自己破産の真実!デメリットとその影響を詳しく解説

自己破産の真実!デメリットとその影響を詳しく解説

借金が帳消しになるため、自己破産を検討している方も多いのではないでしょうか。

しかし、自己破産にはこのようなメリットがある一方で、デメリットもあります。

自己破産を検討する際には、メリットだけでなくデメリットを確認した上で結論を出すことが重要です。

そこで、この記事では、自己破産の真実として、自己破産のデメリットとその影響を詳しく解説します。

自己破産のメリット・デメリットを把握した上で、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

目次

「したもん勝ち」は誤解!自己破産のデメリットを正しく理解する

自己破産をすれば、借金はすべてなくなるため、自己破産は「したもん勝ち」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、自己破産には多くのデメリットがあることを認識しておく必要があります。

ここでは、自己破産の9つのデメリットについて解説します。

裁判所が認めてくれないかも?11の「免責不許可事由」

11の「免責不許可事由」

自己破産のデメリットとして、「免責不許可事由」に該当する場合、自己破産できないことが挙げられます。

免責不許可事由とは、債務(借金)が免責されない原因、つまり自己破産が認められないケースのことで、破産法(第252条)で定められています。

自己破産とは裁判所に破産を申し立てて、免責される(債務(借金)の責任が免除される)ことによって債務がなくなることをいいます。

しかし、破産法(第252条)で定められた「免責不許可事由」に該当する場合、免責されません。

つまり、免責不許可事由に該当すると、自己破産できないということです。

ただし、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量で免責されることがあります。

そのため、免責不許可事由に該当したとしても、自己破産できることがあります。

ここでは、11の免責不許可事由について解説します。

不当に財産を減少させる行為

免責不許可事由として、不当に財産を減少させる行為が挙げられます(破産法第252条1項1号)。

破産法第252条1項1号

一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

条文中の破産財団とは、破産者の財産のうち、自己破産後も所有が認められている財産(自由財産)以外の財産のことをいいます。

破産財団の財産は、債権者に配分されます。

つまり、債権者に配分される財産(破産財団)を隠したり、壊したりするなど不当に財産を減少させる行為をすると、免責されないのです。

破産財団に含まれる財産には、家や土地などの不動産や車などの資産が該当します。

不当に債務を負担する行為

免責不許可事由として、不当に債務を負担する行為が挙げられます(破産法第252条1項2号)。

破産法第252条1項2号

ニ 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

不当に債務を負担する行為には、次のような行為が当てはまります。

  • クレジットカードのショッピング枠の現金化
  • ヤミ金からの借入れ

このような行為は、返済の遅延や滞納などにより他社から借入れができない場合に行われる行為です。

これらの行為は、自己破産する場合に免責不許可事由になるおそれがあります。

というのは、破産手続の開始を遅延させる目的で、不当に債務を負担する行為を行ったと見なされるからです。

債権者を平等に扱わない行為

免責不許可事由になる行為として、債権者を平等に扱わない行為が挙げられます(破産法第252条1項3号)。

破産法第252条1項3号

三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

自己破産する場合、債権者を平等に扱わなければなりません。

特定の債権者に優先して債務(借金)を返済すると、不平等になってしまうからです。

例えば、親族や知人であっても優先して借金を返済すると、「債権者を平等に扱わない行為」になってしまいます。

そのため、親族や知人であっても、優先して借金を返済してはいけないのです。

収入に見合わない浪費やギャンブルなどにより借金をする行為

収入に見合わない浪費やギャンブルなどにより借金をする行為も、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項4号)。

破産法第252条1項4号

四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

条文にあるとおり、浪費やギャンブルなどにより借金をした場合、免責されません。

射幸行為とは、競輪・競馬やパチンコなどのギャンブルのことで、株式やFX取引なども射幸行為に含まれます。

しかし、このように免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量で免責されることがあります。

相手を騙して信用取引をする行為

免責不許可事由として、相手を騙して信用取引をする行為が挙げられます(破産法第252条1項5号)。

破産法第252条1項5号

五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

ここでいう信用取引とは、借金をすることです。

例えば、自己破産(破産手続開始)の申立てをしたにもかかわらず、クレジットカード会社に収入や借入額などについて嘘の申告をして借入れをした場合、「相手を騙して信用取引をする行為」に該当します。

借金を返済できないとわかっていながら、金融機関などからお金に借りる行為は悪質であるため、免責不許可事由に該当するのです。

帳簿など業務や財産に関する書類を隠す行為

帳簿など業務や財産に関する書類を隠す行為も、免責不許可事由になります(破産法第252条1項6号)。

破産法第252条1項6号

六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

例えば、確定申告書や決算書を隠したり、偽造したりするほか、改ざんすると、免責不許可事由に該当します。

ただし、故意に帳簿や書類の改ざんなどをやったのでなければ、免責不許可事由には該当しません。

虚偽の債権者名簿を提出する行為

虚偽の債権者名簿を提出する行為も、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項7号)。

破産法第252条1項7号

七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

債権者名簿(債権者一覧表)とは、自己破産手続において、裁判所に提出しなければならない書類で、すべての債権者の氏名や住所などを記載する必要があります。

債権者名簿に、一部の債権者を除外するなど虚偽の内容が含まれていた場合、免責不許可事由に該当します。

自己破産手続における「債権者を平等に扱わなければならない」という原則に反するおそれがあるからです。

例えば、親族や知人には早めに返済したいと考えて、債権者名簿に記載しない場合、免責不許可事由に該当します。

しかし、故意ではなく過失により、債権者名簿に一部の債権者を記載し忘れた場合は、免責不許可事由には該当しません。

ただし、債権者名簿に記載されなかった債権者に対しては、自己破産の対象にはならないので、注意が必要です。

説明の拒否や虚偽の発言をする行為

免責不許可事由として、説明の拒否や虚偽の発言をする行為が挙げられます(破産法第252条1項8号)。

破産法第252条1項8号

八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

条文にあるとおり、裁判所(裁判官、破産管財人)が行う調査に対して、説明を拒否したり、嘘をついたりすると、免責不許可事由に該当します

最終的に破産宣告をするのは、裁判官ですから、裁判官の心証が悪くなると、自己破産できなくなるおそれがあります。

そのため、裁判官や破産管財人には、嘘偽りなく、真摯に話すことが重要です。

管財業務を妨害する行為

管財業務を妨害する行為も、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項9号)。

破産法第252条1項9号

九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

破産管財人は、自己破産の申立人の財産の管理や配当などの破産手続を行います。

破産管財人などの職務を妨害すると、免責不許可事由に該当します。

そのため、破産管財人には、嘘偽りなく、真摯に話す必要があるのです。

破産管財人は、すべての自己破産手続に選任されるわけではなく、自己破産の申立人に一定の財産がある場合(管財事件)に選任されます。

過去7年以内に免責を受けている

過去7年以内に免責を受けている場合、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項10号)。

破産法第252条1項10号

十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日

参考:破産法 | e-Gov法令検索

過去7年以内に免責を受けている場合、つまり自己破産している場合は、原則として自己破産できません。

言い換えると、過去に自己破産している場合は、少なくとも7年以上経っていないと、自己破産できないということです。

ただし、前回の自己破産から7年以上経っていたとしても、必ずしも自己破産できるとは限りません。

2回目の自己破産ができるかどうかは、自己破産の申立人の事情を考慮して、裁判所が判断するからです。

自己破産手続に協力しない

自己破産手続に協力しない場合、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項11号)。

破産管財人への説明、破産者の重要財産の開示義務、免責についての調査や報告など自己破産手続に協力しないと、免責されません。

そのため、裁判所や破産管財人には、嘘偽りなく真摯に向き合ってください。

一定以上の財産を処分する必要がある

一定以上の財産を処分する必要がある

自己破産する場合、一定以上の財産を処分する必要があります。

具体的には、一定以上の財産を処分して、換金して、債権者への返済に充てます。

東京地方裁判所では、財産の処分基準を定めており、次の2つの基準に分けられます。

  • 99万円を超える現金
  • 家や車など20万円以上の財産

それぞれについて、解説します。

99万円を超える現金

手元にある99万円を超える現金は、債権者への返済に充てられます。

一方、99万円以下の現金は、手元に残せます。

このように手元に残せる財産を、「自由財産」といいます。

家や車など20万円以上の財産

家や車など20万円以上の財産は、処分してお金に換えた上で債権者への返済に充てられます。

自己破産手続で処分されるのは、次の20万円以上の財産です。

  • 不動産(自宅、土地・建物)
  • 預貯金
  • 保険の解約返戻金
  • 未払報酬
  • 賃金
  • ゴルフ会員権 など

一方、自由財産として手元に残せるのは、次の20万円以下の財産です。

  • 家具や家電などの差押禁止債権
  • 破産手続開始後に取得した財産
  • 退職金(支給見込額)の8分の1相当額が20万円以下

また、一定の財産については本来自由財産でなくても、裁判所により自由財産として認められる場合があります。

これを「自由財産の拡張」といい、自由財産の拡張として認められる財産には、次のようなものがあります。

  • 預貯金(総額20万円以下)
  • 保険の解約返戻金(20万円(見込額)以下)
  • 車(20万円(見込額)以下)
  • 電話加入権
  • 退職金(支給見込額)の8分の7相当額(退職金(支給見込額)の8分の1相当額が20万円を超える場合) など
不動産

自己破産する場合、自宅を含む不動産はほとんど処分されます。

20万円以上の財産価値があるため、債権者への返済に充てられるからです。

しかし、どうしても持ち家は処分したくない場合、自己破産ではなく、他の債務整理(任意整理、特定調停、民事再生)を検討したほうがいいでしょう。

自宅を処分する場合、新しい住居を探すまでの間は引き続き住むことができますので、すぐに退去する必要はありません。

車やバイク

車やバイクについては、ローンが残っているか、完済しているかによって処分方法が変わります。

ローンが残っている場合、車やバイクの所有権はローン会社にあるため、ローン会社が引き取ります。

一方、ローンを完済している場合は、車やバイクの査定により、20万円以上の場合は債権者への返済に充てられ、20万円未満の場合は手元に残せます。

また、車やバイクの査定額が20万円以上の場合であっても、手元に残せる場合があります。

生活するための移動手段として、どうしても車やバイクが必要なことを裁判所から認められた場合です。

株などの有価証券

株などの有価証券も20万円以上であれば、処分の対象となり、債権者への返済に充てられます。

FXや仮想通貨

FXや仮想通貨も株などの有価証券と同様、20万円以上であれば、処分の対象です。

貸付金や売掛金などの債権

貸付金や売掛金などの債権は、今後支払いが見込まれ、回収可能です。

そのため、自己破産手続きにおいて、裁判所に報告しなければなりません。

回収された場合は、債権者への返済に充てられます。

貴金属やブランド品など

貴金属やブランド品なども、20万円以上であれば、処分の対象です。

ただし、ローンで購入して、ローンが残っている場合は、車やバイクと同様、ローン会社に引き取られます。

完済している場合は、査定によって処分されるか、手元に残せるかが決まります。

退職金の一部

退職金は、現在勤務している会社を退社した場合にもらえる退職金の8分の1の金額が20万円以上であれば、処分の対象です。

例えば、退社した場合の退職金が240万円の場合、退職金240万円の8分の1は、30万円です。

その結果、退職金の8分の1の金額(30万円)が20万円以上となるため、処分の対象になり、債権者への返済に充てられます。

ただし、退職金をもらうために会社を辞めさせられるということはありません。

処分対象となった退職金は、分割払いなど支払可能な方法で債権者に返済されます。

生命保険や個人年金

生命保険や個人年金は、解約返戻金が20万円以上の場合、処分されます。

ただ、高齢者や持病がある人など特別な事情がある場合には、該当する生命保険や個人年金が強制的に解約されるわけではありません。

この場合、解約返戻金に相当する金額を支払う必要があります。

ブラックリストに掲載され5年以上クレカ作成やローンができない

ブラックリスト登録期間

自己破産のデメリットとして、ブラックリストに掲載され5年以上クレジットカード作成やローンを利用できないことが挙げられます。

なぜなら、自己破産したことが信用情報に掲載されてしまうからです。

信用情報とは、クレジットカードやカードローンなどの申込みや契約内容、返済状況、残債額、個人属性などが登録された個人情報のことで、信用情報機関が管理しています。

ブラックリストというリストは実際にはなく、自己破産したことが信用情報に登録され、クレジットカートやカードローンなどが利用できない状況を「ブラックリストに載る」と表現されます。

信用情報に自己破産したことが掲載されると、どうしてクレジットカードやカードローンが利用できなくなってしまうのでしょうか。

クレジットカード会社や消費者金融、銀行は、個人とクレジットカードやカードローンなどを契約する際、信用情報を照会することが可能だからです。

信用情報機関には、3つの機関があり、それぞれ信用情報の登録期間が決まっています。

自己破産の登録期間は、次のとおりです。

信用情報機関自己破産の登録期間
株式会社シー・アイ・シー(CIC)5年
株式会社日本信用情報機構(JICC)5年
全国銀行個人信用情報センター(KSC)7年

そのため、自己破産してから5~7年が経過すると、信用情報から自己破産の事故情報は抹消されます。

クレジットカードが利用できないのは不便かもしれませんが、デビットカードやキャッシュレス決済は利用可能です。

手続き中に制限が課せられる

手続き中に制限が課せられる

手続き中に制限が課せられることも、自己破産のデメリットの1つです。

自己破産の手続き中に課せられる制限は、次の2つです。

  • 資格・職業の制限の一覧
  • 移動の制限

それぞれについて、解説します。

資格・職業の制限の一覧

自己破産することにより制限される主な資格・職業は、次のとおりです。

弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、不動産鑑定士、弁理士、中小企業診断士、通関士、証券取引外務員、商品投資販売業、証券業、貸金業、警備員、公証人、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、司法修習生 など

これらの資格・職業は、それぞれの法令で自己破産者の制限が定められています。

自己破産で制限される資格や職業には、個人の財産を管理したり、機密情報を扱ったりする資格や職業が多い傾向にあります。

資格や職業が制限されるというと、制限される資格や職業には就けないのではないかと思うかもしれません。

しかし、実際に制限されるのは、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの自己破産手続中の2~6ヵ月ほどの短い期間です。

自己破産の手続きが終了すれば、制限された資格や職業は回復されます。これを復権といいます。

移動の制限

自己破産手続中は、移動が制限されます。

具体的には、自己破産手続中は、裁判所の許可がなければ、居住地を離れてはいけないことになっています。

具体的には、引越しや旅行をする場合は、裁判所の許可が必要です。

しかし、移動が制限されるのは、資格や職業の制限と同じく、自己破産手続中(破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで)の2~6ヵ月ほどの期間のみです。

そのため、自己破産の手続きが終了すれば、自由に移動できるようになります。

官報に住所や氏名が掲載される

自己破産のデメリットとして、官報に住所や氏名が掲載されることが挙げられます。

官報とは、国が発行しているもので、法律や政令などの制定・改正情報が掲載されるほか、自己破産の情報が掲載されます。

官報に掲載される自己破産の情報には、自己破産者の氏名・住所が含まれます。

官報に掲載されるということは、公表されることを意味するため、自己破産したことがバレる可能性があります。

しかし、休日を除き毎日発行される官報を、一般人が見ることはほとんどありません。

その証拠に、周りに官報を知っている人、もしくは官報を読んだことがある人は、ほとんどいないのではないでしょうか。

そのため、自己破産したことが官報に掲載されたとしても、会社や知人にバレる可能性は極めて低いといえます。

自己破産手続きにも30〜100万円の費用がかかる

自己破産なら弁護士や司法書士に依頼しよう

自己破産の費用は、30~100万円程度かかることもデメリットです。

自己破産手続のうち、破産管財人が選任される管財事件の費用をまとめると、次のとおりです。

自己破産手続(管財事件)の費用

手数料1,500円
郵便切手代5,000円程度
官報手数料1万~1万5,000円程度
予納金(裁判所へ納める手続費用)20万円~
弁護士・司法書士報酬20万~60万円程度
41万6,500~82万1,500円程度

このように自己破産手続(管財事件)の費用は、40~80万円程度かかります。

この中で、最も高い費用は弁護士・司法書士報酬で、次に費用が高いのは予納金になります。

そんなに弁護士・司法書士費用が高いのなら、依頼しなければいいのにと思ってしまうかもしれませんが、自己破産手続をする場合、弁護士や司法書士などの専門家は欠かせません。

自己破産するには、弁護士などに報酬を支払ってでも依頼することをおすすめします。

というのは、弁護士や司法書士に依頼すると、次のようなメリットがあるからです。

  • 弁護士などが債権者に受任通知を送付すると、債権者は債務者に取り立てすることができなくなる
  • 弁護士などが代理人となるため、債権者とのやり取りや書類の作成・提出を任せられる

受任通知とは、弁護士などが債権者に対して、依頼人の代理人として手続きを進めるという知らせのことです。

また、自己破産手続のうち、一定の財産がない場合は「同時廃止」という手続きが行われます。

同時廃止の費用は、予納金が必要ないので、上記の費用から予納金を除いた金額です。

家族に隠すことは難しい

自己破産のデメリットとして、家族に隠すことは難しいことが挙げられます。

例えば、自宅や車の名義が破産者である夫である場合、妻や子どもに影響が及んでしまうからです。

ここでいう影響とは、家を出ていかなければならなかったり、車を手放さなければならなかったりすることです。

ただし、妻や子どもが借金の肩代わりをしたり、妻の財産が差し押さえられるなどの法的な影響はありません。

また、先ほどのケースにおける自宅と車のように、夫の自己破産による直接的な影響を受けることがあります。

  • 自宅や車の名義が破産者(夫)である
  • 妻が夫の借入れの保証人または連帯保証人になっている
  • 学資保険などの保険の名義が破産者(夫)である

妻が夫の保証人の場合、夫の自己破産によりその請求が妻に来るので、返済する必要があります。

返済できない場合は、夫と同じく債務整理を検討する必要があります。

学資保険は、解約返戻金が20万円以上の場合は、解約して債権者への返済に充てます。

保証人や連帯保証人に迷惑がかかる

自己破産のデメリットとして、保証人や連帯保証人に迷惑がかかることが挙げられます。

保証人や連帯保証人がいる場合、本人が自己破産したら、その請求は保証人や連帯保証人にいくことになるからです。

保証人や連帯保証人に来た借金の請求は、一般的に一括支払いが求められます。

一括での支払いはかなりの高額のため、保証人や連帯保証人にも支払えないこともあります。

その結果、保証人や連帯保証人も自己破産などの債務整理を検討する必要が生じることがあります。

しかし、クレジットカードやカードローン契約をする際は、保証人は不要です。

そのため、クレジットカードやカードローンの借金のみの場合は、保証人や連帯保証人に迷惑がかかることはありません。

周囲の人からの信頼を失う

周囲の人からの信頼を失うことも、自己破産のデメリットに該当します。

周囲の人とは、夫・妻や子ども、両親、知人などのことです。

既に解説したとおり、自己破産をすると、家族に隠すことは難しくなります。

自宅や車の名義が自己破産者本人だった場合、家を出て、車を手放さなければならないからです。

そのとき、夫・妻や子どもからの信頼は失われる可能性が高いです。

そのため、自己破産を検討するときは、他の債務整理(任意整理、特定調停、民事再生)も含めて、弁護士や司法書士と相談することをおすすめします。

そもそもチャラにできない借金がある!「非免責債権」

チャラにできない!「非免責債権」

そもそも借金にはチャラにできないものがあり、その借金を非免責債権といいます。

非免責債権とは、自己破産手続をしても帳消しにならない債権のことです。

逆に言うと、非免責債権とは絶対に支払わなければならない債権ということです。

仮に支払わない場合、差し押さえられるおそれがあります。

非免責債権として、次の6つが挙げられます。

  • 税金や社会保険料は免責されない
  • 電気や水道などの公共料金は免責されない
  • 慰謝料や養育費は免責されない
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権は免責されない
  • スピード違反などの反則金は免責されない
  • その他の非免責債権の一覧

それぞれについて、解説します。

税金や社会保険料は免責されない

税金や社会保険料は、非免責債権に該当するため、免責されません(破産法第253条1項1号)。

例えば、非免責債権に該当する主な税金を挙げると、次のとおりです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 贈与税
  • 相続税
  • 固定資産税
  • 自動車税 など

また、社会保険料とは、国民健康保険料と国民年金保険料のことです。

これらの税金や社会保険料は、支払わずにいると差し押さえられるおそれがあるため、注意が必要です。

どうしても支払えない場合は、役所に相談することをおすすめします。

電気や水道などの公共料金は免責されない

すべての公共料金が免責されないわけではありません(破産法第253条1項1号)。

公共料金のうち、非免責債権として免責されないのは、下水道料金です。

公共料金であっても、電気代やガス代は非免責債権ではないため、自己破産すれば、毎月の支払義務は免除されます。

ただし、ここで注意が必要なのは、電気やガス、水道などのライフラインが止まらないようにすることです。

慰謝料や養育費は免責されない

自己破産した場合、慰謝料は免責されますが、養育費は免責されません(破産法第253条1項4号)。

慰謝料が非免責債権かどうかは、なかなかイメージしにくいかもしれませんが、自己破産すると免責されるため、非免責債権ではありません。

一方、養育費は子どもの保護を目的としているため、非免責債権です。

そのため、自己破産しても免責されません。

不法行為に基づく損害賠償請求権は免責されない

不法行為に基づく損害賠償請求権が非免責債権であるかどうかは、それぞれのケースによって慎重に判断しなければなりません。

破産法には、次の2つの条文があるので、それぞれについて解説します。

破産法第253条1項2号

二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

参考:破産法 | e-Gov法令検索

破産者が悪意を持って加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は、非免責債権に該当するため、免責されません。

破産法第253条1項3号

三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)

参考:破産法 | e-Gov法令検索

この条文には、2つの重要な要件があります。

  • 破産者が「故意または重大な過失」
  • 人の生命または身体を害する不法行為

この条文が適用されるのは、飲酒運転や無謀運転のような重大な過失による交通事故を起こして、相手方を死亡もしくはケガをさせたケースです。

このケースの損害賠償請求権も非免責債権に該当するため、免責されません。

スピード違反などの反則金は免責されない

スピード違反などの反則金は、免責されません。

破産法第253条1項7号

七 罰金等の請求権

参考:破産法 | e-Gov法令検索

非免責債権について定めた破産法第253条1項7号の「罰金等」に、スピード違反の反則金は含まれるからです。

そのほかに「罰金等」には、罰金や科料、過料、刑事訴訟費用、追徴金などが含まれます。

罰金等の請求権を非免責債権としているのは、罰金等は制裁的な側面があるため、自己破産により免責されるのは適切ではないと考えられているためです。

その他の非免責債権の一覧

その他の非免責債権として、破産法第253条1項では、2つの債権を規定しています。

それぞれについて、解説します。

破産法第253条1項5号

五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権

参考:破産法 | e-Gov法令検索

「雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権」とは、労働者の給料のことを指しています。

そのため、この条文は、雇用主が自己破産したとしても、労働者の給料や預り金は免責されない非免責債権であることを規定しています。

ただし、この条文の「雇用主」は、個人事業主を想定しています。

というのは、法人が破産すると、法人は消滅してしまうからです。

破産法第253条1項6号

六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)

参考:破産法 | e-Gov法令検索

自己破産する場合、破産者は債権者名簿(債権者一覧表)を作成し、提出する必要があります。

この際、債権者一覧表に特定の債権者をわざと記載しなかった場合、その債権は非免責債権に該当します。

というのは、記載されなかった債権者は、破産者の免責について意見を述べる機会を与えられないからです。

この場合、他の債権者との関係で、除外された債権者は不平等になるため、この債権者を保護するという意味があります。

また、過失により債権者一覧表に特定の債権者を記載しなかった場合も、非免責債権に該当します。

自己破産の真実!デメリットとその影響を詳しく解説

自己破産の真実!デメリットとその影響を詳しく解説

借金が帳消しになるため、自己破産を検討している方も多いのではないでしょうか。

しかし、自己破産にはこのようなメリットがある一方で、デメリットもあります。

自己破産を検討する際には、メリットだけでなくデメリットを確認した上で結論を出すことが重要です。

そこで、この記事では、自己破産の真実として、自己破産のデメリットとその影響を詳しく解説します。

自己破産のメリット・デメリットを把握した上で、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

目次

「したもん勝ち」は誤解!自己破産のデメリットを正しく理解する

自己破産をすれば、借金はすべてなくなるため、自己破産は「したもん勝ち」と考えている人もいるかもしれません。

しかし、自己破産には多くのデメリットがあることを認識しておく必要があります。

ここでは、自己破産の9つのデメリットについて解説します。

裁判所が認めてくれないかも?11の「免責不許可事由」

11の「免責不許可事由」

自己破産のデメリットとして、「免責不許可事由」に該当する場合、自己破産できないことが挙げられます。

免責不許可事由とは、債務(借金)が免責されない原因、つまり自己破産が認められないケースのことで、破産法(第252条)で定められています。

自己破産とは裁判所に破産を申し立てて、免責される(債務(借金)の責任が免除される)ことによって債務がなくなることをいいます。

しかし、破産法(第252条)で定められた「免責不許可事由」に該当する場合、免責されません。

つまり、免責不許可事由に該当すると、自己破産できないということです。

ただし、免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量で免責されることがあります。

そのため、免責不許可事由に該当したとしても、自己破産できることがあります。

ここでは、11の免責不許可事由について解説します。

不当に財産を減少させる行為

免責不許可事由として、不当に財産を減少させる行為が挙げられます(破産法第252条1項1号)。

破産法第252条1項1号

一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

条文中の破産財団とは、破産者の財産のうち、自己破産後も所有が認められている財産(自由財産)以外の財産のことをいいます。

破産財団の財産は、債権者に配分されます。

つまり、債権者に配分される財産(破産財団)を隠したり、壊したりするなど不当に財産を減少させる行為をすると、免責されないのです。

破産財団に含まれる財産には、家や土地などの不動産や車などの資産が該当します。

不当に債務を負担する行為

免責不許可事由として、不当に債務を負担する行為が挙げられます(破産法第252条1項2号)。

破産法第252条1項2号

ニ 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

不当に債務を負担する行為には、次のような行為が当てはまります。

  • クレジットカードのショッピング枠の現金化
  • ヤミ金からの借入れ

このような行為は、返済の遅延や滞納などにより他社から借入れができない場合に行われる行為です。

これらの行為は、自己破産する場合に免責不許可事由になるおそれがあります。

というのは、破産手続の開始を遅延させる目的で、不当に債務を負担する行為を行ったと見なされるからです。

債権者を平等に扱わない行為

免責不許可事由になる行為として、債権者を平等に扱わない行為が挙げられます(破産法第252条1項3号)。

破産法第252条1項3号

三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

自己破産する場合、債権者を平等に扱わなければなりません。

特定の債権者に優先して債務(借金)を返済すると、不平等になってしまうからです。

例えば、親族や知人であっても優先して借金を返済すると、「債権者を平等に扱わない行為」になってしまいます。

そのため、親族や知人であっても、優先して借金を返済してはいけないのです。

収入に見合わない浪費やギャンブルなどにより借金をする行為

収入に見合わない浪費やギャンブルなどにより借金をする行為も、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項4号)。

破産法第252条1項4号

四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

条文にあるとおり、浪費やギャンブルなどにより借金をした場合、免責されません。

射幸行為とは、競輪・競馬やパチンコなどのギャンブルのことで、株式やFX取引なども射幸行為に含まれます。

しかし、このように免責不許可事由に該当する場合でも、裁判所の裁量で免責されることがあります。

相手を騙して信用取引をする行為

免責不許可事由として、相手を騙して信用取引をする行為が挙げられます(破産法第252条1項5号)。

破産法第252条1項5号

五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

ここでいう信用取引とは、借金をすることです。

例えば、自己破産(破産手続開始)の申立てをしたにもかかわらず、クレジットカード会社に収入や借入額などについて嘘の申告をして借入れをした場合、「相手を騙して信用取引をする行為」に該当します。

借金を返済できないとわかっていながら、金融機関などからお金に借りる行為は悪質であるため、免責不許可事由に該当するのです。

帳簿など業務や財産に関する書類を隠す行為

帳簿など業務や財産に関する書類を隠す行為も、免責不許可事由になります(破産法第252条1項6号)。

破産法第252条1項6号

六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

例えば、確定申告書や決算書を隠したり、偽造したりするほか、改ざんすると、免責不許可事由に該当します。

ただし、故意に帳簿や書類の改ざんなどをやったのでなければ、免責不許可事由には該当しません。

虚偽の債権者名簿を提出する行為

虚偽の債権者名簿を提出する行為も、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項7号)。

破産法第252条1項7号

七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

債権者名簿(債権者一覧表)とは、自己破産手続において、裁判所に提出しなければならない書類で、すべての債権者の氏名や住所などを記載する必要があります。

債権者名簿に、一部の債権者を除外するなど虚偽の内容が含まれていた場合、免責不許可事由に該当します。

自己破産手続における「債権者を平等に扱わなければならない」という原則に反するおそれがあるからです。

例えば、親族や知人には早めに返済したいと考えて、債権者名簿に記載しない場合、免責不許可事由に該当します。

しかし、故意ではなく過失により、債権者名簿に一部の債権者を記載し忘れた場合は、免責不許可事由には該当しません。

ただし、債権者名簿に記載されなかった債権者に対しては、自己破産の対象にはならないので、注意が必要です。

説明の拒否や虚偽の発言をする行為

免責不許可事由として、説明の拒否や虚偽の発言をする行為が挙げられます(破産法第252条1項8号)。

破産法第252条1項8号

八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

条文にあるとおり、裁判所(裁判官、破産管財人)が行う調査に対して、説明を拒否したり、嘘をついたりすると、免責不許可事由に該当します

最終的に破産宣告をするのは、裁判官ですから、裁判官の心証が悪くなると、自己破産できなくなるおそれがあります。

そのため、裁判官や破産管財人には、嘘偽りなく、真摯に話すことが重要です。

管財業務を妨害する行為

管財業務を妨害する行為も、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項9号)。

破産法第252条1項9号

九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。

参考:破産法 | e-Gov法令検索

破産管財人は、自己破産の申立人の財産の管理や配当などの破産手続を行います。

破産管財人などの職務を妨害すると、免責不許可事由に該当します。

そのため、破産管財人には、嘘偽りなく、真摯に話す必要があるのです。

破産管財人は、すべての自己破産手続に選任されるわけではなく、自己破産の申立人に一定の財産がある場合(管財事件)に選任されます。

過去7年以内に免責を受けている

過去7年以内に免責を受けている場合、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項10号)。

破産法第252条1項10号

十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日

参考:破産法 | e-Gov法令検索

過去7年以内に免責を受けている場合、つまり自己破産している場合は、原則として自己破産できません。

言い換えると、過去に自己破産している場合は、少なくとも7年以上経っていないと、自己破産できないということです。

ただし、前回の自己破産から7年以上経っていたとしても、必ずしも自己破産できるとは限りません。

2回目の自己破産ができるかどうかは、自己破産の申立人の事情を考慮して、裁判所が判断するからです。

自己破産手続に協力しない

自己破産手続に協力しない場合、免責不許可事由に該当します(破産法第252条1項11号)。

破産管財人への説明、破産者の重要財産の開示義務、免責についての調査や報告など自己破産手続に協力しないと、免責されません。

そのため、裁判所や破産管財人には、嘘偽りなく真摯に向き合ってください。

一定以上の財産を処分する必要がある

一定以上の財産を処分する必要がある

自己破産する場合、一定以上の財産を処分する必要があります。

具体的には、一定以上の財産を処分して、換金して、債権者への返済に充てます。

東京地方裁判所では、財産の処分基準を定めており、次の2つの基準に分けられます。

  • 99万円を超える現金
  • 家や車など20万円以上の財産

それぞれについて、解説します。

99万円を超える現金

手元にある99万円を超える現金は、債権者への返済に充てられます。

一方、99万円以下の現金は、手元に残せます。

このように手元に残せる財産を、「自由財産」といいます。

家や車など20万円以上の財産

家や車など20万円以上の財産は、処分してお金に換えた上で債権者への返済に充てられます。

自己破産手続で処分されるのは、次の20万円以上の財産です。

  • 不動産(自宅、土地・建物)
  • 預貯金
  • 保険の解約返戻金
  • 未払報酬
  • 賃金
  • ゴルフ会員権 など

一方、自由財産として手元に残せるのは、次の20万円以下の財産です。

  • 家具や家電などの差押禁止債権
  • 破産手続開始後に取得した財産
  • 退職金(支給見込額)の8分の1相当額が20万円以下

また、一定の財産については本来自由財産でなくても、裁判所により自由財産として認められる場合があります。

これを「自由財産の拡張」といい、自由財産の拡張として認められる財産には、次のようなものがあります。

  • 預貯金(総額20万円以下)
  • 保険の解約返戻金(20万円(見込額)以下)
  • 車(20万円(見込額)以下)
  • 電話加入権
  • 退職金(支給見込額)の8分の7相当額(退職金(支給見込額)の8分の1相当額が20万円を超える場合) など
不動産

自己破産する場合、自宅を含む不動産はほとんど処分されます。

20万円以上の財産価値があるため、債権者への返済に充てられるからです。

しかし、どうしても持ち家は処分したくない場合、自己破産ではなく、他の債務整理(任意整理、特定調停、民事再生)を検討したほうがいいでしょう。

自宅を処分する場合、新しい住居を探すまでの間は引き続き住むことができますので、すぐに退去する必要はありません。

車やバイク

車やバイクについては、ローンが残っているか、完済しているかによって処分方法が変わります。

ローンが残っている場合、車やバイクの所有権はローン会社にあるため、ローン会社が引き取ります。

一方、ローンを完済している場合は、車やバイクの査定により、20万円以上の場合は債権者への返済に充てられ、20万円未満の場合は手元に残せます。

また、車やバイクの査定額が20万円以上の場合であっても、手元に残せる場合があります。

生活するための移動手段として、どうしても車やバイクが必要なことを裁判所から認められた場合です。

株などの有価証券

株などの有価証券も20万円以上であれば、処分の対象となり、債権者への返済に充てられます。

FXや仮想通貨

FXや仮想通貨も株などの有価証券と同様、20万円以上であれば、処分の対象です。

貸付金や売掛金などの債権

貸付金や売掛金などの債権は、今後支払いが見込まれ、回収可能です。

そのため、自己破産手続きにおいて、裁判所に報告しなければなりません。

回収された場合は、債権者への返済に充てられます。

貴金属やブランド品など

貴金属やブランド品なども、20万円以上であれば、処分の対象です。

ただし、ローンで購入して、ローンが残っている場合は、車やバイクと同様、ローン会社に引き取られます。

完済している場合は、査定によって処分されるか、手元に残せるかが決まります。

退職金の一部

退職金は、現在勤務している会社を退社した場合にもらえる退職金の8分の1の金額が20万円以上であれば、処分の対象です。

例えば、退社した場合の退職金が240万円の場合、退職金240万円の8分の1は、30万円です。

その結果、退職金の8分の1の金額(30万円)が20万円以上となるため、処分の対象になり、債権者への返済に充てられます。

ただし、退職金をもらうために会社を辞めさせられるということはありません。

処分対象となった退職金は、分割払いなど支払可能な方法で債権者に返済されます。

生命保険や個人年金

生命保険や個人年金は、解約返戻金が20万円以上の場合、処分されます。

ただ、高齢者や持病がある人など特別な事情がある場合には、該当する生命保険や個人年金が強制的に解約されるわけではありません。

この場合、解約返戻金に相当する金額を支払う必要があります。

ブラックリストに掲載され5年以上クレカ作成やローンができない

ブラックリスト登録期間

自己破産のデメリットとして、ブラックリストに掲載され5年以上クレジットカード作成やローンを利用できないことが挙げられます。

なぜなら、自己破産したことが信用情報に掲載されてしまうからです。

信用情報とは、クレジットカードやカードローンなどの申込みや契約内容、返済状況、残債額、個人属性などが登録された個人情報のことで、信用情報機関が管理しています。

ブラックリストというリストは実際にはなく、自己破産したことが信用情報に登録され、クレジットカートやカードローンなどが利用できない状況を「ブラックリストに載る」と表現されます。

信用情報に自己破産したことが掲載されると、どうしてクレジットカードやカードローンが利用できなくなってしまうのでしょうか。

クレジットカード会社や消費者金融、銀行は、個人とクレジットカードやカードローンなどを契約する際、信用情報を照会することが可能だからです。

信用情報機関には、3つの機関があり、それぞれ信用情報の登録期間が決まっています。

自己破産の登録期間は、次のとおりです。

信用情報機関自己破産の登録期間
株式会社シー・アイ・シー(CIC)5年
株式会社日本信用情報機構(JICC)5年
全国銀行個人信用情報センター(KSC)7年

そのため、自己破産してから5~7年が経過すると、信用情報から自己破産の事故情報は抹消されます。

クレジットカードが利用できないのは不便かもしれませんが、デビットカードやキャッシュレス決済は利用可能です。

手続き中に制限が課せられる

手続き中に制限が課せられる

手続き中に制限が課せられることも、自己破産のデメリットの1つです。

自己破産の手続き中に課せられる制限は、次の2つです。

  • 資格・職業の制限の一覧
  • 移動の制限

それぞれについて、解説します。

資格・職業の制限の一覧

自己破産することにより制限される主な資格・職業は、次のとおりです。

弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、不動産鑑定士、弁理士、中小企業診断士、通関士、証券取引外務員、商品投資販売業、証券業、貸金業、警備員、公証人、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、司法修習生 など

これらの資格・職業は、それぞれの法令で自己破産者の制限が定められています。

自己破産で制限される資格や職業には、個人の財産を管理したり、機密情報を扱ったりする資格や職業が多い傾向にあります。

資格や職業が制限されるというと、制限される資格や職業には就けないのではないかと思うかもしれません。

しかし、実際に制限されるのは、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの自己破産手続中の2~6ヵ月ほどの短い期間です。

自己破産の手続きが終了すれば、制限された資格や職業は回復されます。これを復権といいます。

移動の制限

自己破産手続中は、移動が制限されます。

具体的には、自己破産手続中は、裁判所の許可がなければ、居住地を離れてはいけないことになっています。

具体的には、引越しや旅行をする場合は、裁判所の許可が必要です。

しかし、移動が制限されるのは、資格や職業の制限と同じく、自己破産手続中(破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで)の2~6ヵ月ほどの期間のみです。

そのため、自己破産の手続きが終了すれば、自由に移動できるようになります。

官報に住所や氏名が掲載される

自己破産のデメリットとして、官報に住所や氏名が掲載されることが挙げられます。

官報とは、国が発行しているもので、法律や政令などの制定・改正情報が掲載されるほか、自己破産の情報が掲載されます。

官報に掲載される自己破産の情報には、自己破産者の氏名・住所が含まれます。

官報に掲載されるということは、公表されることを意味するため、自己破産したことがバレる可能性があります。

しかし、休日を除き毎日発行される官報を、一般人が見ることはほとんどありません。

その証拠に、周りに官報を知っている人、もしくは官報を読んだことがある人は、ほとんどいないのではないでしょうか。

そのため、自己破産したことが官報に掲載されたとしても、会社や知人にバレる可能性は極めて低いといえます。

自己破産手続きにも30〜100万円の費用がかかる

自己破産なら弁護士や司法書士に依頼しよう

自己破産の費用は、30~100万円程度かかることもデメリットです。

自己破産手続のうち、破産管財人が選任される管財事件の費用をまとめると、次のとおりです。

自己破産手続(管財事件)の費用

手数料1,500円
郵便切手代5,000円程度
官報手数料1万~1万5,000円程度
予納金(裁判所へ納める手続費用)20万円~
弁護士・司法書士報酬20万~60万円程度
41万6,500~82万1,500円程度

このように自己破産手続(管財事件)の費用は、40~80万円程度かかります。

この中で、最も高い費用は弁護士・司法書士報酬で、次に費用が高いのは予納金になります。

そんなに弁護士・司法書士費用が高いのなら、依頼しなければいいのにと思ってしまうかもしれませんが、自己破産手続をする場合、弁護士や司法書士などの専門家は欠かせません。

自己破産するには、弁護士などに報酬を支払ってでも依頼することをおすすめします。

というのは、弁護士や司法書士に依頼すると、次のようなメリットがあるからです。

  • 弁護士などが債権者に受任通知を送付すると、債権者は債務者に取り立てすることができなくなる
  • 弁護士などが代理人となるため、債権者とのやり取りや書類の作成・提出を任せられる

受任通知とは、弁護士などが債権者に対して、依頼人の代理人として手続きを進めるという知らせのことです。

また、自己破産手続のうち、一定の財産がない場合は「同時廃止」という手続きが行われます。

同時廃止の費用は、予納金が必要ないので、上記の費用から予納金を除いた金額です。

家族に隠すことは難しい

自己破産のデメリットとして、家族に隠すことは難しいことが挙げられます。

例えば、自宅や車の名義が破産者である夫である場合、妻や子どもに影響が及んでしまうからです。

ここでいう影響とは、家を出ていかなければならなかったり、車を手放さなければならなかったりすることです。

ただし、妻や子どもが借金の肩代わりをしたり、妻の財産が差し押さえられるなどの法的な影響はありません。

また、先ほどのケースにおける自宅と車のように、夫の自己破産による直接的な影響を受けることがあります。

  • 自宅や車の名義が破産者(夫)である
  • 妻が夫の借入れの保証人または連帯保証人になっている
  • 学資保険などの保険の名義が破産者(夫)である

妻が夫の保証人の場合、夫の自己破産によりその請求が妻に来るので、返済する必要があります。

返済できない場合は、夫と同じく債務整理を検討する必要があります。

学資保険は、解約返戻金が20万円以上の場合は、解約して債権者への返済に充てます。

保証人や連帯保証人に迷惑がかかる

自己破産のデメリットとして、保証人や連帯保証人に迷惑がかかることが挙げられます。

保証人や連帯保証人がいる場合、本人が自己破産したら、その請求は保証人や連帯保証人にいくことになるからです。

保証人や連帯保証人に来た借金の請求は、一般的に一括支払いが求められます。

一括での支払いはかなりの高額のため、保証人や連帯保証人にも支払えないこともあります。

その結果、保証人や連帯保証人も自己破産などの債務整理を検討する必要が生じることがあります。

しかし、クレジットカードやカードローン契約をする際は、保証人は不要です。

そのため、クレジットカードやカードローンの借金のみの場合は、保証人や連帯保証人に迷惑がかかることはありません。

周囲の人からの信頼を失う

周囲の人からの信頼を失うことも、自己破産のデメリットに該当します。

周囲の人とは、夫・妻や子ども、両親、知人などのことです。

既に解説したとおり、自己破産をすると、家族に隠すことは難しくなります。

自宅や車の名義が自己破産者本人だった場合、家を出て、車を手放さなければならないからです。

そのとき、夫・妻や子どもからの信頼は失われる可能性が高いです。

そのため、自己破産を検討するときは、他の債務整理(任意整理、特定調停、民事再生)も含めて、弁護士や司法書士と相談することをおすすめします。

そもそもチャラにできない借金がある!「非免責債権」

チャラにできない!「非免責債権」

そもそも借金にはチャラにできないものがあり、その借金を非免責債権といいます。

非免責債権とは、自己破産手続をしても帳消しにならない債権のことです。

逆に言うと、非免責債権とは絶対に支払わなければならない債権ということです。

仮に支払わない場合、差し押さえられるおそれがあります。

非免責債権として、次の6つが挙げられます。

  • 税金や社会保険料は免責されない
  • 電気や水道などの公共料金は免責されない
  • 慰謝料や養育費は免責されない
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権は免責されない
  • スピード違反などの反則金は免責されない
  • その他の非免責債権の一覧

それぞれについて、解説します。

税金や社会保険料は免責されない

税金や社会保険料は、非免責債権に該当するため、免責されません(破産法第253条1項1号)。

例えば、非免責債権に該当する主な税金を挙げると、次のとおりです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 贈与税
  • 相続税
  • 固定資産税
  • 自動車税 など

また、社会保険料とは、国民健康保険料と国民年金保険料のことです。

これらの税金や社会保険料は、支払わずにいると差し押さえられるおそれがあるため、注意が必要です。

どうしても支払えない場合は、役所に相談することをおすすめします。

電気や水道などの公共料金は免責されない

すべての公共料金が免責されないわけではありません(破産法第253条1項1号)。

公共料金のうち、非免責債権として免責されないのは、下水道料金です。

公共料金であっても、電気代やガス代は非免責債権ではないため、自己破産すれば、毎月の支払義務は免除されます。

ただし、ここで注意が必要なのは、電気やガス、水道などのライフラインが止まらないようにすることです。

慰謝料や養育費は免責されない

自己破産した場合、慰謝料は免責されますが、養育費は免責されません(破産法第253条1項4号)。

慰謝料が非免責債権かどうかは、なかなかイメージしにくいかもしれませんが、自己破産すると免責されるため、非免責債権ではありません。

一方、養育費は子どもの保護を目的としているため、非免責債権です。

そのため、自己破産しても免責されません。

不法行為に基づく損害賠償請求権は免責されない

不法行為に基づく損害賠償請求権が非免責債権であるかどうかは、それぞれのケースによって慎重に判断しなければなりません。

破産法には、次の2つの条文があるので、それぞれについて解説します。

破産法第253条1項2号

二 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権

参考:破産法 | e-Gov法令検索

破産者が悪意を持って加えた不法行為に基づく損害賠償請求権は、非免責債権に該当するため、免責されません。

破産法第253条1項3号

三 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)

参考:破産法 | e-Gov法令検索

この条文には、2つの重要な要件があります。

  • 破産者が「故意または重大な過失」
  • 人の生命または身体を害する不法行為

この条文が適用されるのは、飲酒運転や無謀運転のような重大な過失による交通事故を起こして、相手方を死亡もしくはケガをさせたケースです。

このケースの損害賠償請求権も非免責債権に該当するため、免責されません。

スピード違反などの反則金は免責されない

スピード違反などの反則金は、免責されません。

破産法第253条1項7号

七 罰金等の請求権

参考:破産法 | e-Gov法令検索

非免責債権について定めた破産法第253条1項7号の「罰金等」に、スピード違反の反則金は含まれるからです。

そのほかに「罰金等」には、罰金や科料、過料、刑事訴訟費用、追徴金などが含まれます。

罰金等の請求権を非免責債権としているのは、罰金等は制裁的な側面があるため、自己破産により免責されるのは適切ではないと考えられているためです。

その他の非免責債権の一覧

その他の非免責債権として、破産法第253条1項では、2つの債権を規定しています。

それぞれについて、解説します。

破産法第253条1項5号

五 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権

参考:破産法 | e-Gov法令検索

「雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権」とは、労働者の給料のことを指しています。

そのため、この条文は、雇用主が自己破産したとしても、労働者の給料や預り金は免責されない非免責債権であることを規定しています。

ただし、この条文の「雇用主」は、個人事業主を想定しています。

というのは、法人が破産すると、法人は消滅してしまうからです。

破産法第253条1項6号

六 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)

参考:破産法 | e-Gov法令検索

自己破産する場合、破産者は債権者名簿(債権者一覧表)を作成し、提出する必要があります。

この際、債権者一覧表に特定の債権者をわざと記載しなかった場合、その債権は非免責債権に該当します。

というのは、記載されなかった債権者は、破産者の免責について意見を述べる機会を与えられないからです。

この場合、他の債権者との関係で、除外された債権者は不平等になるため、この債権者を保護するという意味があります。

また、過失により債権者一覧表に特定の債権者を記載しなかった場合も、非免責債権に該当します。