破産債権届出書とは?債権回収までの流れや記入例を解説
破産債権届出書とは、破産した人や法人(以下「破産者」といいます。)に対してあなたが有している債権の内容を裁判所へ届け出るための文書のことを指します。
破産者に対する債権は、原則として裁判所での破産手続きによってしか行使できません。したがって、破産債権届出書を正しく作成して裁判所へ提出しなければ、債権を回収できなくなってしまうことに注意が必要です。
この記事では、破産債権届出書の記入例や提出方法から債権を回収するまでの流れについてわかりやすく解説します。取引先などが破産して債権を回収できずにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
破産債権届出書とは?提出の流れをわかりやすく解説
まずは、破産債権届出書とはどのような文書なのか、何のために提出する必要があるのか、どこにいつまでに提出すればよいのかについて解説します。
破産債権届出書はあなたの債権の存在を証明する文書
破産債権届出書とは、あなたが破産者に対していくらの債権を有しているのかを裁判所へ届け出るための文書のことです。
破産手続きを進めるためには、破産者が誰に対していくらの負債を抱えているのかを確定させる必要があります。
破産者は裁判所への申立ての際に債権者一覧表を作成し、債権者名や債権額などを記載して申告します。しかし、その内容が正しいとは限りません。そこで裁判所は、債権者一覧表に記載された債権者に対して債権届を求めるのです。
債権届を求められた債権者は、破産債権届出書に必要事項を記入し、契約書などの証拠書類と一緒に提出することで債権の存在を証明できます。
提出した書類は破産管財人が確認し、所定の債権調査手続きを経て、その内容が正しいと認められると破産債権として確定します。
破産債権が確定して初めて、あなたは破産債権者として破産手続きに参加できるのです。
どこにいつまでに出せばいいの?提出期限が切れても救済措置あり
破産債権届出書は、破産手続開始決定をした裁判所に、その裁判所が指定した「債権届出期間」中に提出する必要があります。
債権者一覧表に記載された債権者に対しては、破産手続開始決定をした裁判所から破産債権届出書の書式が郵送されます。返信用封筒も同封されているので、提出先がわからずに悩むことはないでしょう。
債権届出期間は、原則として破産手続開始決定が行われた日から2週間以上4ヶ月以内で裁判所が指定します。具体的な年月日は破産債権届出書に同封されている「破産手続開始の通知」に記載されているのでご確認ください。その届出期間内に裁判所へ到達するように送付しなければならないことにも注意が必要です。
届出期間が経過した後に破産債権届出書を提出しても、原則として受け付けられません。ただし、債権者の責に帰することができない事情で破産債権届出書を提出できなかった場合は、その事情が消滅した後の1ヶ月以内に限り、提出が認められます。
「債権者の責に帰することができない事情」としては、病気や事故、自然災害などに遭ったことなどが考えられます。単なる「業務多忙」などで期限後に提出することは認められません。
裁判所から書類が届いたら、速やかに内容を確認し、提出期限までに破産債権届出書を提出しましょう。
出さないとどうなる?破産手続に参加できず配当がもらえない
破産債権届出書を提出しなければ、破産債権者として認められず、破産手続きに参加できません。
破産手続きでは、破産管財人が破産者の財産を売却するなどして換金した上で、各破産債権者が有する債権額に応じて配当します。破産債権届出書を提出しなかった債権者はこの手続きに参加できないため、配当金をもらえません。
もっとも、破産債権届出書を提出するかどうかは債権者の自由意思に委ねられており、債権回収を断念する場合は提出不要です。提出しないことで何らかの罰を受けることはありません。
実際のところ、破産債権届出書を提出して破産手続きに参加したとしても、受け取れる配当金は債権額の0~10%程度となることがほとんどです。書類の作成と提出に手間がかかる反面でごく少額の配当金しか受け取れないと考えられるケースでは、あえて破産債権届出書を提出しない債権者もいます。
少額であっても債権を回収したいという場合は、届出期間内に破産債権届出書を提出しましょう。
破産債権届出書が届かない場合は破産管財人に連絡を
破産者に対して債権を有しているのに破産債権届出書が届かない場合は、債権者一覧表にあなたが掲載されていないことが考えられます。つまり、破産者が裁判所へ自己破産を申し立てる際に、あなたのことを債権者として申告し忘れた可能性が高いです。
その場合は、破産管財人に連絡をしてください。破産者に対して債権を有していることを破産管財人に対して説明すれば、破産債権届出ができるように取り計らってくれます。破産管財人の指示に従って、破産債権届出書を提出しましょう。
破産者のミスで破産債権届出書が届かない場合でも、このようにして破産債権届出書を提出しなければ、破産手続きに参加することができません。
破産管財人の氏名や連絡先は、破産手続開始決定をした裁判所に問い合わせれば確認できます。破産者が法人の場合は、その登記事項証明書を閲覧することによっても確認することが可能です。
破産債権届出書の提出後から債権回収までの流れを解説
破産債権届出書を提出した後は、破産管財人がその内容を調査し、裁判所における債権者集会を経て破産債権として確定させた上で、配当を行います。その間、債権者がやるべきことは特にないケースが多いですが、配当金を受け取るまでの流れをみていきましょう。
破産管財人が債権を調査
破産管財人は届出のあった債権について、その存否や金額、優先的な債権や劣後的な債権でないかなどを調査します。
債権調査のやり方には、次の2種類があります。
- 期間方式(破産法116条1項)…裁判所が指定した「一般調査期間」内に、破産管財人が作成する認否書と破産債権者・破産者からの書面による異議に基づいて調査する方式
- 期日方式(同条2項)…裁判所が指定した「一般調査期日」において、破産管財人が認否を、破産債権者・破産者が異議を述べることによって調査する方式
法律上は「期間方式」が原則とされていますが、実務上は「期日方式」によることが圧倒的に多いです。一般調査期日とは、いわゆる「債権者集会」(第1回)と同じ意味に解釈して差し支えありません。
期日方式がとられた場合は、裁判所が破産手続開始決定と同時に一般調査期日(債権者集会の期日)を指定し、知れたる債権者に通知します(破産法31条1項3号、32条3項1号)。一般調査期日は、債権届出期間の末日から1週間以上2ヶ月以内の日が指定されることになっており(破産規則20条1項4号)、実務上はほぼ2ヶ月後の日が指定されることが多いです。
破産管財人は一般調査期日までに、債権者が裁判所に提出した証拠書類や破産者が保有していた資料などから、各債権の存否や内容を調査していきます。
場合によっては破産管財人から債権者へ問い合わせがあり、事情聴取や追加資料の提出を求められることもあります。証拠が不足すると債権を否認されることもあるので、破産管財人の指示に従って債権調査に協力することが大切です。
債権者集会は不参加でも不利益なし
一般調査期日(第1回の債権者集会)においては、破産管財人が認否書に基づき債権調査の内容を報告します(破産法121条1項)。
債権届けをした破産債権者は、一般調査期日に出頭して破産管財人の報告を聞き、不服がある場合は裁判所に対して異議を述べることが認められます(同条2項)。
異議を述べた破産債権者は、一般調査期日から1ヶ月以内に裁判所に対して、破産債権査定の申立てが可能です(破産法125条1項、2項)。破産債権査定の申立てがあった場合には、裁判所が異議を述べた債権者を審尋するなどの審理をした上で当該債権の存否・内容を判断し、決定を下します(同条3項、4項)。
ただし、破産管財人の認否に対して異議が述べられるケースは稀にしかありません。破産債権者が債権者集会に出頭することは義務ではないので、不参加でも不利益を受けることはありません。実際にも、債権者集会には債権者が全く参加しないケースが大半です。
なお、債権者集会では管財業務(破産者の財産を売却する手続きなど)の進捗状況や今後の見通しなどについても、破産管財人から報告されます。そのため、いつ頃、いくらくらいの配当金が得られるのかを早めに知りたい場合は、債権者集会に出頭してみるとよいでしょう。出頭した破産債権者は、その場で破産管財人に対して質問することも可能です。
それぞれの債権者の配当額が確定し配当が行われる
破産管財人の認否に対して破産債権者が異議を述べなかった場合は、破産債権が確定します。確定した内容は裁判所書記官によって破産債権者表に記載され、確定判決と同一の効力を有します(破産法124条)。つまり、届出のあった債権の存在や金額が裁判所によって公的に認められたということです。
以上の債権調査手続きと並行して、破産管財人は破産者の財産を管理し、売却できるものは売却するなどして換金していきます。財産が換金される理由は、債権者への配当の引き当てとなる金銭を用意するためです。債権調査と財産の換価手続きが全て終了したら、配当表が作成され、それぞれの破産債権者が有する債権額に応じて配当額が確定します。
配当額が確定すると、破産管財人から各債権者に対して、配当金の振込口座を確認するための文書が送付されます。確実に配当金を受け取るために、口座名義や口座番号などを正確に記載して、速やかに返送しましょう。
破産手続開始決定から配当金が振り込まれるまでの期間は、早ければ3~6ヶ月程度のこともありますが、1年以上を要することも少なくありません。基本的に債権者は待つことしかできませんが、管財業務の進捗状況を知りたい場合には、破産管財人に連絡して問い合わせでみましょう。
債権の回収率は0〜10%がほとんどで全てを取り戻すのは難しい
債権の回収率(自社が受け取る配当額÷破産者に対して有していた債権額)はケースバイケースですが、平成15年度の司法統計によると0~10%のケースが7割を超えています。この傾向は、現在でも大きく変わってはいないと考えられるでしょう。
そもそも破産者は債務超過に陥り、返済不能となったために破産を申し立てているのですから、この結果はやむを得ないことです。
破産者の中には、換金できる財産がほとんどないこともあります。ある程度の財産があるとしても、従業員への給料や破産管財人への報酬などが先に支払われ、残った金額が一般の破産債権者への配当に充てられてしまうのです。そのため、債権を全く回収できないケースも珍しくありません。
なかには50%以上を回収できたケースもありますが、少数です。債権全額を取り戻すことは難しいと考えておくべきでしょう。
書式は裁判所ごとに異なる!破産債権届出書の代表的な記入例
次に、破産債権届出書の書き方をご説明します。
破産債権届出書の書式は裁判所ごとに異なりますが、知れたる債権者には裁判所から書式が送付されてきますので、債権者自身が調達する必要はありません。
ここでは、一例として名古屋地方裁判所が使用している書式をご紹介します。他の裁判所でも、記入事項はほぼ同じです。
参考:名古屋地方裁判所|破産債権届出書
記入すべき事項も、さほど複雑なものではありません。配当金を適切に受け取るためには、契約書などの証拠書類を参照しながら漏れなく正確に記入していくことが大切です。
それでは、名古屋地方裁判所の書式を参照しつつ、項目ごとに記入方法をみていきましょう。
事件番号・破産者名
書式の表題のすぐ下に、事件番号と破産者名を記入する欄があります。どちらも、裁判所があらかじめ記入しているので、債権者が記入する必要はありません。
事件番号とは裁判所が事件ごとに割り振った番号のことであり、確認するだけで十分です。破産者名についても、名称が正確に記載されているかを確認しましょう。
債権者の住所(本店所在地)
次に債権者、つまりあなたの情報を記入します。
まずは住所ですが、法人の場合は本店の所在地を記入しましょう。登記簿上の所在地を正確に記入する必要があります。裁判所からの通知等を本店以外の営業所に送付してもらいたい場合は、併せて「上記住所以外で通知等を希望する場所」の欄に、その所在地を記入します。
債権者が個人(個人事業主を含みます。)の場合は、住民票上の住所を正確に記入しましょう。
債権者の氏名(商号・代表者名)
氏名の欄には、法人の場合は商号を、個人の場合は氏名を正確に記入します。法人の場合は、代表者名も記入する必要があるのでご注意ください。株式会社なら、代表取締役の氏名を記入します。
押印は、実印でなくても構いません。
電話番号とFAX番号も、本店のものを記入しましょう。
法人の債権者は、所在地・商号・代表者名・電話番号・FAX番号についてはゴム印を押し、印鑑については社判(契約書や請求書などに押印するもの)を押すケースが多いです。
債権者の代理人
弁護士を代理人として債権届けをする場合は、「代理人」の欄に弁護士が住所・氏名を記入し、押印します。
この場合、債権者の氏名欄への押印は不要です。
なお、代理人が債権届を行う場合には、委任状も必要です。依頼する弁護士の指示に従って委任状に記名・押印しましょう。
届出債権額(合計)
ここからは、債権の内容を記入していきます。
まずは、届出債権額の合計額を記入しましょう。ここには、あなたが破産者に対して有している債権について、元金だけでなく利息や遅延損害金も含めた総額を記入します。
債権の種類(個別)
次に、債権の内訳を記入していきます。
名古屋地方裁判所の書式では、債権の種類として以下のものが列挙されていますので、該当するものにチェックを入れます。
- 給料
- 退職金
- 解雇予告手当
- 売掛金
- 貸付金
- 手形金、小切手金
請負代金や立替金、損害賠償請求権など、項目がない債権を有している場合には、「その他」の欄にチェックしましょう。
債権の額(個別)
チェックを入れた個別の債権については、それぞれ、未回収となっている債権額を記入します。
ここには、元金のみを記入することとされているので注意してください。利息や遅延損害金が発生している場合は、別途、「届出債権に関する主張」の欄で約定利息金や遅延損害金にチェックし、それぞれの金額を記入しましょう。
債権の内容及び原因(個別)
「債権の内容及び原因」の欄には、債権の種類ごとに届け出る債権額の根拠を記入します。
給料債権の場合は、その対象となる雇用期間を記入しましょう。
売掛金債権の場合は、いつからいつまでの取引に基づく債権なのかを記入します。
貸付金債権の場合は、貸付日と弁済期を記入することと併せて、利息や遅延損害金を定めている場合はそれぞれの金利も記入しておきましょう。これらの金利を記入しておくことで、破産手続開始決定後に発生する利息・遅延損害金も配当の対象となります。
別除権の種類(該当者のみ)
別除権を有している場合は、その種類を記入します。
別除権とは、破産者が所有している特定の財産について、破産手続きによらずに債権の回収を図ることができる権利のことです(破産法2条9項、65条1項)。
例えば、あなたの会社が破産会社に対してお金を貸していて、その貸付金債権を担保するために、破産会社の社屋に抵当権を設定していたとします。この場合は抵当権が「別除権」となり、破産会社からの返済が滞った場合には、あなたの会社は破産手続きによらずに社屋の競売を申し立てるなどして売却し、その売却代金から債権の回収を図ることができます。
このようにして抵当権(別除権)を実行しても債権全額を回収できなかった場合は、残高について他の債権者と同様に破産手続きに参加することが可能です。そのためには、別除権について必要な事項を記入した破産債権届出書を提出する必要があることに注意しましょう。
なお、別除権には抵当権の他にも、根抵当権や特別の先取特権、質権、マンション管理費などがあります。
予定不足額(該当者のみ)
予定不足額とは、別除権を行使しても回収しきれない残高として見込まれる金額のことです。
破産債権届出書を作成する時点で別除権をまだ行使していない場合は、不足するであろう金額を記入しましょう。
例えば、あなたの会社が破産会社に対して5,000万円の貸付債権を有していて、抵当権を設定した社屋の評価額が4,000万円であったとします。この場合は、予定不足額の欄に1,000万円と記入することになるでしょう。予定不足額の算出が困難な場合は無理に金額を記入する必要はありませんので、「現時点では不明」にチェックしてください。
破産者との裁判(該当者のみ)
破産手続開始決定前に、既に破産者と裁判をしていることもあるでしょう。例えば、破産会社からの借入金の返済が滞ったために、貸金返還請求訴訟を提起した場合などです。
このような場合には、訴訟が係属している裁判所の名称や事件番号、事件名、原告・被告の氏名を記入します。
なお、破産手続開始決定が出ると、破産者との裁判は中断されます(破産法44条1項)。その後、破産管財人による債権調査を経て破産債権が確定すると、その内容が記載された破産債権者表は確定判決と同一の効力を有するようになるため、裁判はそのまま終了します。債権者は裁判による債権回収ができなくなりますが、破産手続きに参加して配当金を受け取ることになるでしょう。
請求書や借用書などの証拠書類コピーも一緒に提出する
破産債権届出書を提出する際には、請求書や借用書などといった証拠書類も一緒に裁判所に提出することが求められます。なぜなら、破産債権の届出は債権者による自己申告となるため、証拠がなければ破産管財人がその債権の存否や金額などを確認できないからです。
証拠書類を添付しなくても債権届出が無効になるわけではありませんが、スムーズにご自身の債権を破産管財人に認めてもらえるように、できる限り充実した証拠書類を添付して提出しましょう。
証拠書類は原本ではなく、コピーを1通提出します。コピーする際は、できる限りA4判としてください。
以下では、代表的な破産債権の種類ごとに、証拠となる書類をご紹介します。
売掛金を証明する書類のコピー
売掛金とは、「掛け」(後払い)で販売した商品の代金のことです。
販売する際に売買契約書を交わしていれば、その契約書が最も有効な証拠書類となります。
もっとも、継続的に商品を販売している取引先との間では、個別の売買について契約書を交わしていないこともあるでしょう。その場合は、請求書や納品書、受領証、伝票、売掛帳などを確認し、未回収の売買代金がわかる資料をコピーして提出してください。
貸付金額を証明する書類のコピー
商取引として貸し付けを行っている場合は、通常、金銭消費貸借契約書を交わしたり、借用書を作成したりしていることでしょう。貸し付けの証拠としては、金銭消費貸借契約書や借用書が最も有効です。
もし、金銭消費貸借契約書や借用書を作成していない場合は、貸し付けや返済に関して相手方と連絡を取り合った際のメールの履歴や文書、貸付金を送金したことが分かる通帳などのコピーを提出してください。
なお、貸付金債権については、現在の貸付金額、つまり残高を証明する必要があります。そのため、返済金の受け取りに使用している口座の通帳や領収書などのコピーも提出し、既に返済を受けた金額も証明すれば、破産管財人の債権調査がスムーズに進むでしょう。
請負代金を証明する書類のコピー
さまざまな業務を請け負い、その仕事を完成させたにもかかわらず請負代金を回収できていない場合は、請負契約書と請求書や納品書が最も有効な証拠書類となります。
もし、これらの書類がない場合は、請負契約に関して相手方とやり取りした際のメールの履歴や文書、業務日報などの記録のコピーを提出してください。
なお、請け負った仕事を完成させる前に注文者について破産手続開始決定があった場合、請負人は契約を解除し、既にした仕事の報酬を破産債権として届け出ることが可能です(民法642条1項、2項)。
この場合には、仕事をどの程度まで進めたのかを証明する書類のコピーも提出する必要があります。工事を請け負った場合を例とすると、工事の進捗確認表や、工事を中断した時点における現場の写真などが証拠書類となるでしょう。
手形を証明する書類のコピー
手形金債権や小切手金債権を届け出る場合には、その手形や小切手のコピーを提出します。
手形・小切手のコピーは表面だけでなく裏面も必要なので、忘れないようにしましょう。
破産債権届出書のよくある質問
ここでは、破産債権届出書に関する次の3つの質問に回答します。
- 印鑑は実印が必要?
- 破産債権届出書の郵送方法は?
- 破産債権届出書と交付要求書との違いは?
それぞれについて詳しい内容をみていきましょう。
印鑑は実印が必要ですか?法人の場合は?
破産債権届出書に押印する印鑑は、実印でなくても構いません。個人の債権者の場合は、認印も使用できます。
法人の債権者の場合も、会社の実印(代表者印)を用いる必要はありません。一般的には、契約書や請求書に押印する際に用いる「社判」を使用することが多いです。
印鑑証明書も不要ですが、法人の場合は代表者の資格証明書(会社の登記事項証明書など)を提出する必要があります。
郵送方法を教えてください
破産債権届出書を郵送で提出する場合は、次のものを用意しましょう。
- 破産債権届出書2通
- 証拠書類のコピー1通
- その他、裁判所から指示された添付書類(会社代表者の資格証明書、弁護士に依頼する場合の委任状など)
破産債権届出書の書式は裁判所から2通送られてくるので、両方に同じ内容を記載します。1通だけに記載してコピーしても構いませんが、押印は2通ともに必要です。
返信用封筒が同封されているので、債権者が封筒を用意したり、宛名を記載したりする必要はありません。
返信する際は、指定された債権届出期間内に破産債権届出書が裁判所に届く必要があることにご注意ください。返信用封筒は普通郵便となっているので、債権届出期間の最終日より数日前には発送しましょう。
交付要求書との違いを教えてください
交付要求書とは、破産者が税金や社会保険料を滞納している場合に、その債権者である国や地方自治体が請求権の種類や金額を裁判所または破産管財人に届け出るために送付する文書のことです(破産法114条1号、破産規則50条1項参照)。
税金や社会保険料の支払い請求権のことを「租税等の請求権」といいます。交付要求書が租税等の請求権を届け出るために提出される文書であるのに対して、破産債権届出書は売掛金や貸付金など一般の破産債権を届け出るための文書であるという点が両者の違いです。一般の破産債権者が交付要求書を作成・提出することはありません。
なお、租税等の請求権を有する債権者には一般の破産債権よりも先に支払いが行われ、その後に残った破産者の財産のみが、一般の破産債権者に対する配当の引き当てとなります。
破産債権届出書とは?債権回収までの流れや記入例を解説
破産債権届出書とは、破産した人や法人(以下「破産者」といいます。)に対してあなたが有している債権の内容を裁判所へ届け出るための文書のことを指します。
破産者に対する債権は、原則として裁判所での破産手続きによってしか行使できません。したがって、破産債権届出書を正しく作成して裁判所へ提出しなければ、債権を回収できなくなってしまうことに注意が必要です。
この記事では、破産債権届出書の記入例や提出方法から債権を回収するまでの流れについてわかりやすく解説します。取引先などが破産して債権を回収できずにお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
破産債権届出書とは?提出の流れをわかりやすく解説
まずは、破産債権届出書とはどのような文書なのか、何のために提出する必要があるのか、どこにいつまでに提出すればよいのかについて解説します。
破産債権届出書はあなたの債権の存在を証明する文書
破産債権届出書とは、あなたが破産者に対していくらの債権を有しているのかを裁判所へ届け出るための文書のことです。
破産手続きを進めるためには、破産者が誰に対していくらの負債を抱えているのかを確定させる必要があります。
破産者は裁判所への申立ての際に債権者一覧表を作成し、債権者名や債権額などを記載して申告します。しかし、その内容が正しいとは限りません。そこで裁判所は、債権者一覧表に記載された債権者に対して債権届を求めるのです。
債権届を求められた債権者は、破産債権届出書に必要事項を記入し、契約書などの証拠書類と一緒に提出することで債権の存在を証明できます。
提出した書類は破産管財人が確認し、所定の債権調査手続きを経て、その内容が正しいと認められると破産債権として確定します。
破産債権が確定して初めて、あなたは破産債権者として破産手続きに参加できるのです。
どこにいつまでに出せばいいの?提出期限が切れても救済措置あり
破産債権届出書は、破産手続開始決定をした裁判所に、その裁判所が指定した「債権届出期間」中に提出する必要があります。
債権者一覧表に記載された債権者に対しては、破産手続開始決定をした裁判所から破産債権届出書の書式が郵送されます。返信用封筒も同封されているので、提出先がわからずに悩むことはないでしょう。
債権届出期間は、原則として破産手続開始決定が行われた日から2週間以上4ヶ月以内で裁判所が指定します。具体的な年月日は破産債権届出書に同封されている「破産手続開始の通知」に記載されているのでご確認ください。その届出期間内に裁判所へ到達するように送付しなければならないことにも注意が必要です。
届出期間が経過した後に破産債権届出書を提出しても、原則として受け付けられません。ただし、債権者の責に帰することができない事情で破産債権届出書を提出できなかった場合は、その事情が消滅した後の1ヶ月以内に限り、提出が認められます。
「債権者の責に帰することができない事情」としては、病気や事故、自然災害などに遭ったことなどが考えられます。単なる「業務多忙」などで期限後に提出することは認められません。
裁判所から書類が届いたら、速やかに内容を確認し、提出期限までに破産債権届出書を提出しましょう。
出さないとどうなる?破産手続に参加できず配当がもらえない
破産債権届出書を提出しなければ、破産債権者として認められず、破産手続きに参加できません。
破産手続きでは、破産管財人が破産者の財産を売却するなどして換金した上で、各破産債権者が有する債権額に応じて配当します。破産債権届出書を提出しなかった債権者はこの手続きに参加できないため、配当金をもらえません。
もっとも、破産債権届出書を提出するかどうかは債権者の自由意思に委ねられており、債権回収を断念する場合は提出不要です。提出しないことで何らかの罰を受けることはありません。
実際のところ、破産債権届出書を提出して破産手続きに参加したとしても、受け取れる配当金は債権額の0~10%程度となることがほとんどです。書類の作成と提出に手間がかかる反面でごく少額の配当金しか受け取れないと考えられるケースでは、あえて破産債権届出書を提出しない債権者もいます。
少額であっても債権を回収したいという場合は、届出期間内に破産債権届出書を提出しましょう。
破産債権届出書が届かない場合は破産管財人に連絡を
破産者に対して債権を有しているのに破産債権届出書が届かない場合は、債権者一覧表にあなたが掲載されていないことが考えられます。つまり、破産者が裁判所へ自己破産を申し立てる際に、あなたのことを債権者として申告し忘れた可能性が高いです。
その場合は、破産管財人に連絡をしてください。破産者に対して債権を有していることを破産管財人に対して説明すれば、破産債権届出ができるように取り計らってくれます。破産管財人の指示に従って、破産債権届出書を提出しましょう。
破産者のミスで破産債権届出書が届かない場合でも、このようにして破産債権届出書を提出しなければ、破産手続きに参加することができません。
破産管財人の氏名や連絡先は、破産手続開始決定をした裁判所に問い合わせれば確認できます。破産者が法人の場合は、その登記事項証明書を閲覧することによっても確認することが可能です。
破産債権届出書の提出後から債権回収までの流れを解説
破産債権届出書を提出した後は、破産管財人がその内容を調査し、裁判所における債権者集会を経て破産債権として確定させた上で、配当を行います。その間、債権者がやるべきことは特にないケースが多いですが、配当金を受け取るまでの流れをみていきましょう。
破産管財人が債権を調査
破産管財人は届出のあった債権について、その存否や金額、優先的な債権や劣後的な債権でないかなどを調査します。
債権調査のやり方には、次の2種類があります。
- 期間方式(破産法116条1項)…裁判所が指定した「一般調査期間」内に、破産管財人が作成する認否書と破産債権者・破産者からの書面による異議に基づいて調査する方式
- 期日方式(同条2項)…裁判所が指定した「一般調査期日」において、破産管財人が認否を、破産債権者・破産者が異議を述べることによって調査する方式
法律上は「期間方式」が原則とされていますが、実務上は「期日方式」によることが圧倒的に多いです。一般調査期日とは、いわゆる「債権者集会」(第1回)と同じ意味に解釈して差し支えありません。
期日方式がとられた場合は、裁判所が破産手続開始決定と同時に一般調査期日(債権者集会の期日)を指定し、知れたる債権者に通知します(破産法31条1項3号、32条3項1号)。一般調査期日は、債権届出期間の末日から1週間以上2ヶ月以内の日が指定されることになっており(破産規則20条1項4号)、実務上はほぼ2ヶ月後の日が指定されることが多いです。
破産管財人は一般調査期日までに、債権者が裁判所に提出した証拠書類や破産者が保有していた資料などから、各債権の存否や内容を調査していきます。
場合によっては破産管財人から債権者へ問い合わせがあり、事情聴取や追加資料の提出を求められることもあります。証拠が不足すると債権を否認されることもあるので、破産管財人の指示に従って債権調査に協力することが大切です。
債権者集会は不参加でも不利益なし
一般調査期日(第1回の債権者集会)においては、破産管財人が認否書に基づき債権調査の内容を報告します(破産法121条1項)。
債権届けをした破産債権者は、一般調査期日に出頭して破産管財人の報告を聞き、不服がある場合は裁判所に対して異議を述べることが認められます(同条2項)。
異議を述べた破産債権者は、一般調査期日から1ヶ月以内に裁判所に対して、破産債権査定の申立てが可能です(破産法125条1項、2項)。破産債権査定の申立てがあった場合には、裁判所が異議を述べた債権者を審尋するなどの審理をした上で当該債権の存否・内容を判断し、決定を下します(同条3項、4項)。
ただし、破産管財人の認否に対して異議が述べられるケースは稀にしかありません。破産債権者が債権者集会に出頭することは義務ではないので、不参加でも不利益を受けることはありません。実際にも、債権者集会には債権者が全く参加しないケースが大半です。
なお、債権者集会では管財業務(破産者の財産を売却する手続きなど)の進捗状況や今後の見通しなどについても、破産管財人から報告されます。そのため、いつ頃、いくらくらいの配当金が得られるのかを早めに知りたい場合は、債権者集会に出頭してみるとよいでしょう。出頭した破産債権者は、その場で破産管財人に対して質問することも可能です。
それぞれの債権者の配当額が確定し配当が行われる
破産管財人の認否に対して破産債権者が異議を述べなかった場合は、破産債権が確定します。確定した内容は裁判所書記官によって破産債権者表に記載され、確定判決と同一の効力を有します(破産法124条)。つまり、届出のあった債権の存在や金額が裁判所によって公的に認められたということです。
以上の債権調査手続きと並行して、破産管財人は破産者の財産を管理し、売却できるものは売却するなどして換金していきます。財産が換金される理由は、債権者への配当の引き当てとなる金銭を用意するためです。債権調査と財産の換価手続きが全て終了したら、配当表が作成され、それぞれの破産債権者が有する債権額に応じて配当額が確定します。
配当額が確定すると、破産管財人から各債権者に対して、配当金の振込口座を確認するための文書が送付されます。確実に配当金を受け取るために、口座名義や口座番号などを正確に記載して、速やかに返送しましょう。
破産手続開始決定から配当金が振り込まれるまでの期間は、早ければ3~6ヶ月程度のこともありますが、1年以上を要することも少なくありません。基本的に債権者は待つことしかできませんが、管財業務の進捗状況を知りたい場合には、破産管財人に連絡して問い合わせでみましょう。
債権の回収率は0〜10%がほとんどで全てを取り戻すのは難しい
債権の回収率(自社が受け取る配当額÷破産者に対して有していた債権額)はケースバイケースですが、平成15年度の司法統計によると0~10%のケースが7割を超えています。この傾向は、現在でも大きく変わってはいないと考えられるでしょう。
そもそも破産者は債務超過に陥り、返済不能となったために破産を申し立てているのですから、この結果はやむを得ないことです。
破産者の中には、換金できる財産がほとんどないこともあります。ある程度の財産があるとしても、従業員への給料や破産管財人への報酬などが先に支払われ、残った金額が一般の破産債権者への配当に充てられてしまうのです。そのため、債権を全く回収できないケースも珍しくありません。
なかには50%以上を回収できたケースもありますが、少数です。債権全額を取り戻すことは難しいと考えておくべきでしょう。
書式は裁判所ごとに異なる!破産債権届出書の代表的な記入例
次に、破産債権届出書の書き方をご説明します。
破産債権届出書の書式は裁判所ごとに異なりますが、知れたる債権者には裁判所から書式が送付されてきますので、債権者自身が調達する必要はありません。
ここでは、一例として名古屋地方裁判所が使用している書式をご紹介します。他の裁判所でも、記入事項はほぼ同じです。
参考:名古屋地方裁判所|破産債権届出書
記入すべき事項も、さほど複雑なものではありません。配当金を適切に受け取るためには、契約書などの証拠書類を参照しながら漏れなく正確に記入していくことが大切です。
それでは、名古屋地方裁判所の書式を参照しつつ、項目ごとに記入方法をみていきましょう。
事件番号・破産者名
書式の表題のすぐ下に、事件番号と破産者名を記入する欄があります。どちらも、裁判所があらかじめ記入しているので、債権者が記入する必要はありません。
事件番号とは裁判所が事件ごとに割り振った番号のことであり、確認するだけで十分です。破産者名についても、名称が正確に記載されているかを確認しましょう。
債権者の住所(本店所在地)
次に債権者、つまりあなたの情報を記入します。
まずは住所ですが、法人の場合は本店の所在地を記入しましょう。登記簿上の所在地を正確に記入する必要があります。裁判所からの通知等を本店以外の営業所に送付してもらいたい場合は、併せて「上記住所以外で通知等を希望する場所」の欄に、その所在地を記入します。
債権者が個人(個人事業主を含みます。)の場合は、住民票上の住所を正確に記入しましょう。
債権者の氏名(商号・代表者名)
氏名の欄には、法人の場合は商号を、個人の場合は氏名を正確に記入します。法人の場合は、代表者名も記入する必要があるのでご注意ください。株式会社なら、代表取締役の氏名を記入します。
押印は、実印でなくても構いません。
電話番号とFAX番号も、本店のものを記入しましょう。
法人の債権者は、所在地・商号・代表者名・電話番号・FAX番号についてはゴム印を押し、印鑑については社判(契約書や請求書などに押印するもの)を押すケースが多いです。
債権者の代理人
弁護士を代理人として債権届けをする場合は、「代理人」の欄に弁護士が住所・氏名を記入し、押印します。
この場合、債権者の氏名欄への押印は不要です。
なお、代理人が債権届を行う場合には、委任状も必要です。依頼する弁護士の指示に従って委任状に記名・押印しましょう。
届出債権額(合計)
ここからは、債権の内容を記入していきます。
まずは、届出債権額の合計額を記入しましょう。ここには、あなたが破産者に対して有している債権について、元金だけでなく利息や遅延損害金も含めた総額を記入します。
債権の種類(個別)
次に、債権の内訳を記入していきます。
名古屋地方裁判所の書式では、債権の種類として以下のものが列挙されていますので、該当するものにチェックを入れます。
- 給料
- 退職金
- 解雇予告手当
- 売掛金
- 貸付金
- 手形金、小切手金
請負代金や立替金、損害賠償請求権など、項目がない債権を有している場合には、「その他」の欄にチェックしましょう。
債権の額(個別)
チェックを入れた個別の債権については、それぞれ、未回収となっている債権額を記入します。
ここには、元金のみを記入することとされているので注意してください。利息や遅延損害金が発生している場合は、別途、「届出債権に関する主張」の欄で約定利息金や遅延損害金にチェックし、それぞれの金額を記入しましょう。
債権の内容及び原因(個別)
「債権の内容及び原因」の欄には、債権の種類ごとに届け出る債権額の根拠を記入します。
給料債権の場合は、その対象となる雇用期間を記入しましょう。
売掛金債権の場合は、いつからいつまでの取引に基づく債権なのかを記入します。
貸付金債権の場合は、貸付日と弁済期を記入することと併せて、利息や遅延損害金を定めている場合はそれぞれの金利も記入しておきましょう。これらの金利を記入しておくことで、破産手続開始決定後に発生する利息・遅延損害金も配当の対象となります。
別除権の種類(該当者のみ)
別除権を有している場合は、その種類を記入します。
別除権とは、破産者が所有している特定の財産について、破産手続きによらずに債権の回収を図ることができる権利のことです(破産法2条9項、65条1項)。
例えば、あなたの会社が破産会社に対してお金を貸していて、その貸付金債権を担保するために、破産会社の社屋に抵当権を設定していたとします。この場合は抵当権が「別除権」となり、破産会社からの返済が滞った場合には、あなたの会社は破産手続きによらずに社屋の競売を申し立てるなどして売却し、その売却代金から債権の回収を図ることができます。
このようにして抵当権(別除権)を実行しても債権全額を回収できなかった場合は、残高について他の債権者と同様に破産手続きに参加することが可能です。そのためには、別除権について必要な事項を記入した破産債権届出書を提出する必要があることに注意しましょう。
なお、別除権には抵当権の他にも、根抵当権や特別の先取特権、質権、マンション管理費などがあります。
予定不足額(該当者のみ)
予定不足額とは、別除権を行使しても回収しきれない残高として見込まれる金額のことです。
破産債権届出書を作成する時点で別除権をまだ行使していない場合は、不足するであろう金額を記入しましょう。
例えば、あなたの会社が破産会社に対して5,000万円の貸付債権を有していて、抵当権を設定した社屋の評価額が4,000万円であったとします。この場合は、予定不足額の欄に1,000万円と記入することになるでしょう。予定不足額の算出が困難な場合は無理に金額を記入する必要はありませんので、「現時点では不明」にチェックしてください。
破産者との裁判(該当者のみ)
破産手続開始決定前に、既に破産者と裁判をしていることもあるでしょう。例えば、破産会社からの借入金の返済が滞ったために、貸金返還請求訴訟を提起した場合などです。
このような場合には、訴訟が係属している裁判所の名称や事件番号、事件名、原告・被告の氏名を記入します。
なお、破産手続開始決定が出ると、破産者との裁判は中断されます(破産法44条1項)。その後、破産管財人による債権調査を経て破産債権が確定すると、その内容が記載された破産債権者表は確定判決と同一の効力を有するようになるため、裁判はそのまま終了します。債権者は裁判による債権回収ができなくなりますが、破産手続きに参加して配当金を受け取ることになるでしょう。
請求書や借用書などの証拠書類コピーも一緒に提出する
破産債権届出書を提出する際には、請求書や借用書などといった証拠書類も一緒に裁判所に提出することが求められます。なぜなら、破産債権の届出は債権者による自己申告となるため、証拠がなければ破産管財人がその債権の存否や金額などを確認できないからです。
証拠書類を添付しなくても債権届出が無効になるわけではありませんが、スムーズにご自身の債権を破産管財人に認めてもらえるように、できる限り充実した証拠書類を添付して提出しましょう。
証拠書類は原本ではなく、コピーを1通提出します。コピーする際は、できる限りA4判としてください。
以下では、代表的な破産債権の種類ごとに、証拠となる書類をご紹介します。
売掛金を証明する書類のコピー
売掛金とは、「掛け」(後払い)で販売した商品の代金のことです。
販売する際に売買契約書を交わしていれば、その契約書が最も有効な証拠書類となります。
もっとも、継続的に商品を販売している取引先との間では、個別の売買について契約書を交わしていないこともあるでしょう。その場合は、請求書や納品書、受領証、伝票、売掛帳などを確認し、未回収の売買代金がわかる資料をコピーして提出してください。
貸付金額を証明する書類のコピー
商取引として貸し付けを行っている場合は、通常、金銭消費貸借契約書を交わしたり、借用書を作成したりしていることでしょう。貸し付けの証拠としては、金銭消費貸借契約書や借用書が最も有効です。
もし、金銭消費貸借契約書や借用書を作成していない場合は、貸し付けや返済に関して相手方と連絡を取り合った際のメールの履歴や文書、貸付金を送金したことが分かる通帳などのコピーを提出してください。
なお、貸付金債権については、現在の貸付金額、つまり残高を証明する必要があります。そのため、返済金の受け取りに使用している口座の通帳や領収書などのコピーも提出し、既に返済を受けた金額も証明すれば、破産管財人の債権調査がスムーズに進むでしょう。
請負代金を証明する書類のコピー
さまざまな業務を請け負い、その仕事を完成させたにもかかわらず請負代金を回収できていない場合は、請負契約書と請求書や納品書が最も有効な証拠書類となります。
もし、これらの書類がない場合は、請負契約に関して相手方とやり取りした際のメールの履歴や文書、業務日報などの記録のコピーを提出してください。
なお、請け負った仕事を完成させる前に注文者について破産手続開始決定があった場合、請負人は契約を解除し、既にした仕事の報酬を破産債権として届け出ることが可能です(民法642条1項、2項)。
この場合には、仕事をどの程度まで進めたのかを証明する書類のコピーも提出する必要があります。工事を請け負った場合を例とすると、工事の進捗確認表や、工事を中断した時点における現場の写真などが証拠書類となるでしょう。
手形を証明する書類のコピー
手形金債権や小切手金債権を届け出る場合には、その手形や小切手のコピーを提出します。
手形・小切手のコピーは表面だけでなく裏面も必要なので、忘れないようにしましょう。
破産債権届出書のよくある質問
ここでは、破産債権届出書に関する次の3つの質問に回答します。
- 印鑑は実印が必要?
- 破産債権届出書の郵送方法は?
- 破産債権届出書と交付要求書との違いは?
それぞれについて詳しい内容をみていきましょう。
印鑑は実印が必要ですか?法人の場合は?
破産債権届出書に押印する印鑑は、実印でなくても構いません。個人の債権者の場合は、認印も使用できます。
法人の債権者の場合も、会社の実印(代表者印)を用いる必要はありません。一般的には、契約書や請求書に押印する際に用いる「社判」を使用することが多いです。
印鑑証明書も不要ですが、法人の場合は代表者の資格証明書(会社の登記事項証明書など)を提出する必要があります。
郵送方法を教えてください
破産債権届出書を郵送で提出する場合は、次のものを用意しましょう。
- 破産債権届出書2通
- 証拠書類のコピー1通
- その他、裁判所から指示された添付書類(会社代表者の資格証明書、弁護士に依頼する場合の委任状など)
破産債権届出書の書式は裁判所から2通送られてくるので、両方に同じ内容を記載します。1通だけに記載してコピーしても構いませんが、押印は2通ともに必要です。
返信用封筒が同封されているので、債権者が封筒を用意したり、宛名を記載したりする必要はありません。
返信する際は、指定された債権届出期間内に破産債権届出書が裁判所に届く必要があることにご注意ください。返信用封筒は普通郵便となっているので、債権届出期間の最終日より数日前には発送しましょう。
交付要求書との違いを教えてください
交付要求書とは、破産者が税金や社会保険料を滞納している場合に、その債権者である国や地方自治体が請求権の種類や金額を裁判所または破産管財人に届け出るために送付する文書のことです(破産法114条1号、破産規則50条1項参照)。
税金や社会保険料の支払い請求権のことを「租税等の請求権」といいます。交付要求書が租税等の請求権を届け出るために提出される文書であるのに対して、破産債権届出書は売掛金や貸付金など一般の破産債権を届け出るための文書であるという点が両者の違いです。一般の破産債権者が交付要求書を作成・提出することはありません。
なお、租税等の請求権を有する債権者には一般の破産債権よりも先に支払いが行われ、その後に残った破産者の財産のみが、一般の破産債権者に対する配当の引き当てとなります。