不渡りとは?出したらどうなるのか解説

不渡りとは?出したらどうなるのか解説

会社が発行した手形や小切手の決済をできなくなることを不渡りと言います。不渡りを出すと、取引先や金融機関からの信用を失い、最悪の場合には倒産にまで追い込まれる可能性もあります。

「1回目の不渡りなら問題ないのでは?」、「不渡りを避けるにはどのような方法があるの?」など疑問を持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、不渡りを出したらどうなるか、不渡りの種類、不渡りが振出人や受取人に与える影響、不渡りを避けるための方法などを解説します。

不渡りとは手形や小切手を支払期日までに決済できないこと

不渡りとは手形や小切手を支払期日までに決済できないこと

不渡りとは、会社が発行した手形や小切手を決済できない状態のことを言います。手形や小切手は、現金の代わりの決済手段として利用される有価証券です。

手形・小切手は、指定の金融機関に持ち込むことで現金化できます。手形には支払期日があるため期日を待って現金化することになりますが、小切手はいつでも現金化できます。

手形・小切手を利用するには、「当座預金」が必要です。金融機関は、当座預金の残高から手形・小切手の決済をしますが、残高不足のときには決済不能となります。当座預金の残高不足により手形・小切手の決済ができない状態不渡りです。

会社が不渡りを出してしまうと、次のような手続きがおこなわれます。

  • 1回目の不渡りで金融機関の不渡報告に掲載され信用力が低下する
  • 半年以内に2回目の不渡りで銀行取引停止処分となり事実上の倒産

以下では、それぞれの内容について詳しく解説します。

1回目の不渡りで金融機関の不渡報告に掲載され信用力が低下する

会社が1回目の不渡りを出すと、金融機関は「不渡届」を作成して手形交換所に提出します。不渡届が提出されると、手形交換所は、電子交換所規則(以下「規則」と言います。)に基づいて、不渡りを出した会社を「不渡報告」に掲載します(規則41条)。

不渡報告に掲載された事実は、全国銀行協会に加盟する全金融機関に通知されます。つまり、1度でも不渡りを出してしまうと、ほぼ全ての金融機関に不渡りを出した会社であることが知れ渡ってしまうのです。

不渡報告への掲載・通知の目的は、不渡りを出した会社を金融機関に知らせることで、信用力の低い会社への貸し付けによる貸し倒れを防止するためです。そのため、不渡報告に掲載されてしまうと、新たな運転資金の借入は難しくなってしまいます。

金融機関以外にも、手形・小切手の決済を受けられなかった取引先との関係では、取引の継続を中止されたり、金銭の支払を求める訴訟提起をされたりする可能性もあるでしょう。

「不渡りは2回目から大変なことになる。」と言われることもありますが、実際には1回目でも不渡りを出してしまうと事業を継続するのが難しくなります。

参照:電子交換所規則|一般社団法人全国銀行協会

半年以内に2回目の不渡りで銀行取引停止処分となり事実上の倒産

1回目の不渡りから半年以内に2回目の不渡りを出すと、銀行取引停止処分となります(規則42条)。銀行取引停止処分になると、2年もの間、当座預金口座を利用することや融資を受けることができなくなります(規則39条)。

当然のことながら、当座預金口座なしでは手形・小切手を利用することはできません。運転資金が足りなくなっても、つなぎ融資すら受けることができなくなるため、銀行取引停止処分を受けてからも事業を継続するのは難しいでしょう。そのため、銀行取引停止処分は、事実上の倒産と言われているのです。

上場企業が銀行取引停止処分を受けたときには、上場廃止基準に該当するものとして上場廃止となります。上場廃止となった株式は、整理銘柄に移行し、1か月程度で株式市場での取引ができなくなります。

参照:上場廃止基準の概要|日本取引所グループ

不渡りは原因別に3種類!出してはいけない不渡りは1号

不渡りは、原因と内容によって次の3種類に区別されます。

  • 0号不渡り
  • 1号不渡り
  • 2号不渡り

この中で、銀行取引停止処分につながる不渡りは「1号不渡り」です。「0号不渡り」や「2号不渡り」は、手形・小切手の決済ができないという理由で「不渡り」に当たりますが、会社の信用低下や銀行取引停止処分という結果につながるものではありません。そのため、単に「不渡り」と呼ぶときには「1号不渡」のみを指すのが一般的です。

以下では、不渡りの種類を明確に区別するために、それぞれの不渡りの内容を詳しく解説します。

0号不渡り

0号不渡りとは、手形・小切手を発行した会社の信用とは関係のない原因で決済できない場合の不渡りのことです。

0号不渡りの例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 手形・小切手の形式面に不備があったケース(振出人の署名、支払期日、支払金額などの記載漏れ)
  • 手形の支払期日が経過する前に換金しようとしたケース
  • 手形・小切手の支払呈示期間(有効期間)が経過してしまったケース

0号不渡りについては、「不渡報告」への掲載や金融機関への通知はされません。「不渡報告」は、掲載された会社の信用性に問題があることを加盟する金融機関に通知するものですが、0号不渡りは会社の信用性とは関係がないので、「不渡報告」に掲載する必要がないためです。

0号不渡りを起こしても、金融機関との関係で会社の信用性を低下させることはありません。しかし、手形・小切手の形式不備で取引先が決済できなかったときには、取引先に迷惑をかけることになるため、手形・小切手を発行する際は形式面の不備がないよう十分に注意しましょう。

1号不渡り

1号不渡りとは、振出人(手形・小切手を発行した人)の信用に関係する原因で、手形・小切手の決済ができなかった場合の不渡りのことです。一般に「不渡り」とは、1号不渡りのことを指します。

1号不渡りの原因としては、次の2つが挙げられます。

  • 当座預金の残高が不足していたケース
  • 手形・小切手の決済前に当座預金を解約していたケース

1号不渡りを出した場合は、前の項目で説明したとおり、「不渡報告」への掲載と加盟する金融機関への通知がおこなわれます。さらに、1回目の不渡りから半年以内に2回目の不渡りを出したときには、銀行取引停止処分となります。

会社が事業を継続するうえでは、何よりも避けなければならないのが1号不渡りを出すことです。1回目の1号不渡りを出してしまうと、それから間もなく2号不渡りを出して事実上の倒産となってしまうケースがほとんどです。

2号不渡り

0号不渡りにも1号不渡りにも該当しない不渡りは、2号不渡りとして扱われます。

2号不渡りの例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 盗まれた手形・小切手が決済されなかったケース
  • 詐欺によって発行された手形・小切手が決済されなかったケース
  • 偽造・変造された手形・小切手が決済されなかったケース
  • 手形・小切手を発行した原因となる契約の不履行で決済されなかったケース(請負契約の不履行、商品の引き渡しが未了など)

2号不渡りが出された場合は、1号不渡りと同様に金融機関の「不渡届」が作成されます。この場合、振出人は、手形・小切手に記載された金額相当の「異議申立供託金」を用意することで、「異議申立」が可能です(規則45条)。異議申立がおこなわれると、「不渡報告」への掲載や銀行取引停止処分といった措置は猶予されます。

2号不渡りは振出人の信用と関係のない不渡りですが、異議申立をしなければ、不渡報告への掲載や銀行取引停止処分によって会社が重大な損害を受けることになります。2号不渡りが出されたときには、すぐに異議申立の手続きをおこなってください。

不渡りを起こすとどうなる?出した人と受取人に与える影響

不渡りを出すと、出した人(振出人)だけでなく受取人にも大きな影響を与える可能性があります。

振出人は、金融機関や取引先の信用を失うだけでなく、取引先との訴訟問題に発展する可能性もあるでしょう。受取人は、手形・小切手が決済されることを前提に行動するため、急な資金不足により多大な損害を被ることになります。

以下では、振出人と受取人それぞれについて、不渡りを出した場合の影響を詳しく解説します。

不渡りを出すと信用問題に影響!法的な問題に発展する場合も

振出人についての不渡りを出した場合の影響は、金融機関に対する影響と取引先に対する影響に分けられます。

金融機関に対する影響としては、既に説明したとおり、不渡り報告への掲載と通知によって会社の信用が大きく低下します。1回目の不渡りであっても、信用の低下によって新規の融資を受けることは難しくなってしまうでしょう。2回目の不渡りを出すと銀行取引停止処分となり、銀行との取引が完全に絶たれてしまいます。

取引先との関係でも、不渡りを出した会社は信用を失うことになるでしょう。長く取引を続けてきた相手でも、以後の取引を停止されてしまう可能性があります。取引を継続できた場合でも、手形・小切手での取引から現金決済に変更される可能性が高いでしょう。

不渡りを出して以降も、取引先への支払ができないときには訴訟問題に発展することもあります。手形・小切手の決済ができなかったことで取引先に損害が発生した場合には、手形・小切手の金額に加えて損害賠償を請求される可能性もあります。

受取人は事前に立てた事業計画が崩れ経営不振に繋がる恐れも

手形・小切手の受取人は、正常に決済がおこなわれることを前提に事業計画を立てます。不渡りで予定していた資金を得られなければ、在庫の仕入れや取引先への支払いができずに最悪の場合は連鎖倒産してしまう可能性もあるでしょう。

振出人の資金不足により手形・小切手の決済ができなかったとしても、金融機関が支払いを保障してくれるわけではありません。

受取人は振出人に対して、決済できなかった金銭の支払いと決済できなかったことによる損害賠償を請求できます。しかし、不渡りを出した振出人から金銭を回収するのは難しい場合が多いでしょう。訴訟費用や弁護士費用などをかけても、結局のところ回収不能で費用が無駄になる可能性は高いでしょう。

不渡りを出さないためできること!事前対策で避けよう

1回でも不渡りを出してしまうと、会社の信用は大きく失墜してしまいます。会社経営を継続するには、万が一にでも不渡りを出さないよう事前の対策が重要です。

不渡りを出さないための事前対策としては、次の2つの方法が挙げられます。

  • 決済期日を統一する
  • 手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にする

以下では、事前対策の具体的な内容を解説します。さらに、資金不足により不渡りを出してしまいそうなときや既に不渡りを出してしまったときの解決方法も紹介します。

決済期日を統一すると支出が集中する日を明確に把握できる

不渡りは、決済期日における当座預金の不足によって起こります。手形の決済期日が統一されていない場合、決済期日に合わせて当座預金の残高を調整しなければならないため、管理が難しくなってしまうでしょう。

決済期日を統一すると、決済金額の管理が容易になるため当座預金にいつまでにいくら入金しておけば良いかが明確になります。

不渡りを出さないためには、決済期日の把握漏れが原因であっても当座預金の不足が起こらないようにしなければなりません。決済期日と金額を漏れなく管理するには、決済期日を統一しておくのがおすすめです。

手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にするのもおすすめ

手形決済用口座貯蓄用口座が同じ金融機関の場合、手形決済用口座(当座預金)に不足があると、貯蓄用口座(普通預金)の残高も利用できなくなってしまうことがあります。

手形決済用口座と貯蓄用口座が同時に利用できなくなると、たちまち資金繰りが悪化して、立て直すことのできない損害が発生する可能性もあるでしょう。手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関で開設しておけば、両方が同時に利用できなくなる心配はありません。

運転資金に余裕がある場合には、複数の金融機関で口座を管理して、予期せぬ事態に備えるのが良いでしょう。

既に不渡りを出してしまった企業はどうする?解決方法について

既に不渡りを出してしまった、現状では支払期日に決済できる見込みがないといった場合、次の3つの解決方法が考えられます。

  • 受取人に手形のジャンプを依頼して猶予期間を延長してもらう
  • 銀行に過振り(過剰振込)を依頼して一時的に立て替えてもらう
  • 保有している売掛金を売却(ファクタリング)して現金を用意する

以下では、それぞれの内容について詳しく解説します。

受取人に手形のジャンプを依頼して猶予期間を延長してもらう

手形のジャンプとは、受取人の合意によって支払期日を延長してもらうことです。支払期日を延長してもらえれば手形が決済に回されることもないため、不渡りとはなりません。

ただし、手形をジャンプしても受取人には何のメリットもありません。むしろ手形をジャンプしている期間に振出人の資金繰りが改善しなければ、決済金を回収できなくなるリスクが高まります。そのため、将来的な入金の見込みを説明したり、利息を支払ったりするなど、受取人を説得する材料がなければ、手形のジャンプは難しいでしょう。

また、受取人に手形のジャンプを依頼すると、資金繰りが厳しいことを知られることになるため、取引先としての信用を失う可能性もあります。

受取人が手形のジャンプに同意してくれたときには、旧手形を回収して新しく手形を発行するか、手形の支払期日を訂正することで、支払期日を延期できます。

銀行に過振り(過剰振込)を依頼して一時的に立て替えてもらう

過振りとは、手形・小切手の決済をするための当座預金が不足している場合に、銀行が一時的に立て替え払いをしてくれることを言います。

銀行が過振りの対応をしてくれるのは、長期間の取引で銀行からの信用が高い場合や、定期預金による担保がある場合など信用のある会社に対してのみです。過振りをしても資金繰りが改善する見込みがなく回収不能となる可能性があるときには、過振り対応はしてもらえません。

銀行に過振りを依頼する際は、資金繰りの見込みを説明する、担保を提供するなどの方法によって銀行を説得する必要があります。

銀行が過振り対応をしてくれたときには、不渡報告への掲載や銀行取引停止処分は避けられますが、過振りを依頼した銀行の信用は失う可能性が高いでしょう。

保有している売掛金を売却(ファクタリング)して現金を用意

ファクタリングとは、ファクタリング会社に売掛金を譲渡して現金化することを言います。ファクタリングを利用すると、支払期日が到来していない売掛金を現金化できるため、急な資金不足に対応できます。

ファクタリングは、帳簿上は黒字の場合に有効な手段です。赤字の場合にファクタリングを利用しても一時しのぎにしかなりません。ファクタリングには手数料もかかるため、常にファクタリングに頼る状況になると会社に利益が残らなくなってしまいます。ファクタリングは、あくまで一時的な応急措置として利用するようにしてください。

不渡りとは?出したらどうなるのか解説

不渡りとは?出したらどうなるのか解説

会社が発行した手形や小切手の決済をできなくなることを不渡りと言います。不渡りを出すと、取引先や金融機関からの信用を失い、最悪の場合には倒産にまで追い込まれる可能性もあります。

「1回目の不渡りなら問題ないのでは?」、「不渡りを避けるにはどのような方法があるの?」など疑問を持ちの方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、不渡りを出したらどうなるか、不渡りの種類、不渡りが振出人や受取人に与える影響、不渡りを避けるための方法などを解説します。

不渡りとは手形や小切手を支払期日までに決済できないこと

不渡りとは手形や小切手を支払期日までに決済できないこと

不渡りとは、会社が発行した手形や小切手を決済できない状態のことを言います。手形や小切手は、現金の代わりの決済手段として利用される有価証券です。

手形・小切手は、指定の金融機関に持ち込むことで現金化できます。手形には支払期日があるため期日を待って現金化することになりますが、小切手はいつでも現金化できます。

手形・小切手を利用するには、「当座預金」が必要です。金融機関は、当座預金の残高から手形・小切手の決済をしますが、残高不足のときには決済不能となります。当座預金の残高不足により手形・小切手の決済ができない状態不渡りです。

会社が不渡りを出してしまうと、次のような手続きがおこなわれます。

  • 1回目の不渡りで金融機関の不渡報告に掲載され信用力が低下する
  • 半年以内に2回目の不渡りで銀行取引停止処分となり事実上の倒産

以下では、それぞれの内容について詳しく解説します。

1回目の不渡りで金融機関の不渡報告に掲載され信用力が低下する

会社が1回目の不渡りを出すと、金融機関は「不渡届」を作成して手形交換所に提出します。不渡届が提出されると、手形交換所は、電子交換所規則(以下「規則」と言います。)に基づいて、不渡りを出した会社を「不渡報告」に掲載します(規則41条)。

不渡報告に掲載された事実は、全国銀行協会に加盟する全金融機関に通知されます。つまり、1度でも不渡りを出してしまうと、ほぼ全ての金融機関に不渡りを出した会社であることが知れ渡ってしまうのです。

不渡報告への掲載・通知の目的は、不渡りを出した会社を金融機関に知らせることで、信用力の低い会社への貸し付けによる貸し倒れを防止するためです。そのため、不渡報告に掲載されてしまうと、新たな運転資金の借入は難しくなってしまいます。

金融機関以外にも、手形・小切手の決済を受けられなかった取引先との関係では、取引の継続を中止されたり、金銭の支払を求める訴訟提起をされたりする可能性もあるでしょう。

「不渡りは2回目から大変なことになる。」と言われることもありますが、実際には1回目でも不渡りを出してしまうと事業を継続するのが難しくなります。

参照:電子交換所規則|一般社団法人全国銀行協会

半年以内に2回目の不渡りで銀行取引停止処分となり事実上の倒産

1回目の不渡りから半年以内に2回目の不渡りを出すと、銀行取引停止処分となります(規則42条)。銀行取引停止処分になると、2年もの間、当座預金口座を利用することや融資を受けることができなくなります(規則39条)。

当然のことながら、当座預金口座なしでは手形・小切手を利用することはできません。運転資金が足りなくなっても、つなぎ融資すら受けることができなくなるため、銀行取引停止処分を受けてからも事業を継続するのは難しいでしょう。そのため、銀行取引停止処分は、事実上の倒産と言われているのです。

上場企業が銀行取引停止処分を受けたときには、上場廃止基準に該当するものとして上場廃止となります。上場廃止となった株式は、整理銘柄に移行し、1か月程度で株式市場での取引ができなくなります。

参照:上場廃止基準の概要|日本取引所グループ

不渡りは原因別に3種類!出してはいけない不渡りは1号

不渡りは、原因と内容によって次の3種類に区別されます。

  • 0号不渡り
  • 1号不渡り
  • 2号不渡り

この中で、銀行取引停止処分につながる不渡りは「1号不渡り」です。「0号不渡り」や「2号不渡り」は、手形・小切手の決済ができないという理由で「不渡り」に当たりますが、会社の信用低下や銀行取引停止処分という結果につながるものではありません。そのため、単に「不渡り」と呼ぶときには「1号不渡」のみを指すのが一般的です。

以下では、不渡りの種類を明確に区別するために、それぞれの不渡りの内容を詳しく解説します。

0号不渡り

0号不渡りとは、手形・小切手を発行した会社の信用とは関係のない原因で決済できない場合の不渡りのことです。

0号不渡りの例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 手形・小切手の形式面に不備があったケース(振出人の署名、支払期日、支払金額などの記載漏れ)
  • 手形の支払期日が経過する前に換金しようとしたケース
  • 手形・小切手の支払呈示期間(有効期間)が経過してしまったケース

0号不渡りについては、「不渡報告」への掲載や金融機関への通知はされません。「不渡報告」は、掲載された会社の信用性に問題があることを加盟する金融機関に通知するものですが、0号不渡りは会社の信用性とは関係がないので、「不渡報告」に掲載する必要がないためです。

0号不渡りを起こしても、金融機関との関係で会社の信用性を低下させることはありません。しかし、手形・小切手の形式不備で取引先が決済できなかったときには、取引先に迷惑をかけることになるため、手形・小切手を発行する際は形式面の不備がないよう十分に注意しましょう。

1号不渡り

1号不渡りとは、振出人(手形・小切手を発行した人)の信用に関係する原因で、手形・小切手の決済ができなかった場合の不渡りのことです。一般に「不渡り」とは、1号不渡りのことを指します。

1号不渡りの原因としては、次の2つが挙げられます。

  • 当座預金の残高が不足していたケース
  • 手形・小切手の決済前に当座預金を解約していたケース

1号不渡りを出した場合は、前の項目で説明したとおり、「不渡報告」への掲載と加盟する金融機関への通知がおこなわれます。さらに、1回目の不渡りから半年以内に2回目の不渡りを出したときには、銀行取引停止処分となります。

会社が事業を継続するうえでは、何よりも避けなければならないのが1号不渡りを出すことです。1回目の1号不渡りを出してしまうと、それから間もなく2号不渡りを出して事実上の倒産となってしまうケースがほとんどです。

2号不渡り

0号不渡りにも1号不渡りにも該当しない不渡りは、2号不渡りとして扱われます。

2号不渡りの例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 盗まれた手形・小切手が決済されなかったケース
  • 詐欺によって発行された手形・小切手が決済されなかったケース
  • 偽造・変造された手形・小切手が決済されなかったケース
  • 手形・小切手を発行した原因となる契約の不履行で決済されなかったケース(請負契約の不履行、商品の引き渡しが未了など)

2号不渡りが出された場合は、1号不渡りと同様に金融機関の「不渡届」が作成されます。この場合、振出人は、手形・小切手に記載された金額相当の「異議申立供託金」を用意することで、「異議申立」が可能です(規則45条)。異議申立がおこなわれると、「不渡報告」への掲載や銀行取引停止処分といった措置は猶予されます。

2号不渡りは振出人の信用と関係のない不渡りですが、異議申立をしなければ、不渡報告への掲載や銀行取引停止処分によって会社が重大な損害を受けることになります。2号不渡りが出されたときには、すぐに異議申立の手続きをおこなってください。

不渡りを起こすとどうなる?出した人と受取人に与える影響

不渡りを出すと、出した人(振出人)だけでなく受取人にも大きな影響を与える可能性があります。

振出人は、金融機関や取引先の信用を失うだけでなく、取引先との訴訟問題に発展する可能性もあるでしょう。受取人は、手形・小切手が決済されることを前提に行動するため、急な資金不足により多大な損害を被ることになります。

以下では、振出人と受取人それぞれについて、不渡りを出した場合の影響を詳しく解説します。

不渡りを出すと信用問題に影響!法的な問題に発展する場合も

振出人についての不渡りを出した場合の影響は、金融機関に対する影響と取引先に対する影響に分けられます。

金融機関に対する影響としては、既に説明したとおり、不渡り報告への掲載と通知によって会社の信用が大きく低下します。1回目の不渡りであっても、信用の低下によって新規の融資を受けることは難しくなってしまうでしょう。2回目の不渡りを出すと銀行取引停止処分となり、銀行との取引が完全に絶たれてしまいます。

取引先との関係でも、不渡りを出した会社は信用を失うことになるでしょう。長く取引を続けてきた相手でも、以後の取引を停止されてしまう可能性があります。取引を継続できた場合でも、手形・小切手での取引から現金決済に変更される可能性が高いでしょう。

不渡りを出して以降も、取引先への支払ができないときには訴訟問題に発展することもあります。手形・小切手の決済ができなかったことで取引先に損害が発生した場合には、手形・小切手の金額に加えて損害賠償を請求される可能性もあります。

受取人は事前に立てた事業計画が崩れ経営不振に繋がる恐れも

手形・小切手の受取人は、正常に決済がおこなわれることを前提に事業計画を立てます。不渡りで予定していた資金を得られなければ、在庫の仕入れや取引先への支払いができずに最悪の場合は連鎖倒産してしまう可能性もあるでしょう。

振出人の資金不足により手形・小切手の決済ができなかったとしても、金融機関が支払いを保障してくれるわけではありません。

受取人は振出人に対して、決済できなかった金銭の支払いと決済できなかったことによる損害賠償を請求できます。しかし、不渡りを出した振出人から金銭を回収するのは難しい場合が多いでしょう。訴訟費用や弁護士費用などをかけても、結局のところ回収不能で費用が無駄になる可能性は高いでしょう。

不渡りを出さないためできること!事前対策で避けよう

1回でも不渡りを出してしまうと、会社の信用は大きく失墜してしまいます。会社経営を継続するには、万が一にでも不渡りを出さないよう事前の対策が重要です。

不渡りを出さないための事前対策としては、次の2つの方法が挙げられます。

  • 決済期日を統一する
  • 手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にする

以下では、事前対策の具体的な内容を解説します。さらに、資金不足により不渡りを出してしまいそうなときや既に不渡りを出してしまったときの解決方法も紹介します。

決済期日を統一すると支出が集中する日を明確に把握できる

不渡りは、決済期日における当座預金の不足によって起こります。手形の決済期日が統一されていない場合、決済期日に合わせて当座預金の残高を調整しなければならないため、管理が難しくなってしまうでしょう。

決済期日を統一すると、決済金額の管理が容易になるため当座預金にいつまでにいくら入金しておけば良いかが明確になります。

不渡りを出さないためには、決済期日の把握漏れが原因であっても当座預金の不足が起こらないようにしなければなりません。決済期日と金額を漏れなく管理するには、決済期日を統一しておくのがおすすめです。

手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関にするのもおすすめ

手形決済用口座貯蓄用口座が同じ金融機関の場合、手形決済用口座(当座預金)に不足があると、貯蓄用口座(普通預金)の残高も利用できなくなってしまうことがあります。

手形決済用口座と貯蓄用口座が同時に利用できなくなると、たちまち資金繰りが悪化して、立て直すことのできない損害が発生する可能性もあるでしょう。手形決済用口座と貯蓄用口座を別の金融機関で開設しておけば、両方が同時に利用できなくなる心配はありません。

運転資金に余裕がある場合には、複数の金融機関で口座を管理して、予期せぬ事態に備えるのが良いでしょう。

既に不渡りを出してしまった企業はどうする?解決方法について

既に不渡りを出してしまった、現状では支払期日に決済できる見込みがないといった場合、次の3つの解決方法が考えられます。

  • 受取人に手形のジャンプを依頼して猶予期間を延長してもらう
  • 銀行に過振り(過剰振込)を依頼して一時的に立て替えてもらう
  • 保有している売掛金を売却(ファクタリング)して現金を用意する

以下では、それぞれの内容について詳しく解説します。

受取人に手形のジャンプを依頼して猶予期間を延長してもらう

手形のジャンプとは、受取人の合意によって支払期日を延長してもらうことです。支払期日を延長してもらえれば手形が決済に回されることもないため、不渡りとはなりません。

ただし、手形をジャンプしても受取人には何のメリットもありません。むしろ手形をジャンプしている期間に振出人の資金繰りが改善しなければ、決済金を回収できなくなるリスクが高まります。そのため、将来的な入金の見込みを説明したり、利息を支払ったりするなど、受取人を説得する材料がなければ、手形のジャンプは難しいでしょう。

また、受取人に手形のジャンプを依頼すると、資金繰りが厳しいことを知られることになるため、取引先としての信用を失う可能性もあります。

受取人が手形のジャンプに同意してくれたときには、旧手形を回収して新しく手形を発行するか、手形の支払期日を訂正することで、支払期日を延期できます。

銀行に過振り(過剰振込)を依頼して一時的に立て替えてもらう

過振りとは、手形・小切手の決済をするための当座預金が不足している場合に、銀行が一時的に立て替え払いをしてくれることを言います。

銀行が過振りの対応をしてくれるのは、長期間の取引で銀行からの信用が高い場合や、定期預金による担保がある場合など信用のある会社に対してのみです。過振りをしても資金繰りが改善する見込みがなく回収不能となる可能性があるときには、過振り対応はしてもらえません。

銀行に過振りを依頼する際は、資金繰りの見込みを説明する、担保を提供するなどの方法によって銀行を説得する必要があります。

銀行が過振り対応をしてくれたときには、不渡報告への掲載や銀行取引停止処分は避けられますが、過振りを依頼した銀行の信用は失う可能性が高いでしょう。

保有している売掛金を売却(ファクタリング)して現金を用意

ファクタリングとは、ファクタリング会社に売掛金を譲渡して現金化することを言います。ファクタリングを利用すると、支払期日が到来していない売掛金を現金化できるため、急な資金不足に対応できます。

ファクタリングは、帳簿上は黒字の場合に有効な手段です。赤字の場合にファクタリングを利用しても一時しのぎにしかなりません。ファクタリングには手数料もかかるため、常にファクタリングに頼る状況になると会社に利益が残らなくなってしまいます。ファクタリングは、あくまで一時的な応急措置として利用するようにしてください。