法人破産手続きの流れや期間をわかりやすく解説
法人破産の手続きは、ほとんどが管財事件となるため、手続の流れも複雑で期間もかかります。
法人破産を検討するには、費用や手続きの流れ、手続きにかかる期間を理解しておく必要があるでしょう。
今回は、法人破産手続きにかかる費用、手続きの流れ、手続きにかかる期間などをわかりやすく解説します。法人破産を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
法人破産手続きは破産法に基づき会社を清算すること
法人破産の手続きは、法人が支払不能もしくは債務超過の状態となったときに、破産法に基づき会社を清算する手続きです。
法人破産の手続きを開始するには、単に経営状況が悪化しただけではなく、支払不能もしくは債務超過の状態であることが必要です。支払不能とは、債務の支払能力がなく、債務を継続的に返済し続けるのが困難な状態と言います。債務超過とは、会社の資産よりも、負債の方が多い状態のことです。
法人破産をすると、法人の財産はすべて換価処分されて、債権者に配当されます。債権者への配当により破産手続は終了し、会社の法人格と負債も消滅します。
法人が支払不能もしくは債務超過の状態にあり、経営を続けるのが困難な場合には、法人破産の手続きを検討することになるでしょう。
法人の破産は原則的に管財事件となる
法人の破産では、同時廃止になるケースはほとんどありません。法人の破産は、破産管財人が選任される管財事件が原則です。
同時廃止とは、破産開始決定と同時に手続きが終了する事件です。債権・債務を詳細に調査する必要がなく、換価処分する財産もないときには、同時廃止となります。個人の破産事件では、60%〜70%ほどが同時廃止です。
管財事件とは、破産管財人を選任して破産者の債権・債務の調査、財産の換価処分、債権者への配当などを行う破産の手続きのことです。法人は、さまざまな財産を保有しており、債権者や取引先など関係者も多数いることが多いため、管財事件となるケースが大半となっています。
自分で手続きせずに弁護士のみ対応可の予納金が少ない少額管財も検討
管財事件には、裁判所に納める予納金の額が少ない少額管財事件もあります。
東京地方裁判所の場合、通常の管財事件では、予納金の額は最低でも70万円です。破産を検討している法人にとって、予納金は大きな負担です。予納金を準備できずに破産をあきらめる法人もあるでしょう。
そこで、一部の裁判所では「少額管財」の制度を導入しています。少額管財の場合、予納金の額は20万円からと通常の管財事件と比較して低い金額に設定されています。通常の管財事件と比べて、手続きも早く終わるため、積極的に利用を検討したいところです。
少額管財を利用するには、弁護士が代理人となる必要があります。少額管財の申立代理人となる弁護士は、申し立て前の財産調査や換価処分など、破産管財人の業務負担を減らすための活動を行います。
まずは早めに弁護士へ相談!負債や資産の状況を伝える
法人破産の手続きは、少額管財を利用しない場合でも、自分自身で対応するのは難しいでしょう。法人破産を検討するのなら、早めに弁護士へ相談してください。
弁護士に相談する際は、負債や資産の状況をできる限り詳細に伝えましょう。情報をしっかり伝えることで、弁護士としても適切な対応がしやすくなります。弁護士に相談することで、管財事件、少額管財のどちらで申し立てをするのか、事前の準備をどのように進めるのかなどの方針を立てられます。
法人破産申立までの流れ
弁護士に相談してから法人破産の申し立てをするまでの流れは、次のとおりです。
- 弁護士から債権者へ受任通知の発送
- 従業員を解雇し今後の手続きを説明
- 経営者は賃借している事務所や店舗を明渡す
- 弁護士と一緒に裁判所に提出する申立書や必要資料を準備
- 取締役会を開催して破産手続きの承認決議を取る
- 弁護士が裁判所に破産の申し立てをする
- 裁判所が決定した予納金を納付する
ここからは、1つ1つの手続きについて詳しく解説します。
弁護士から債権者へ受任通知の発送
まずは、弁護士と相談して、会社の負債や資産、従業員や取引先などの状況をしっかりと説明します。そのうえで、破産の方針が決まったら弁護士と委任契約を締結します。このタイミングで弁護士への着手金の支払いが必要です。
弁護士は、各債権者に破産手続きの代理人に就任したことと、以後の連絡は弁護士が窓口となる旨の受任通知を発送します。既に滞納している債務がある場合には、受任通知の発送までは早めに進めるべきです。
受任通知が発送されたあとは、債権者からの連絡はすべて弁護士が対応します。債権者からの督促を受けていた場合、受任通知を送付すると督促は止まります。督促に頭を悩ませていた人は、受任通知を送付した段階で精神的なストレスは緩和されるでしょう。
従業員を解雇し今後の手続きを説明
破産の方針が決定したら、どこかのタイミングで従業員を解雇しなければなりません。従業員に破産と解雇を告げるタイミングについては慎重に検討する必要があります。
まず、破産申し立ての準備に協力してもらう従業員に対しては、早めに解雇を告げて破産手続きへの協力を求めることになるでしょう。それ以外の従業員に対しては、破産申し立ての当日に解雇を告げるケースもあります。
従業員への解雇通告と手続きの説明については、できる限り混乱を避けられるよう十分にタイミングを見計らって行いましょう。
なお、破産を原因とする従業員の解雇についても、労働基準法が適用されます。解雇予告手当や未払賃金の支払いについても、解雇を告げる前に検討しておかなければなりません。
経営者は賃借している事業所や店舗を明渡す
法人が事務所や店舗を賃借している場合には、明渡す必要があります。明渡しのタイミングは、従業員へ解雇を告げるタイミングや、破産申し立てのタイミングを含めて判断することになるでしょう。
一般論では、破産の方針が決まったら、できる限り早く明渡すべきです。明渡しまでの時間が長引くと、その分だけ賃料がかかりますし、会社の運営を続けると取引先にも迷惑をかけることになります。
弁護士と一緒に裁判所に提出する申立書や必要資料を準備
裁判所に破産の申し立てをするには、申立書や必要書類を準備する必要があります。
破産の申立書は、弁護士が法人の代表者から必要事項を聴き取ったうえで作成を進めます。必要書類については、弁護士の指示のもと、法人側で準備しなくてはなりません。
必要書類の中には準備に時間がかかるものもあるため、早めに取り掛かるようにしましょう。経営が悪化してから破産を決断するまでに期間が空いている場合、決算すらまともにできていない会社もあります。直近の決算ができていないときには、税理士にも協力してもらって、早急に決算書の作成を進める必要があります。
法人破産に必要な主な書類一覧
法人破産の主な必要書類は、次のとおりです。財産や負債の内容、手続きする裁判所によって必要書類が変わることもあるので、弁護士と協議のうえで準備を進めてください。
- 法人登記の全部事項証明書
- 決算書および附属明細書(直近2期分)
- 申し立て時点での貸借対照表
- 破産を承認した取締役会の議事録
- 事務所の賃貸契約書のコピー
- 所有する不動産の全部事項証明書
- 所有する自動車の車検証、査定書のコピー
- 預金通帳のコピー
- 有価証券のコピー
- 保険証書、解約返戻金計算書のコピー
- 雇用関係書類のコピー(雇用契約書、賃金台帳など)
- 債権関係書類のコピー(売掛金など)
- 訴訟関係書類のコピー
取締役会を開催して破産手続きの承認決議を取る
取締役会設置会社が破産をするには、取締役会の承認決議が必要です。
取締役会では取締役全会一致で破産を承認し、その旨の議事録を作成してください。破産を承認する取締役会議事録には、取締役全員の署名・押印が必要です。
作成した取締役会議事録は、申立書やその他の必要書類と一緒に裁判所に提出します。
弁護士が裁判所に破産の申し立てをする
申立書の作成と必要書類の収集が完了したら、弁護士が裁判所に破産の申し立てをします。申立をする裁判所は、原則として法人の本店所在地を管轄する地方裁判所です。
法人破産の申し立てをする際は、法人の債務の連帯保証人となっている代表者も同時に破産を申し立てるのが一般的です。
破産申し立ての際には、申立書に収入印紙を貼付する必要があります。収入印紙の額は、法人のみが破産する場合は1,000円、代表者も同時に申し立てする場合は1,500円です。
裁判所が決定した予納金を納付する
破産の申し立てをすると、裁判所から予納金の納付書が交付されます。納付書を受け取ったら、裁判所の窓口で現金一括で予納金を納付します。
予納金の額は、手続きの種類や債務の額によって決められており、減額や分割払いはできません。管財事件の予納金は高額です。予納金を納付しなければ破産開始決定がされませんので、申し立て前の段階で準備しておくようにしてください。
破産手続き開始決定後の流れ
破産の申し立てをした後は、次の流れで手続きが進行します。
- 裁判所による開始決定と管財人の選任
- 会社の財産や関係書類を破産管財人に引き継ぐ
- 債権者集会は破産の規模によって複数回行われる
- 債権者への配当が行われ破産手続きが終結する
それぞれの手続きについて詳しく見ていきましょう。
裁判所による開始決定と管財人の選任
申立書類の提出と予納金の納付を済ませると、裁判所による開始要件の審査が行われます。開始要件の審査では、債務者の審尋(裁判官との面談)が実施されることもあります。債務者の審尋については、裁判所によって運用の違いがあり、書類審査のみや、弁護士との面談で済むケースも少なくありません。
開始要件の審査が終わると、裁判所による破産手続きの開始決定がされます。開始決定までにかかる期間は、予納金の納付や開始要件の審査がスムーズに進行すれば、申立書類の提出から2週間ほどです。
破産手続きの開始決定と同時に、破産管財人が選任されます。破産管財人が選任されると、法人の財産の管理処分権は破産管財人に移行します。
会社の財産や関係書類を破産管財人に引き継ぐ
開始決定の後は、破産管財人が主体となって手続きが進行します。
最初に、破産管財人、代表者、代理人弁護士による面談が行われ、破産管財人から破産に至る経緯や法人の財産などについての聴取を受けます。面談では厳しい指摘を受けることもあるので、しっかりと準備して面談に望むようにしましょう。
破産管財人が選任されてからは、法人宛の郵便物がすべて破産管財人に転送されるようになります。法人の財産もすべて破産管財人が管理するため、破産者が財産を処分することはできなくなります。
破産者には破産管財人に協力する義務がありますので、破産管財人の質問や要望には誠実に対応してください。
破産管財人は、聴取の結果や引き継いだ資料をもとに負債や資産を調査し、資産の換価処分を行います。
債権者集会は破産の規模によって複数回行われる
開始決定から数か月経つと、裁判所の期日指定によって債権者集会が開催されます。債権者集会は、破産に至った経緯や資産の状況、破産管財人の調査・換価処分の状況などを裁判所や債権者に報告する手続きです。
債権者集会は、2~3か月に1度のペースで開催されます。債権者集会の回数は破産の規模によって異なり、1回で終わるケースもあります。
債権者集会に債権者が出席するケースは少なく、裁判官、破産管財人、代表者、代理人弁護士の4者で開催されることがほとんどです。
債権者への配当が行われ破産手続きが終結する
破産管財による調査・換価処分が終わると、債権者への配当が行われます。配当には優先順位があり、一般債権者への配当には至らないケースも少なくありません。
債権者への配当により破産手続きは終結して、破産手続き終了の登記により法人は消滅します。
破産手続き終結までにかかる期間は平均で6ヶ月から1年
破産手続き終結までにかかる期間の目安は6ヶ月から1年です。会社の規模や資産の状況によっては、さらに期間を要することもあります。
破産手続きを円滑に進めるために誠実に対応することが重要
破産手続きを円滑に進めるには、すべての関係者に誠実に対応することが重要です。破産に至る経緯や資産の状況を最も理解しているのは、代表者です。代理人弁護士や破産管財人は、代表者の協力なしには調査を進められません。
弁護士に手続きを依頼した場合でも、破産手続きにおいては代表者自身が対応しなければならないこともあります。資料の準備や、破産管財人の質問への回答に時間がかかると、その分だけ手続きの時間もかかりますので、スムーズな対応を心がけるようにしましょう。
早ければ数ヶ月!少額管財は手続きも迅速に終了する
少額管財は予納金の額が少なくなるだけでなく、手続きも簡易化されています。申立の準備には管財事件と同程度の期間が必要ですが、開始決定以降は管財事件の半分程度の期間で終結します。
少額管財を利用できる状況であるならば、積極的に利用を検討しましょう。少額管財を利用するには弁護士への依頼が必須となるため、まずは弁護士にご相談ください。
法人破産手続きの流れや期間をわかりやすく解説
法人破産の手続きは、ほとんどが管財事件となるため、手続の流れも複雑で期間もかかります。
法人破産を検討するには、費用や手続きの流れ、手続きにかかる期間を理解しておく必要があるでしょう。
今回は、法人破産手続きにかかる費用、手続きの流れ、手続きにかかる期間などをわかりやすく解説します。法人破産を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
法人破産手続きは破産法に基づき会社を清算すること
法人破産の手続きは、法人が支払不能もしくは債務超過の状態となったときに、破産法に基づき会社を清算する手続きです。
法人破産の手続きを開始するには、単に経営状況が悪化しただけではなく、支払不能もしくは債務超過の状態であることが必要です。支払不能とは、債務の支払能力がなく、債務を継続的に返済し続けるのが困難な状態と言います。債務超過とは、会社の資産よりも、負債の方が多い状態のことです。
法人破産をすると、法人の財産はすべて換価処分されて、債権者に配当されます。債権者への配当により破産手続は終了し、会社の法人格と負債も消滅します。
法人が支払不能もしくは債務超過の状態にあり、経営を続けるのが困難な場合には、法人破産の手続きを検討することになるでしょう。
法人の破産は原則的に管財事件となる
法人の破産では、同時廃止になるケースはほとんどありません。法人の破産は、破産管財人が選任される管財事件が原則です。
同時廃止とは、破産開始決定と同時に手続きが終了する事件です。債権・債務を詳細に調査する必要がなく、換価処分する財産もないときには、同時廃止となります。個人の破産事件では、60%〜70%ほどが同時廃止です。
管財事件とは、破産管財人を選任して破産者の債権・債務の調査、財産の換価処分、債権者への配当などを行う破産の手続きのことです。法人は、さまざまな財産を保有しており、債権者や取引先など関係者も多数いることが多いため、管財事件となるケースが大半となっています。
自分で手続きせずに弁護士のみ対応可の予納金が少ない少額管財も検討
管財事件には、裁判所に納める予納金の額が少ない少額管財事件もあります。
東京地方裁判所の場合、通常の管財事件では、予納金の額は最低でも70万円です。破産を検討している法人にとって、予納金は大きな負担です。予納金を準備できずに破産をあきらめる法人もあるでしょう。
そこで、一部の裁判所では「少額管財」の制度を導入しています。少額管財の場合、予納金の額は20万円からと通常の管財事件と比較して低い金額に設定されています。通常の管財事件と比べて、手続きも早く終わるため、積極的に利用を検討したいところです。
少額管財を利用するには、弁護士が代理人となる必要があります。少額管財の申立代理人となる弁護士は、申し立て前の財産調査や換価処分など、破産管財人の業務負担を減らすための活動を行います。
まずは早めに弁護士へ相談!負債や資産の状況を伝える
法人破産の手続きは、少額管財を利用しない場合でも、自分自身で対応するのは難しいでしょう。法人破産を検討するのなら、早めに弁護士へ相談してください。
弁護士に相談する際は、負債や資産の状況をできる限り詳細に伝えましょう。情報をしっかり伝えることで、弁護士としても適切な対応がしやすくなります。弁護士に相談することで、管財事件、少額管財のどちらで申し立てをするのか、事前の準備をどのように進めるのかなどの方針を立てられます。
法人破産申立までの流れ
弁護士に相談してから法人破産の申し立てをするまでの流れは、次のとおりです。
- 弁護士から債権者へ受任通知の発送
- 従業員を解雇し今後の手続きを説明
- 経営者は賃借している事務所や店舗を明渡す
- 弁護士と一緒に裁判所に提出する申立書や必要資料を準備
- 取締役会を開催して破産手続きの承認決議を取る
- 弁護士が裁判所に破産の申し立てをする
- 裁判所が決定した予納金を納付する
ここからは、1つ1つの手続きについて詳しく解説します。
弁護士から債権者へ受任通知の発送
まずは、弁護士と相談して、会社の負債や資産、従業員や取引先などの状況をしっかりと説明します。そのうえで、破産の方針が決まったら弁護士と委任契約を締結します。このタイミングで弁護士への着手金の支払いが必要です。
弁護士は、各債権者に破産手続きの代理人に就任したことと、以後の連絡は弁護士が窓口となる旨の受任通知を発送します。既に滞納している債務がある場合には、受任通知の発送までは早めに進めるべきです。
受任通知が発送されたあとは、債権者からの連絡はすべて弁護士が対応します。債権者からの督促を受けていた場合、受任通知を送付すると督促は止まります。督促に頭を悩ませていた人は、受任通知を送付した段階で精神的なストレスは緩和されるでしょう。
従業員を解雇し今後の手続きを説明
破産の方針が決定したら、どこかのタイミングで従業員を解雇しなければなりません。従業員に破産と解雇を告げるタイミングについては慎重に検討する必要があります。
まず、破産申し立ての準備に協力してもらう従業員に対しては、早めに解雇を告げて破産手続きへの協力を求めることになるでしょう。それ以外の従業員に対しては、破産申し立ての当日に解雇を告げるケースもあります。
従業員への解雇通告と手続きの説明については、できる限り混乱を避けられるよう十分にタイミングを見計らって行いましょう。
なお、破産を原因とする従業員の解雇についても、労働基準法が適用されます。解雇予告手当や未払賃金の支払いについても、解雇を告げる前に検討しておかなければなりません。
経営者は賃借している事業所や店舗を明渡す
法人が事務所や店舗を賃借している場合には、明渡す必要があります。明渡しのタイミングは、従業員へ解雇を告げるタイミングや、破産申し立てのタイミングを含めて判断することになるでしょう。
一般論では、破産の方針が決まったら、できる限り早く明渡すべきです。明渡しまでの時間が長引くと、その分だけ賃料がかかりますし、会社の運営を続けると取引先にも迷惑をかけることになります。
弁護士と一緒に裁判所に提出する申立書や必要資料を準備
裁判所に破産の申し立てをするには、申立書や必要書類を準備する必要があります。
破産の申立書は、弁護士が法人の代表者から必要事項を聴き取ったうえで作成を進めます。必要書類については、弁護士の指示のもと、法人側で準備しなくてはなりません。
必要書類の中には準備に時間がかかるものもあるため、早めに取り掛かるようにしましょう。経営が悪化してから破産を決断するまでに期間が空いている場合、決算すらまともにできていない会社もあります。直近の決算ができていないときには、税理士にも協力してもらって、早急に決算書の作成を進める必要があります。
法人破産に必要な主な書類一覧
法人破産の主な必要書類は、次のとおりです。財産や負債の内容、手続きする裁判所によって必要書類が変わることもあるので、弁護士と協議のうえで準備を進めてください。
- 法人登記の全部事項証明書
- 決算書および附属明細書(直近2期分)
- 申し立て時点での貸借対照表
- 破産を承認した取締役会の議事録
- 事務所の賃貸契約書のコピー
- 所有する不動産の全部事項証明書
- 所有する自動車の車検証、査定書のコピー
- 預金通帳のコピー
- 有価証券のコピー
- 保険証書、解約返戻金計算書のコピー
- 雇用関係書類のコピー(雇用契約書、賃金台帳など)
- 債権関係書類のコピー(売掛金など)
- 訴訟関係書類のコピー
取締役会を開催して破産手続きの承認決議を取る
取締役会設置会社が破産をするには、取締役会の承認決議が必要です。
取締役会では取締役全会一致で破産を承認し、その旨の議事録を作成してください。破産を承認する取締役会議事録には、取締役全員の署名・押印が必要です。
作成した取締役会議事録は、申立書やその他の必要書類と一緒に裁判所に提出します。
弁護士が裁判所に破産の申し立てをする
申立書の作成と必要書類の収集が完了したら、弁護士が裁判所に破産の申し立てをします。申立をする裁判所は、原則として法人の本店所在地を管轄する地方裁判所です。
法人破産の申し立てをする際は、法人の債務の連帯保証人となっている代表者も同時に破産を申し立てるのが一般的です。
破産申し立ての際には、申立書に収入印紙を貼付する必要があります。収入印紙の額は、法人のみが破産する場合は1,000円、代表者も同時に申し立てする場合は1,500円です。
裁判所が決定した予納金を納付する
破産の申し立てをすると、裁判所から予納金の納付書が交付されます。納付書を受け取ったら、裁判所の窓口で現金一括で予納金を納付します。
予納金の額は、手続きの種類や債務の額によって決められており、減額や分割払いはできません。管財事件の予納金は高額です。予納金を納付しなければ破産開始決定がされませんので、申し立て前の段階で準備しておくようにしてください。
破産手続き開始決定後の流れ
破産の申し立てをした後は、次の流れで手続きが進行します。
- 裁判所による開始決定と管財人の選任
- 会社の財産や関係書類を破産管財人に引き継ぐ
- 債権者集会は破産の規模によって複数回行われる
- 債権者への配当が行われ破産手続きが終結する
それぞれの手続きについて詳しく見ていきましょう。
裁判所による開始決定と管財人の選任
申立書類の提出と予納金の納付を済ませると、裁判所による開始要件の審査が行われます。開始要件の審査では、債務者の審尋(裁判官との面談)が実施されることもあります。債務者の審尋については、裁判所によって運用の違いがあり、書類審査のみや、弁護士との面談で済むケースも少なくありません。
開始要件の審査が終わると、裁判所による破産手続きの開始決定がされます。開始決定までにかかる期間は、予納金の納付や開始要件の審査がスムーズに進行すれば、申立書類の提出から2週間ほどです。
破産手続きの開始決定と同時に、破産管財人が選任されます。破産管財人が選任されると、法人の財産の管理処分権は破産管財人に移行します。
会社の財産や関係書類を破産管財人に引き継ぐ
開始決定の後は、破産管財人が主体となって手続きが進行します。
最初に、破産管財人、代表者、代理人弁護士による面談が行われ、破産管財人から破産に至る経緯や法人の財産などについての聴取を受けます。面談では厳しい指摘を受けることもあるので、しっかりと準備して面談に望むようにしましょう。
破産管財人が選任されてからは、法人宛の郵便物がすべて破産管財人に転送されるようになります。法人の財産もすべて破産管財人が管理するため、破産者が財産を処分することはできなくなります。
破産者には破産管財人に協力する義務がありますので、破産管財人の質問や要望には誠実に対応してください。
破産管財人は、聴取の結果や引き継いだ資料をもとに負債や資産を調査し、資産の換価処分を行います。
債権者集会は破産の規模によって複数回行われる
開始決定から数か月経つと、裁判所の期日指定によって債権者集会が開催されます。債権者集会は、破産に至った経緯や資産の状況、破産管財人の調査・換価処分の状況などを裁判所や債権者に報告する手続きです。
債権者集会は、2~3か月に1度のペースで開催されます。債権者集会の回数は破産の規模によって異なり、1回で終わるケースもあります。
債権者集会に債権者が出席するケースは少なく、裁判官、破産管財人、代表者、代理人弁護士の4者で開催されることがほとんどです。
債権者への配当が行われ破産手続きが終結する
破産管財による調査・換価処分が終わると、債権者への配当が行われます。配当には優先順位があり、一般債権者への配当には至らないケースも少なくありません。
債権者への配当により破産手続きは終結して、破産手続き終了の登記により法人は消滅します。
破産手続き終結までにかかる期間は平均で6ヶ月から1年
破産手続き終結までにかかる期間の目安は6ヶ月から1年です。会社の規模や資産の状況によっては、さらに期間を要することもあります。
破産手続きを円滑に進めるために誠実に対応することが重要
破産手続きを円滑に進めるには、すべての関係者に誠実に対応することが重要です。破産に至る経緯や資産の状況を最も理解しているのは、代表者です。代理人弁護士や破産管財人は、代表者の協力なしには調査を進められません。
弁護士に手続きを依頼した場合でも、破産手続きにおいては代表者自身が対応しなければならないこともあります。資料の準備や、破産管財人の質問への回答に時間がかかると、その分だけ手続きの時間もかかりますので、スムーズな対応を心がけるようにしましょう。
早ければ数ヶ月!少額管財は手続きも迅速に終了する
少額管財は予納金の額が少なくなるだけでなく、手続きも簡易化されています。申立の準備には管財事件と同程度の期間が必要ですが、開始決定以降は管財事件の半分程度の期間で終結します。
少額管財を利用できる状況であるならば、積極的に利用を検討しましょう。少額管財を利用するには弁護士への依頼が必須となるため、まずは弁護士にご相談ください。