続きであるため、「詐欺破産罪=裁判所を騙す行為」であり、違反した場合は「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科」となります。

詐欺破産罪の成立要件は、債権者の利益を害する目的で財産を隠したり価格を減損させたりする行為があった場合に成立します。また、詐欺破産罪に該当した場合、免責不許可事由に該当し、免責許可はおりません。よって、破産による倒産はできなくなってしまいます。

次に、どういったケースが詐欺罪あるいは詐欺破産罪に該当するのか、について詳しく解説します。

架空の決算書や試算表を作成して金融機関から融資を受けた場合

「架空の決算書や試算表を作成して金融機関から融資を受けた場合」は、刑法第246条に定められている詐欺罪に該当します。

詐欺罪は、先ほども解説したとおり「①欺罔行為(相手を騙す行為) ②被害者の錯誤 ③被害者による交付行為 ④利益の移転」によって成立する犯罪です。

上記例で見ると「架空の決算書や試算表を作成して金融機関へ提出(①欺罔行為)」が認められます。次に、金融機関が架空の決算書や試算表を確認して、「融資に問題はないだろう(②被害者の錯誤)」と考えた時点で被害者の錯誤が認められるでしょう。

そして、実際に融資を行うことによって③被害者(金融機関)による交付行為が認められます。被害者による交付行為とは、被害者自ら差し出すことを指します。つまり、決算書や試算表を信じて融資を行う状態を指し、無理やり奪う行為は交付行為にはなりません。

最後に、実際に金融機関から融資を受けた場合は「④利益の移転」が認められるため、詐欺罪が成立します。

ちなみに、最終的に詐欺罪の目的を達成できなかった場合(未遂で終わった場合)も詐欺未遂罪に問われます。詐欺未遂罪の法定刑も詐欺罪同様、「10年以下の懲役(刑法第250条)」に処されるため注意しましょう。

詐欺罪の成立要件をわかりやすく言うと「返済能力がないにも関わらず、嘘をついてお金を借りた場合」と考えると良いです。返済できないにも関わらず、返済できるように見せかけて融資を受けている以上、詐欺罪は成立するため注意しましょう。

なお、「架空の決算書や試算表を作成して金融機関から融資を受けた場合」この行為は、免責不許可事由にも該当します。そのため、法人破産を検討している場合、免責許可を受けられない可能性が高いため注意しましょう(破産法第252条5項)。

事業や会社の財産を安く切り売りして債権者への支払いを逃れる

「事業や会社の財産を安く切り売りして債権者への支払いを逃れる」この行為は、破産法第265条に定められている詐欺破産罪に該当します。詐欺破産罪については、以下のとおり明記されています。

(詐欺破産罪)

第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。

一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為

二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為

三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為

四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

2 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。

引用元:破産法|第265条

詐欺破産罪は、破産手続きを前提としている者を対象とした法律です。法人破産(倒産)をする予定もしくは、しなければいけない状況下にあるときに「事業や会社の財産を安く切り売りして債権者への支払いを逃れる」行為があった場合は、詐欺破産罪に問われます。

たとえば、詐欺破産罪(第265条)1項の「債務者の財産を隠匿または損壊する行為」に該当する可能性があるでしょう。

本来、法人破産では法人が所有する財産等はすべての債権者に平等に分配しなければいけません。しかし、破産手続きの前後に関わらず、債務者が勝手に財産を隠匿したり損壊してしまうと、債権者の利益を害することになります。

また、詐欺破産罪(第265条)3項に該当する可能性もあるため注意しなければいけません。3項では「財産の現状を改変して価値を減損させる行為」と書かれています。

事業や会社の財産を安く切り売りしている時点で、その価値を減損していることとなり、債権者の利益を害していることになります。そのため、詐欺破産罪に問われ、厳しく処罰されてしまう可能性があるでしょう。

計画倒産に関するよくある質問に回答

計画倒産に関するよくある質問を紹介します。

計画倒産と通常の倒産の違いについて知りたい

A.計画倒産と通常の倒産の大きな違いは「会社の財産および資産を債権者に返還しているかどうか」です。

計画倒産・通常の倒産はいずれも法律用語ではなく、明確な基準はありません。

一般的には「計画倒産=会社の財産・資産を債権者に還元せずに、経営者個人のものにしたうえで倒産すること」を指します。また、計画倒産は違法行為(詐欺罪や詐欺破産罪)に該当しているケースが多いです。

一方で、通常の倒産とは「会社の経営状態が芳しくなく、支払いをしなければいけない債務を支払いできない状態」です。また、通常の倒産は違法行為はなく、債権者に対しても平等に資産・財産が分配される状態を指します。

会社が倒産したら従業員の給与はどうなるのか

A.通常は他の債権者と同様、破産手続きに参加できます。そのうえで、給与の一部もしくは全額が支払われる流れとなります。

倒産といってもその内容はさまざまであるため、「法人破産」を例に挙げると、従業員は債務者(会社)に対して債権(給与を受け取る権利)を有している債権者です。そのため、他の債権者と同様に破産手続きに参加できます。

破産手続きを行うと、会社に残っている財産・資産の調査および債権者の調査をします。法人破産を検討している場合、通常は「財産<債権」の状態になっているため、各債権者の債権割合に応じて財産を分配する仕組みです。

ただし、給与債権の場合は「優先的破産債権」と言われ、他の債権者よりも優先して弁済を受けられる仕組みになっています。

給与債権は一般の債権よりも優先されるのが基本です。しかし、倒産をする企業にそもそも財産が残っていない場合は、支払い能力がないため満額給与が支払われないこともあるため注意しなければいけません。

倒産した会社の負債は誰が責任を負うのか

A.法人破産を例に挙げると、残った負債は誰も責任を負うことはありません。

法人破産の場合、最終的には免責許可決定が下されます(免責不許可の場合もある)。免責許可決定がなされると、法的に債務者は債権者に対する債権を免責(返済義務の免除)となります。

つまり、免責許可決定が下された時点で、債権者が債務者に破産手続きの対象となった債権に対する支払いを求めることは一切できません。

法人破産は最終的に免責(支払い義務の免除)を目指すために行われる手続きです。免責許可が認められれば、債権者は債務者が所有する財産以上の弁済を受けることはできません。そのため、債権者側が相当な不利を受けることになります。このことから、債務者に対しては破産法という法律によってさまざまな規制を行っているのです。

計画倒産とは?違法性や事例をわかりやすく解説

計画倒産とは?違法性や事例をわかりやすく解説

計画倒産とは、「事前に計画をして意図的に行われる倒産のこと」を指します。また計画倒産は従業員や取引先の利益を害する行為があるため、詐欺罪や詐欺破産罪といった罪に問われる可能性のある行為です。

この記事では、計画倒産の仕組みや違法性、詐欺罪および詐欺破産罪の成立要件について詳しく解説しています。本記事最後では計画倒産に関するよくある質問も紹介していますので、疑問や不安を抱えている人はぜひ参考にしてください。

計画倒産とは事前に計画して意図的に行われる倒産のこと

計画倒産は要注意!

計画倒産とは従業員や取引先等への支払いを踏み倒すことを目的とした倒産方法です。会社が保有する財産を計画的に個人財産へ移動させた状態で倒産するため、従業員や取引先は金銭が支払われず、経済的な影響を受けます。

計画倒産は従業員や取引先を騙す行為であるため、詐欺罪に該当する可能性がある犯罪行為です。また、法人として破産手続きを行う場合は、詐欺破産罪(財産隠し)の罪に問われる可能性もあるため注意しなければいけません。

まずは、計画倒産と通常の倒産の違いについて詳しく解説します。

計画倒産と通常の倒産との違い

計画倒産とは、従業員や取引先への支払いを踏み倒し、会社の財産を経営者個人のものにしたうえで会社を倒産させる行為です。

たとえば、架空の取引先に支払いを行ったかのように見せて、個人口座にお金を移し、財産を隠匿したうえで倒産する行為です。他にも、倒産することを前提に商品を仕入れ、個人的に仕入れした商品を売却して自分のお金にしてしまう行為が該当します。

上記方法によって会社の財産や資産を個人の財産に変換したうえで、倒産を行うのが一連の流れです。上記流れが計画的な犯行であることから「計画倒産」と呼ばれています。

計画倒産は会社に対する債権者(従業員や取引先)の利益を害する行為であるため、違法であり詐欺罪や詐欺破産罪といった罪に問われる可能性があります。

一方で、通常の倒産とは「会社の経営状態が芳しくなく、支払いをしなければいけない債務を支払いできない状態」を指します。「倒産」という言葉は法律的な用語ではなく、明確な定義はないものの、一般的には上記の状態が倒産です。

具体的には、以下に該当した場合は「事実上の倒産」と見なされます。

  • 銀行から取引停止処分を受けた場合
  • 内整理(法的手続きを行わず、代表者が債権者と直接話し合いを行い、整理を行うこと)
  • 会社更生手続きの開始
  • 民事再生手続きの開始
  • 破産(法人破産)手続きの開始
  • 特別清算の開始

参考:帝国データバンク|倒産の定義

計画倒産と通常の倒産の大きな違いは、「会社の財産および資産を債権者に返還しているかどうか」です。

通常の倒産を行う場合は、会社に残っている資産を債権者に平等に分配します。機械設備等の財産が残っている場合は、事業を継続するか法人破産するかによって異なります。法人破産する場合は、機械設備等も換価処分が前提です。

一方で、計画倒産は会社の財産や資産を経営者個人が何らかの方法で自分のものにしてしまう行為です。

計画倒産は詐欺罪・詐欺破産罪に問われる場合がある

計画倒産は詐欺罪・詐欺破産罪に問われる場合がある

計画倒産は、会社の債権者の利益を害する行為であり、詐欺罪(刑法246条)や詐欺破産罪(破産法265条)に該当し、処罰される可能性があります。

詐欺罪は「①欺罔行為(相手を騙す行為) ②被害者の錯誤 ③被害者による交付行為 ④利益の移転」によって成立します。たとえば、従業員や取引先を騙して金銭を支払わなかった場合に詐欺罪が成立する可能性があるため注意しなければいけません。

詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」であり、初犯であっても実刑判決が下される可能性が高い犯罪です。

実刑判決とは?

実刑判決とは、懲役刑のうち執行猶予が付かなかった判決を指します。執行猶予が付かなければ、直ちに刑務所へ収容されて一定期間刑務作業(強制労働)を行う刑罰(自由刑)が執行されます。

また、詐欺破産罪とは破産手続きに関することを定めている「破産法」という法律にある犯罪です。破産は、裁判所にて行う手続きであるため、「詐欺破産罪=裁判所を騙す行為」であり、違反した場合は「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金または併科」となります。

詐欺破産罪の成立要件は、債権者の利益を害する目的で財産を隠したり価格を減損させたりする行為があった場合に成立します。また、詐欺破産罪に該当した場合、免責不許可事由に該当し、免責許可はおりません。よって、破産による倒産はできなくなってしまいます。

次に、どういったケースが詐欺罪あるいは詐欺破産罪に該当するのか、について詳しく解説します。

架空の決算書や試算表を作成して金融機関から融資を受けた場合

「架空の決算書や試算表を作成して金融機関から融資を受けた場合」は、刑法第246条に定められている詐欺罪に該当します。

詐欺罪は、先ほども解説したとおり「①欺罔行為(相手を騙す行為) ②被害者の錯誤 ③被害者による交付行為 ④利益の移転」によって成立する犯罪です。

上記例で見ると「架空の決算書や試算表を作成して金融機関へ提出(①欺罔行為)」が認められます。次に、金融機関が架空の決算書や試算表を確認して、「融資に問題はないだろう(②被害者の錯誤)」と考えた時点で被害者の錯誤が認められるでしょう。

そして、実際に融資を行うことによって③被害者(金融機関)による交付行為が認められます。被害者による交付行為とは、被害者自ら差し出すことを指します。つまり、決算書や試算表を信じて融資を行う状態を指し、無理やり奪う行為は交付行為にはなりません。

最後に、実際に金融機関から融資を受けた場合は「④利益の移転」が認められるため、詐欺罪が成立します。

ちなみに、最終的に詐欺罪の目的を達成できなかった場合(未遂で終わった場合)も詐欺未遂罪に問われます。詐欺未遂罪の法定刑も詐欺罪同様、「10年以下の懲役(刑法第250条)」に処されるため注意しましょう。

詐欺罪の成立要件をわかりやすく言うと「返済能力がないにも関わらず、嘘をついてお金を借りた場合」と考えると良いです。返済できないにも関わらず、返済できるように見せかけて融資を受けている以上、詐欺罪は成立するため注意しましょう。

なお、「架空の決算書や試算表を作成して金融機関から融資を受けた場合」この行為は、免責不許可事由にも該当します。そのため、法人破産を検討している場合、免責許可を受けられない可能性が高いため注意しましょう(破産法第252条5項)。

事業や会社の財産を安く切り売りして債権者への支払いを逃れる

「事業や会社の財産を安く切り売りして債権者への支払いを逃れる」この行為は、破産法第265条に定められている詐欺破産罪に該当します。詐欺破産罪については、以下のとおり明記されています。

(詐欺破産罪)

第二百六十五条 破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、債務者(相続財産の破産にあっては相続財産、信託財産の破産にあっては信託財産。次項において同じ。)について破産手続開始の決定が確定したときは、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第四号に掲げる行為の相手方となった者も、破産手続開始の決定が確定したときは、同様とする。

一 債務者の財産(相続財産の破産にあっては相続財産に属する財産、信託財産の破産にあっては信託財産に属する財産。以下この条において同じ。)を隠匿し、又は損壊する行為

二 債務者の財産の譲渡又は債務の負担を仮装する行為

三 債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為

四 債務者の財産を債権者の不利益に処分し、又は債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為

2 前項に規定するもののほか、債務者について破産手続開始の決定がされ、又は保全管理命令が発せられたことを認識しながら、債権者を害する目的で、破産管財人の承諾その他の正当な理由がなく、その債務者の財産を取得し、又は第三者に取得させた者も、同項と同様とする。

引用元:破産法|第265条

詐欺破産罪は、破産手続きを前提としている者を対象とした法律です。法人破産(倒産)をする予定もしくは、しなければいけない状況下にあるときに「事業や会社の財産を安く切り売りして債権者への支払いを逃れる」行為があった場合は、詐欺破産罪に問われます。

たとえば、詐欺破産罪(第265条)1項の「債務者の財産を隠匿または損壊する行為」に該当する可能性があるでしょう。

本来、法人破産では法人が所有する財産等はすべての債権者に平等に分配しなければいけません。しかし、破産手続きの前後に関わらず、債務者が勝手に財産を隠匿したり損壊してしまうと、債権者の利益を害することになります。

また、詐欺破産罪(第265条)3項に該当する可能性もあるため注意しなければいけません。3項では「財産の現状を改変して価値を減損させる行為」と書かれています。

事業や会社の財産を安く切り売りしている時点で、その価値を減損していることとなり、債権者の利益を害していることになります。そのため、詐欺破産罪に問われ、厳しく処罰されてしまう可能性があるでしょう。

計画倒産に関するよくある質問に回答

計画倒産に関するよくある質問を紹介します。

計画倒産と通常の倒産の違いについて知りたい

A.計画倒産と通常の倒産の大きな違いは「会社の財産および資産を債権者に返還しているかどうか」です。

計画倒産・通常の倒産はいずれも法律用語ではなく、明確な基準はありません。

一般的には「計画倒産=会社の財産・資産を債権者に還元せずに、経営者個人のものにしたうえで倒産すること」を指します。また、計画倒産は違法行為(詐欺罪や詐欺破産罪)に該当しているケースが多いです。

一方で、通常の倒産とは「会社の経営状態が芳しくなく、支払いをしなければいけない債務を支払いできない状態」です。また、通常の倒産は違法行為はなく、債権者に対しても平等に資産・財産が分配される状態を指します。

会社が倒産したら従業員の給与はどうなるのか

A.通常は他の債権者と同様、破産手続きに参加できます。そのうえで、給与の一部もしくは全額が支払われる流れとなります。

倒産といってもその内容はさまざまであるため、「法人破産」を例に挙げると、従業員は債務者(会社)に対して債権(給与を受け取る権利)を有している債権者です。そのため、他の債権者と同様に破産手続きに参加できます。

破産手続きを行うと、会社に残っている財産・資産の調査および債権者の調査をします。法人破産を検討している場合、通常は「財産<債権」の状態になっているため、各債権者の債権割合に応じて財産を分配する仕組みです。

ただし、給与債権の場合は「優先的破産債権」と言われ、他の債権者よりも優先して弁済を受けられる仕組みになっています。

給与債権は一般の債権よりも優先されるのが基本です。しかし、倒産をする企業にそもそも財産が残っていない場合は、支払い能力がないため満額給与が支払われないこともあるため注意しなければいけません。

倒産した会社の負債は誰が責任を負うのか

A.法人破産を例に挙げると、残った負債は誰も責任を負うことはありません。

法人破産の場合、最終的には免責許可決定が下されます(免責不許可の場合もある)。免責許可決定がなされると、法的に債務者は債権者に対する債権を免責(返済義務の免除)となります。

つまり、免責許可決定が下された時点で、債権者が債務者に破産手続きの対象となった債権に対する支払いを求めることは一切できません。

法人破産は最終的に免責(支払い義務の免除)を目指すために行われる手続きです。免責許可が認められれば、債権者は債務者が所有する財産以上の弁済を受けることはできません。そのため、債権者側が相当な不利を受けることになります。このことから、債務者に対しては破産法という法律によってさまざまな規制を行っているのです。